お前の隣は続編 | ナノ

向き合う

もう逃げられないか、と観念したのを察した倉持が俺を解放する。
そして俺達に、いや、ちひろに気を遣った倉持はちひろの肩を軽く叩いて出ていった。

2人だけの空間。
俺はどうすればいいのか分からないまま立っているだけ。

不意に、ちひろが俺に近づいてきて、ビンタされた
さすが毎日部活でラケット振ってるだけある。けっこう痛ぇ。

「何、すんだよ」

「何って、ビンタしただけでしょ」

「いや、まあそうなんだけど…本気ですんのかよ」

「冗談で言ってるように聞こえた?」

…そりゃ確かに真面目な顔だったけど、この流れでほんとにされるとか思わないだろ普通。
叩かれた頬擦りながら何が何だか分からなくなってきた俺を無視して、ちひろは話し始めた。

なんで避けるの?
なんで話聞いてくれないの?
私は何も感じてないと思ってるの?

多少の怒りが混じった話し方で一方的に話すちひろ。
その勢いに押されて何も言えない俺。

一通り不満言い終えたらしいちひろは、軽く深呼吸してから今度は俺に抱きついてきた。

「…バカ、一人で抱え込まないでよ」

「ちひろ…」

「変わりたいのは一也だけじゃないんだよ。
私だって、変わりたい」

震える声で話してるちひろは今多分泣いてる。
また泣かせちまったって思いながら、自分も変わりたいというちひろの言葉の意味を考える。

ちひろは何も悪くない。
なのにどこをどう変えるって言うんだ?

「私、逃げたくなかった。
もう守られてるだけじゃ嫌、私も一也を守りたかった。
だからあの日わざとあの子達についていって、正々堂々話し合った。
嫌がらせ受けるとか、全部覚悟の上だったんだよ」

「なんでそこまで…」

「…私だって、一也の彼女だって胸張りたかったの。
インチキなんてせずに堂々と一也と付き合ってるんだって、認めさせたかった」

知らなかった。
いつも俺の隣で笑ってくれてるちひろが、こんなこと考えてたなんて。
こんなにも、ちひろに愛されてたなんて。

「…悪かった」

「バカ…許さない、許さないんだから」

「ごめんな、ちひろ」

そっと抱き締め返して、頭を撫でる。

どうして俺は気づかなかったんだろうか。
もっと、ちひろと向き合うべきだった。
自分が変わらなきゃいけないって焦って、今度は大事なものを失うところだった。

「次は、ないんだからね…」

「あぁ、もう逃げねぇよ」

「ん、一也…」

「好きだ、何があっても」

「それ、私が言った台詞」

「別にいいだろ同じこと言ったって」

「もう…ほんと調子いいんだから」

ちひろのために変わりたいと思うのなら、もっと向き合わなきゃいけねぇ。
それが俺のためであり、ちひろのためになる。
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