家庭教師ヒットマンREBORN!! | ナノ

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並盛中学校入学式の日。私はあの子の顔を見た途端、前世の記憶を取り戻した。



「な、並盛東小学校出身の、沢田美奈子、です…。えっと、と、特技は……特に、ありません…。その、よろしくお願いします。」

「はい。沢田さんよろしくね。じゃあ、次の子…」



おどおどして頼りなさげなその言動。誰とも視線を合わせず、自分の足元ばかりを見つめる大きな瞳。私や家族以外の相手と話すときは緊張して声が震えるところとか、もう制服のスカートがよれてしまっている鈍臭いところとか……うん、やっぱり間違いない。




彼女は、私の従姉妹のーーー


いや、従姉妹"だった"美奈子だ!!!



そうだ。今の私に従姉妹はいないけど、確か私には極度の人見知りな従姉妹がいたはずだ。どうして今まで美奈子のことを忘れていたんだろう。
そもそも、私は『黒川』という苗字ではなかったはず。でも、気がついたときには、私はこの世に黒川優花として存在していて、そのことに何の違和感も持たず、今の今まで生きてきたわけで…。


あああ、頭の中が混乱する…!これは一体どう言うことなの!?



…いや、落ち着け私。一旦整理してみよう。私の中には今、黒川優花として生きた記憶以外にもう一つ、違う私の生きた記憶が存在している。普通に考えたら、これは前世の記憶ってやつなんじゃないか。

つまり…全く覚えていないけれど、私は前世で何らかの理由により死んでしまって、この世にまた転生した。そして、その前世で生きた記憶が、美奈子の生まれ変わり……もしくは美奈子似のそっくりさんを見たことにより突如蘇った、と。
……そういうことなの?何か美奈子が見てたアニメにこんな感じのやつあったけど、これで本当にあってる?



…うーん。いまいちぱっとしない答えだけど、仕方ないか。

とりあえず、沢田美奈子と接触してみて、彼女が私の従姉妹の美奈子と同じ人物かどうか確認してみよう。
突然のことで驚いちゃったけど、前世の記憶があろうとなかろうと私は今、黒川優花として生きてるわけだし。別に何の問題もないわよね。むしろ、人生を二回も楽しめてラッキーって思考でいこう!


うんうん、と首を縦に振る。私は完全に開き直ることにした。まあ、成るように成るでしょ、きっと。




「ーーじゃあ、最後は君ね。」

「ウッス。俺は、並盛南小出身の山本武。今んとこ野球部に入部予定!皆、仲良くしてくれよな。」




「………え?」



考えることを放棄し、クラスメートの自己紹介に耳を傾けた時だった。聞こえてきた覚えのある声と、その名前に私は自分の耳を疑う。
バッと振り返れば、窓側の一番後ろの席の男子生徒が、ザ・好青年!といった感じの爽やかな笑みを浮かべて立っていた。



「……あー…うん、なるほどね。」



長い黒髪を耳にかけながら、私は呟いた。どうやら、これはただの転生じゃなかったみたいだ。……ふーん。なかなか面白そうじゃない。





「……う、そ……なんで、」



そして、ずっと下ばかり見ていた美奈子が顔を上げ、山本の方を見て驚いていることに気がついた私は、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


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