私の名前はマリー!悪魔不信で最近までずっと家に引きこもっていた通称ビビリ魔だよ!そんな私はひょんなことから人間の弟、入間と一緒に悪魔学校バビルスに通うことになったんだけど…。
位階が決まる初授業でいろいろやらかしちゃって、なんと
“3”のバッヂを手に入れちゃった…!
1年なら普通は
“1”、よくて
“2”なのに、私なんかが
“3”って、不釣り合い過ぎ〜〜!私の学校生活これからどうなっちゃうのぉ〜〜!?次回!『ビビリ魔、パリピになる』!!!(大嘘)
入間くんの妹はビビリ魔05「入間様、マリー様のおなーーりーーー!!」
「ちょっ、オペラ!あなた何してるの!?」
「あのっ、目立っちゃダメって…!」
オペラの大声によって登校中だった生徒達の視線は、私達一点に注がれる。各々の理由があって極力目立ちたくない私達が慌てふためく中、馬車から学校までの道に長い絨毯を転がし、「どうぞ」と澄まし顔で手を差し出すオペラは間違いなく確信犯だった。くっ、ドS悪魔め。
こんな目立つことになるのなら、入間にあわせて馬車で登校するんじゃなかった…。仕方なしに身を縮めながら馬車を降りると、学年首席のアスモデウス・アリスことアズくんが人垣を掻き分けて私達のもとへとやってきた。その瞳はなぜかキラキラ輝いている。
「流石です!入間様、マリー様!素晴らしい登校でした!!」そう絶賛する彼の背中に「ドーーーン!!!」と衝撃が入る。そこには学年首珍獣のウァラク・クララが、なぜか絨毯にくるまりながらぴょんぴょんと飛び跳ねていた。
「お早う、入間ち!マリち!」
「何をするか、貴様!!」
「絨毯を返してください。」
「見てみてー!入間くんとマリーちゃん専用電話買っちゃった(ハート)」
「「………。」」
この人達はなぜ、こんなにも目立ってしまうんだろうか…。どこからか湧いてきたおじいちゃんも加わり、朝から騒がしい集団を前に、私は深い溜め息をこぼした。
学校では入間以外に親しい子がいないため、私は基本的に入間と一緒に行動している。それは即ち、アズくんとクララと行動を共にするということである。二人は入間が認めたおトモダチなだけあって、心優しい悪魔達だった。
初めは悪魔見知りしてなかなかうまく話せなかった私にも二人は根気強く付き合ってくれて、いつも暖かい笑顔で私を迎え入れてくれた。それがなんだか落ち着かなくて、でも、別に嫌じゃなくて…。私はこれまで同年代の子達と交流を持つことなんてなかったから、入間を含め三人と過ごす学校生活は新鮮なことばかりで、不安も多いけど、楽しいと感じることの多い日々だった。
ただ、彼らといて困ることもある。それは、彼らがとにかくひたすらに目立つということだ。
アズくんはその端麗な容姿に加え、1年にして
“4”のバッヂを手にするエリートぷりに心酔する女子が後を絶たないし、クララは言うまでもないが、その奇行で常に周囲から注目を浴びている。
それに、入間も…。彼は学校の一角に魔界には存在しないフワフワで美しい花『桜』を咲かせ、見物客で大賑わいさせたり、いつの間にやら生徒会長と仲良くなってたり、カルエゴ先生を使い魔にしてたり、二人に劣らず学校ではそれなりの有名人だった。
「あっ、見ろよあの子!特待生イルマの妹だぜ。」
「え?まじ?特待生ともサリバン理事長とも全然似てねーじゃん!」
「なんつーか、地味だよな。オレ、もっとやばそうなやつを想像してたわ…。」
「わかる。あのグループの中じゃ、フツー過ぎて逆に浮いてるよな!」
「………。」
「マリー様になんと無礼な…。燃やしますか?」
「う、ううん。大丈夫!授業遅れちゃうし、早く行こ!」
(別に間違ったことは言ってないしね。)
私みたいな地味でつまらない、魔力も大したことのない引きこもりのビビリ魔と、周りから一目置かれるような彼らが一緒に居るのはおかしいことだ。不釣り合いなんて、そんなこと言われなくてもわかっている。
だったら、なぜ私は彼らと一緒にいるのか。
“2”になることを目標にしたらしい入間は、次の
位階昇級対象授業で結果を残すため、『処刑玉砲』(入間曰く、人間達はこれをドッジボールと呼ぶらしい)の特訓を始めた。
オペラにコーチを頼み、彼の容赦のない厳しい特訓に傷だらけになりながらも必死でついていく入間。そんな彼を応援したくて、私達三人も特訓を手伝ったり、差し入れを持っていったり、傷の手当てをしたりして、入間のサポートにまわった。
敵も味方も全員悪魔では、人間である入間は到底太刀打ちできない。そんなことは端からわかっていても、諦めずに努力を重ねる。目標に向かって真っ直ぐ突き進む入間は、とっても格好良かった。
彼が初めてオペラの魔球を受け止めたときなんか、思わずクララとハイタッチして、ぴょんぴょんと飛び跳ねてしまうくらいに嬉しかった。
本番当日の入間とアズくんの一騎討ちなんて、両方共に全力の、手に汗握るような白熱した戦いで…、私は興奮の余り泣いてしまうくらいだった。
「入間ちすごかったね!びゅんびゅん!ぐるぐるドッカーン!って!!」
「うん、うん…!!二人ともすごっがっだ…!ほんどに゙!」
「あははっ!マリち泣き虫!」
クララがポケットからハンカチを出してくれたので、有難くそれを目元に当てる。すごいな。格好いいな。クラスメイト達に囲まれて、嬉しそうに微笑む入間が、私にはとても眩しかった。彼は案外、魔界でもうまくやっていけるのかもしれない。きっと私なんかが居なくても。そう。だから、やっぱりーー
「さあ、行きましょう。マリー様。」
「エギー先生がジュース奢ってくれるって!マリちもほら早く早くー!」
「マリー、みんなが待ってるよ。」
やっぱり、私じゃ彼らと不釣り合いだ。
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