幸村の病室のドアをコンコンッと理央がノックした。
「入るぞ、幸村」
理央は躊躇することなくどかどかと入っていった。
『お邪魔します』
「相変わらずだね、二人とも。でも、璃琥が来るとは、ね」
幸村が荷物を纏めながらチラッと私の方を見た。
つか、呼び捨てにするなよ!
『あんたのためじゃないから!』
あぁ、もう、私ってどうしてこう不器用なんだろう。
「じゃあ、誰のためだよ」
理央が私にツッコミを入れた。
『…………べっ、別にいいでしょ!どうでも』
「璃琥って本当に素直じゃないよね」
幸村に本当の事を言われてムッときたから言い返した。
『マジあんたってムカつく!そのすました表情が一番ムカつくんじゃあぁぁぁ』
隠し持っていた木刀を振り回した。
えっ、日本はそんなもん持っていたら違反で捕まるってそんなこと知ったこっちゃないね!
今私の頭の中は薄〇鬼で一杯だから!
だって、一君がかっこよすぎるんだもん!
「そんなもの振り回さないでくれる。ここ病院」
幸村は私に微笑んでいた。
その微笑みはけして優しいものではないのがすぐ分かった。
『うるさーい!!別にいいでしょ!』
幸村が恐すぎるから一応木刀はしまっておいた。
でないとマジで呪い殺されそうだった。
「それで二人は何か用があってここに来たの?璃琥や理央も全然来ないからさ。なにか裏があるんじゃないかって思ってたんだよ」
不味い何か答えなきゃだめだ。
『…あっ、えっと…………』
どうして、こういうとき素直に言えないのかな。
仕方ないから私は理央に視線を送った。理央は私の視線が分かったらしいのか私の代わりに説明してくれた。
「へぇー、本当にお見舞いなんだ。君のことだから何か企んでるのかって思ったよ」
『たくらんでなんかないんだから!』
その時ちょうど誰かが入ってきた。
ノックもせずに。
「精市くん、手続きはもう済ませたから、服着替えて荷物纏めて。家まで送ってく………って、そこにいるのは、璃琥だよな!?」
ノックもせずに入ってきたこの非常識な男は、私の父だった。
ずいぶん前に家から出ていったきり帰ってこなかった。
出ていった理由さえもわからないままだ。
『そうだけど。なんで、こんな所にいるの?』
「話せば長くなる」
『じゃあ、話さなくていいや!』
と即答してやった。
だって、聞くのもめんどくさいし。
「えぇぇぇ!そこは、ちゃんと聞くところだろ!」
『いや、大体予想はつくし』
予想が付くのは本当のこと。
さっきこの病院の名前見たとき見覚えがあったし。つか、何回かここに来たのによく会わなかったな。
「そんでさぁ、可愛い娘に頼みがあるんだけど」
きたよ!絶対ろくなこと頼まないな。幸村関連はアウト。
『何頼みって?』
一応私は優しいので聞いてやった(笑)
「精市くんを家まで送ってもらいたいんだ」
おいっ!何故私が男を家まで送らないといけないんだよ。
しかもよりにも、あの幸村精市だぞ!
『ヤダっ!!絶対ヤダ』
父におもいっきり否定してやった。
「うーん、送っててくれればなんか買ってあげようと思ったんだけどな」
物で釣たよ。でも、私はそんな単純じゃないし。
『ふん、誰がそんなのに乗るか!!』
とキッパリ言ってやった。
でないとこのクソオヤジはしつこいのだ。
「残念だな。璃琥が好きなPCゲーム買って一緒にやろうと思ったのに」
クソ!!このヤロー私がPCゲームにどっぷりハマってるってこと知ってたんだな!!
つか、あっち系のPCゲームを親子揃ってやるのもどうかと思うけど、やっぱしPCゲームは欲しいわ!
次から次へと出てくるからお金が足んなかったのよね。
さすがにギャラでも足らないからな。
『分かったわよ、やるからPCゲーム買ってよね』
「はいはい。最初からそう素直に分かったって言えばよかったんだ」
なんかムカつくな木刀で一回殴ってみようかな?
でもクソオヤジには勝てないか。
『言っとくけど私はクソオヤジの為に幸村を送ってくんじゃないんだからね!!全てはPCゲームの為だから』
そう全てはPCゲームの為に私は大っ嫌いな幸村を家まで送るのよ。
「じゃあ、璃琥がんばってね」
理央は私の肩に手をおいてそくざ去っていった。
あれ、理央さんどちらに行くんですか?
『コラ!!待ちなさいよ体力バカ!!』
病室を出て理央に向かって叫んでいた。
「俺これからバイトだから。帰る」
理央はどんどん遠くに行ってしまった。
『…………理央のバカ私を幸村と二人っきりにするな!!』
仕方ない一人でどうにかするか。
『幸村、準備は出来たならさっさと行くわよ!』
「はいはい」
今私達は外にいるのだが何故だか私は無理矢理幸村に手を繋がれていた。
引いたりと色々やってみても彼は離してくれなかった。
『いい加減離せこのヤロー』
「何が?」
こいつ惚けやがった!一発殴りたい。
『手よ、手を離せって言ってるのよ!!このバカ!!』
あっ、バカって幸村に言っちゃいけない単語だった…
「フッ、この低脳………この身体にわからせなきゃだめかな」
ドンッ
幸村がおもいっきり私の手を引っ張って壁に追い詰めた。
両手で逃げ道を塞がれて逃げ場がなくなった。
『ゆ、幸村』
この状況って前にもあったけどどうすることも出来ないのにイラつく!
「何でしゃばるきなの?」
幸村に顎を掬われて目と目が合わさる形となった。
私としては今すぐに目をそらしたい。
突然幸村の顔が近づいて唇に柔らかい感触があった。
幸村は無理矢理唇にをこじ開けて舌を入れてきた。
そして、歯列をなぞり口内を犯していった。
『…んっ………』
仁王寄りも濃厚なキスに頭が真っ白になって身体に力が入らなくなった。
幸村は私の太股を撫でて徐々に上の方を触っていてスカートの中に手を入れた。
『ひゃ……ゆ、ゆきむらっ…ダメ……』
「仕方ない今回はここまで次は最も凄いことしてあげる。じゃあね璃琥」
と言って私を離して去っていった。
『………幸村』
なぜか私は幸村の事で頭が一杯になっていた。
2010年5月20日
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