09/13 てすてす

私は卓子の上に飛びあがると、コップを持つた腕を勢ひ好く振りあげた――酒は天井にはねあがつた。
 そして私は、
「花鬘酒(ブランブシウム)の栓を抜け!」
 と叫んだ。――「踊子達よ、一斉に盃をとつて、あの舞踏酒の歓喜に酔へ。俺は、ピピヤスの傍らへ走つて、あの花籠を買つて来る、あれらの花が凋まぬ間にあの壺をあけて、ストーロナ産の花を盛らなければならない。飲め/\/\、そしてイダーリアの冠にブランブシウムの雨を降らさう。」
「虻色の翼をもつた God Honsu がナイルの上流で探し索めた Osiris の花をくはへてオリンピアの上空に現れた時のやうに、俺達は愉快だ。」
 と私は満腔の想ひを空に向つて次々に追放するかのやうに腕を張り、胸を拡いて、続けるのであつた。
 誰も気がつかなかつたが私は、喜びのあまり、近頃私が創作した最も得意な小説のうちで、最も愚かな一エピキュール学徒が街角のタバンで見得を切つてゐる騒ぎで、その口真似をしたのである。
 酒をのむのは私ひとりであつたが、私の伴れ達は、酒に酔つて斯んなに騒ぐ私と同じ程度に「勝利の快感」に酔ひ痴れて自己を忘れてゐた。――一同は凄じい早稲田大学贔負であつた。この日、野球戦に私達の早稲田が勝つたからである。








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