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にどめのたいおん(スイライ♀)
2011/06/02 22:18

幼馴染みは昔から誰よりも睡眠を愛していた。
遊んでいると一人だけすぐに眠そうに欠伸をして、気がつくとこくりこくりと船を漕ぐ。それをいつの間にかレファルが負ぶって連れて帰る。いつの間にかそれが決まりになっていた。
男ならスイもそうだし、リーズだっている。時々だけれどリルも顔を出すことがある。それなのにライナを背負うのはいつだってレファルだ。
そもそもどうしてこの顔ぶれなんだったっけ?
ある時、ようやく疑問に思ったことがある。
そして、ようやく気付く。

それから少しだけ、彼と彼女が遠くなった。



レファルが風邪を引いた。
夏風邪は馬鹿しか引かないのよと言いながらもクゥが心配そうにしていたので、熱はそれほど高くないらしいことを教えてやった。数日前から兆しはあって、初期の段階で手を打たなかったのがよくなかったのだろう。自業自得だ。ほんのりと色黒で健康的な肌の色をしているのになあなんて思う。リーズも呆れたようにため息を吐いていた。リルは特に何も考えていなさそうな。
ライナはどうだろうと、彼女を見ると、眠そうに欠伸をしたところだった。いつも運んでもらっている恩を忘れているらしい。
まあ、風邪くらい、よくあることだし。
それでも学校を休むのほどの風邪を引くのは珍しい。もしかしたらレファルが学校を休むなんて小学校以来ではないだろうか。なんて。
帰りにみんなでお見舞いに行こうかと話して、それぞれの学年に散らばっていった。



クゥはリルを連れて買いものに行ってしまい、心配になったリーズもそれについて行った。林檎を凶器にでもするつもりなのか、とにかく大量に買い込むつもりらしい。あとはお粥の材料だとか、薬だとか。とにかくお見舞いに必要なものを買いに行ったつもりらしいのだがリーズがいなければどうなることか考えるのも恐ろしい。妹を甘やかしすぎたかな、とスイはため息を吐いた。
それで、学校においていかれたのはスイともう一人いるのだが。まだ奇跡的に目を開いている幼馴染みの少女が一人。
「……できた」
小さく呟くと教師が机上の紙を取りに来る。
授業中に眠ってしまったため、課題をやっていたのだ。
教師がもう寝るなよとライナに告げて出て行くのを待ってから、教室に入る。机に放り出した腕に顎を乗せているライナがこちらを向く。
「あ、スイ」
「……また寝るの?」
さすがに今寝られてしまうと大変だからやめてほしいのだけれど。ライナは欠伸をすると小さく首を振った。
そろそろレファルのお見舞いに行かないと、と言うのだけれどライナは立ち上がろうとしない。
瞼が重力に負けたかのように閉じられていく。目を閉じて一秒、二秒……三秒目で寝息が聞こえてきた。なんという早業……。
「ライナー、起きて」
声をかけても目を開きそうにない。
おそるおそる肩に触れてみる。細いというか、小さいというか。どうしてレファルは平然とこれに触れることが出来るのだろうと不思議に思う。
「ん……」
小さく声を漏らす。

「レファル……おぶって」

ハッキリと聞こえた声にああ、やっぱりと思う。
だって彼女が眠りながら待っているのはいつだってレファルで。眠るライナを連れて帰るのはいつだってレファルで。
だから、スイは彼らを遠くに感じたのだ。

――ねえ、ライナ。みんないっちゃうよ?
あれはいつだったか。やはりレファルが風邪を引いた時で。
――おきてよ、ライナ
眠るライナにそっと触れて。揺さぶって。彼女の口から出た言葉に、何故だか悲しくなった。

――レファル

どうして自分はスイなのだろう。どうして自分がレファルになれないのだろう。


眠るライナを背負う。
二度目のそれはやはりレファルの代わりで。そう思うとなんだか悔しいのだけれど、たぶんそれを目撃してしまうレファルの方がずっと悔しいのだろうから、我慢する。
このままお見舞いに行けば、きっとレファルもすぐ風邪を治すだろうなんて考えながら。






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