霧崎第一高校は、偏差値が非常に高いため、お坊ちゃん校と言われるほどの進学校である。

私はそんなに頭が良い方では無いのだが、どうしてもこの高校に入りたかった。…いや、違う。入らなくてはならなかった、が正解かな。
これは私の意志なんて関係ない。私が霧崎第一高校に入学することは、昨年あの男がこの高校に入学したときから決まっていたことで。それに逆らう勇気なんて、私は持ち合わせていなかった。

そのため、中三の一年間はとにかく必死に勉強し、反対する担任を何とか説得して、やっとの思いで私はこの高校を受験した。そして頑張った成果もあり、見事合格。


晴れて今年の春、私は霧崎第一高校に入学することになりました。




新品の制服に着替えると、何だか少し大人になれたような気分になるのは、私だけではないはず。今日から通う霧崎第一高校の制服は、黒のブレザーに赤いネクタイ着用という、ちょっとセレブ(?)感が漂う制服だった。
鏡に映った自分がなんだか育ちの良いお嬢さんみたいに見えて、無意識に頬が緩む。それに、私が通っていた中学はセーラーだったから新鮮で嬉しかった。

どこも変じゃないよね?と鏡の前に立ち、何度も確認していると、一階からお母さんの声が聞こえてきた。


「なまえー。真くん来たわよー!」

「えっ、もう?」


慌てて時計に目を向けると、約束の時間ぴったりだった。さすが真くん。相変わらず完璧な幼なじみに苦笑しながら、私は既に用意していた高校の鞄を肩にかけた。今日から私も霧崎第一高校の生徒である。

一階に降りると、玄関には真くんとお母さんが立っていた。お母さんは、普段より少し高めの声で「高校でも娘をよろしくね〜」と言い、それに対して真くんは「はい。任せてください」と頼もしい微笑と共に頷く。うん、今日も清々しいほど完璧な猫被りだね!


「やあ、おはよう。なまえ。」

「おはよう。真くん。」


私が来たことに気づいた真くんが爽やかな笑顔で挨拶してきたので、私も同じように笑顔で挨拶を返す。もうすっかり慣れてしまった彼の猫被りに、いちいち動揺したりしないのだ。

私は靴を履き、「それじゃあ、行ってくるね」と後ろにいるお母さんに声をかけた。真くんは既に家の外に出ていて、ドアを開けたままの状態でこちらを見ている。どうやら、私が出るのを待っていてくれているらしい。紳士的ですね(笑)


「行ってらっしゃい。入学式、お母さん見に行ってあげられないけど、しっかりね。」

「はーい。」


元気良く返事をした私は、真くんが開けてくれているドアを通って外へ出た。うわっ、綺麗な青空。今日は入学式日和だね!

私が出たことを確認した真くんは、私のお母さんに軽く頭を下げてから、ゆっくりドアを閉めた。

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