付き合おう、という言葉を、私はあまり自分に執着がないから承諾した。相手は顔は並みで性格も並みで、何をするにも面倒くさくない私を選んだ。もし、私がハズレで別れたとしても非難の的になることはないし、私は彼に別れを切り出して振るような体力はなかった。向こうが拍子抜けするほどあっさりと体を差し出し、ただ、性欲なのか好奇心なのかよくわからない何かを満たしてやる。それと引き換えに私はクラスの中で地位を確立する。おもしろいもので、何一つ褒められるようなことをしていないのに、恋人がいるだけでクラスの中の地位は格段に上昇する。特に、黒尾鉄朗のような、クラスの中の人気者を恋人にすると。
「お前、俺と一緒にいないときは何をしているんだ」
ある日、呆れたように彼は問うた。そこは窓を開け、風を通した私の部屋だった。
「本を読んだり、友達と話をしたりしている」
欠片も面白味のない言葉を返す。彼はまるで興味がまるでなさそうに、へえ、とだけ返した。
「この前、友達がお前が一人でファミレスで飯食っていたって言っていたな。どうしたんだ」
質問が続く。私は、珍しいとしか思わなかった。笑みと無表情しか浮かべないその表情の読みにくい顔に目をやる。
「親がいなかったから」
なぜこんなことを尋ねてくるのか私にはわからなかった。
「自分で作ればいいだろ」
「一人分は中途半端」
「気にならないのか」
きっと私はひどく間抜けな顔をしたに違いない。
「わからないのか」
黒尾鉄朗は怪訝そうに尋ねる。
私には意味がわからなかった。適当なとこで食べてね、というメモとともに置いてあったお金を持って、ファミリーレストランに行くことに何の問題があるのだろうか。
冷ややか
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