水着霊衣いつですか
「おい、なまえ」
「な、なに? テスカトリポカ」
「いい加減こっちを向け。オレの裸なんて何度も見ているだろう? ましてや今は水着なんだ。そう照れることでもないと思うワケ」
「み、見て……る、のはそうだけど、でも違うもん! な、なんかえっち、なんだもん……」
「……まあ、服を着た方がセクシーな場合もあるしな」
男は少女の裸体を見ても照れることはしない。単純に興奮するだけだ。しかしよくよく考えれば、少女のランジェリー姿はセクシーだったな、と今の少女の思考が多少は理解できた。
無垢な少女が破廉恥なランジェリーを着ている、という事実だけで男は昂りを覚えるもの。その上に着る服がいつも通り露出度が低いものであれば尚更だ。
先ほど顔を見ていればいい、と助言したというのにあっという間に少女と視線が合わなくなった。しかし頬を染めながらちらちら、と向けられる少女の視線。男が振り向けばわざとらしく明後日の方向を向く少女のいじらしさたるや。
しかし、それが続けば男としても面倒で仕方がない。
「テスカトリポカ、何着てもかっこいいのずるい。あの的屋の格好だって似合ってたし……」
「オレの権能を忘れたのかよ。オレは美を、誘惑をも司る神だぜ」
「そ、そうだった……」
すっかり忘れていたと言わんばかりの声色。呆れたようにため息をついた男は、隣に座る少女の体を砂浜に押し倒す。
「えっ! だ、だめ、だめだよ……!」
「あん? 何を想像してんだ。えっちなのはオマエさんの方じゃねえか」
「っ、ち、ちが、うの……?」
「お望みとあらば、この場で抱いてやるが? オレはいつだってなまえが欲しいからな」
茹で上がりそうなまでに顔を、否体全体を真っ赤に染めた少女を見て、谷間部分に人差し指を水着の下から侵入させた。
パニックになった少女は体をバタバタと暴れさせるも、すぐに男の力により無力化される。両手を頭上で拘束され、本当にこのまま……?と不安そうに涙目で少女は男を見上げた。
「おいおい、本気でオレが抱くと思ったのか? 可愛いなまえを見るのはオレだけでいいんだよ。ま、この体勢がいやならこの水着姿に慣れろ」
「う、うぅ……」
「随分と大人しくなっちまったなあ? いいぜ、存分にオレに見惚れろよ。なまえにはその権利がある」
拘束を解き少女の手を、己のむき出しになっている割れた腹筋に這わせる。どうしよう、と眉を下げた少女だったが、もう片方の手で男の顔にかかった髪の毛をそっと耳にかけてあげた。そしてサングラスも取って自分で装着する。
「お揃いのサングラスほしい、かも」
「珍しいな。……後で用意しておこう」
少女が男にねだるのは基本的に食べ物関係だ。だからこそ、物をねだられたことに驚いたし、同じサングラスがほしいと健気なことを言い出した少女に心臓が跳ねる。
髪の毛やサングラスで隠れた箇所がなくなった男の素顔を見つめ、少女は何か言いたげに口元をむにむにさせていたが何も発することはなかった。そのかわりに、ちゅっとリップ音を立ててキスをする。
「も、もう大丈夫、かも……?」
「本当に? なら遊ぶとするか、なまえ」
「うん!」
少女の体を抱き起こせば、すちゃっとサングラスを装着された。ありがとう、と頬に唇が寄せられ自然と男の口角は上がる。
小さな少女の手を絡めるように繋ぎ、二人は夏空の下で多いにはしゃぎ笑い合うのだ。