空のペットボトルをごみ箱へ投げ入れ伸びをする里衣子のポケットから駄菓子屋の鍵が落ちると
里衣子は「やべ…っ」と呟き見なかった事にするようそっとそれをポケットに戻した

さすがに時計の表示する数字はもうすぐ日付が変わろうとしている

いつの間にかミキは机に伏せ寝息をたてていた

「で、坊さんは何聞きたかったんだよ?」

里衣子の言葉に坊主はそう言えばちゃんと話していなかったなと思い出したように「あぁ」というと
大したことじゃないんですがと笑った

「いや、兎崎さんが何をさがしているのかはっきりとは知らなかったものですから」

クッションに背中を沈めながら
さっきの話しでようやくわかりましたよと坊主が眉をさげると
「ああなるほど」と里衣子が頷く

「てか坊さん何がきっかけで兎崎に協力したんだよ?」

「え?あぁ、最初は怪しい店が出来たもんだなぁと思って見に行ったら店主も怪しいでしょう?おまけに子供達は噂好きだし帰りは遅くなるし町のパトロールのつもりだったんですが実際噂だけでなく本当に幽霊駄菓子屋だったものですから」

そこまで言うと坊主は思い出すよう笑った

「店主の目的が達成されれば駄菓子屋はなくなると思ったんですよ。最初はあまり子供達が行ってもよくないかと思って何か起こる前にと思ってですが…そんな所ですかね」

なるほどなと目を開くと里衣子は
「でも本気でパトロールすんなら今度からちゃんと足のストレッチしとくんだな」
とからかうように笑いながら立ち上がり台所へ向かいヤカンに勢いよく水を入れると火にかけた

坊主は先刻足をつった事を思い出し「うっ!?」と眉を寄せたが情けないというように肩を落とすと息をはいた

「坊さんラーメン食うか?」

台所からの里衣子の声に「私は大丈夫です」と答えると坊主は隣の部屋に置かれた服や人形などの作品を見回しながら関心したように目を丸くした

「こんだけ作れるなら趣味にしとくの勿体ないですね」

何がだよと言うよう振り向くと部屋を見回す坊主をみて「あぁそれか」と里衣子はカップ麺のフタを剥がした

「いいんだよ趣味で。楽しいぞ小さいのからでかいのまで作るサイズは色々だけどいいのが出来たときは最高だね」

「一番よく出来た一押しはあるんですか?」

興味を持ったのかそれとも話しの間を埋めているだけなのか
坊主はそう里衣子の方を振り向くが
里衣子は「あー…」と眉を曲げると

「あったけど今はないんだ。どこぞの勝手な奴が持ってちまった」

とため息をつきカップに沸いた湯を勢いよく注いだ

その後夜中にもかかわらずなんでもないような話しで盛り上がり完全に寝るタイミングを失うと
途中目を覚ましたミキも加わり結局ラーメンは人数分用意され、いつの間にかカーテンの向こうは明るくなりはじめ
眠気と疲れで目の下にクマをつくる3人の前に置かれた3分どころか伸びきるまで存在を忘れられていたカップ麺は里衣子の朝飯になった


第三話 完






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