私のクラスは、1年3組だった。そして、席は窓際の一番後ろという特等席。入学早々ついてるな、と思わず口元が緩んでしまった。
1年の教室は、全て3階にあるので、窓からの眺めはとても良い。ちなみに、2年は2階。3年は1階らしいから、真くんの教室は2階にあるはずだ。なにかあればそこへ向かおう。……なにもないことを願ってはいるけれど。
無事に入学式も終わり、担任の先生が来るまでの時間、クラスメート達はさっそく友達を作ろうとお互いに声を掛け合っていた。その様子はとても必死で、なんだか可愛い。
まあ、ここで出遅れたら、一生ぼっちで過ごすはめになるかもしれないのだから、必死になるのも当然か。私も頑張らないと…!
気合いを入れ、席を立とうとしたそのとき、「ねえ、」と前の席の子に声をかけられた。藍色のポニーテールがさらりと揺れ、その涼し気な瞳とばっちり目が合う。わあ、すごい美人…。
「私、青葉晴子っていうの。よろしく。」
「あっ、みょうじなまえです。こちらこそ、よろしくね!」
「なまえちゃんって呼んでも良い?」
「うん!じゃあ、私ははーちゃんって呼ぶね。」
「いいよ!」と愛嬌のあるえくぼを寄せて笑うはーちゃん。猫を被ったときの真くんに負けないくらい爽やかな笑顔だ。
なんか運動神経とか良さそうだな、と思った私は、試しに「中学の時、何部だった?」と尋ねてみると「テニス部!」と予想通りの答えが返ってきた。うん、確かにそんな感じがする。
「なまえちゃんは?あっ、待って。当てるから!……うーん、美術部とか?絵上手そう。」
「ぶっぶーハズレ。私は帰宅部だったよ。」
ちなみに私の美術の成績は、三年間ずっとオール3である。うん、微妙。ハズレたことが悔しいのか、口を尖らせるはーちゃんはすごく可愛らしくて、これは男子に絶対モテるだろうなぁ、と私は密かに思った。
それから、すぐ。担任の先生であろう、人物が教室に入ってきたので、私たちは話すのをやめて前に向き直った。
「なまえちゃん。放課後、暇かな?もし良かったら、一緒に部活動見学に行かない?」
「いいよー。テニス部?」
「ううん。テニスは中学だけー。高校では、もっと新しいことをやりたいの!」
そう言って、目をキラキラ輝かせるはーちゃん。ま、眩しい…!どうやら彼女は、とってもアクティブな子のようだ。
私は高校でも何かに入るつもりなんて全く無かったのだが、せっかく誘ってもらったわけだし、見学だけでも行ってみることにした。どうせ、帰っても暇だしね。
私は「どこから行くー?」と聞きながら、朝貰った山積みの部活勧誘のチラシを机に広げる。すると、はーちゃんは「えっ、あのチラシ全部貰ったの?」と驚いた顔をした。……断れない質なんです。
「あ!私、マネージャーとかやってみたい。」
「マネージャー?選手じゃなくて良いの?」
「うん!タオル渡したり、応援したり……なんだか青春っぽいし。試合を間近で見られるとか素敵じゃない?あと甲子園とか連れてって貰いたい!」
「……。」
なるほど。はーちゃんは、意外とロマンチストのようだ。確かにマネージャーは、試合観戦が好きな人には堪らないポジションなわけだけれど…。
花宮君のマネージャーもどきを何度か経験したことのある私にとっては、あまりオススメしたくないものだ。だって面倒な仕事が多いし、すごく体力がいる。まあ、元運動部のはーちゃんなら、体力面での心配は無さそうだけれども。
「じゃあ、マネージャー募集している運動部を見に行こうか。」
「うん!あ、確かうちの学校ってバスケ部とゴルフ部が強いんだよね。……よし。じゃあ、まずはバスケ部から見学しに行こー!」
「え。」
バスケ部って……絶対に真くんがいるじゃないですかぁ!!!
行きたくない。行きたくないんだけど、あんなキラキラした目を向けられたら断れない。ああ、この性格を早くなんとかしなきゃなぁ。私は深いため息をついた。
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