何やら・・・・
2013.03.27.Wednesday
「ラストチャンスだぞ、カカロット」
「……っ、ぐ、……っ、離、せ」
「フン。強情だな」
「う、ガッ、ぁあああああっ!!」
悟空を踏みつけていたターレスの足に容赦なく力が籠り、右肩全体に焼けるような痛みが走る。散々痛めつけられ、動かせなくなっていたはずの身体が、反射で反り上がったが、直ぐに重力のまま地面に倒れ、砕けちったガラスの破片が悟空の頬を破った。
「ほんの一口で……楽になれる。いや、それだけじゃない。――宇宙を手に入れることも夢ではない力を得て、選ばれた人間になれるんだ」
「おめぇ、だけ、は……倒す、んだ、オラが……っ」
「ハハハッ。ガキの頃に都合よく記憶を失くして、異星でヒーロー気取りか?……直に目覚めるさ。オレが来たんだからな」
「何……言って、んだ……」
今にも遠のきそうな意識をかき集め、何とか言葉を絞り出していた悟空の鼻を砂塵の匂い混ざって甘い香りが擽る。
虚ろな目で無意識に匂いの元を探していると、目の際に少し滑った液が垂れ落ちてきた。
……なん、だ?
頬骨をつたい、口端から顎へ流れ落ちて行く液体をほとんど無意識に出した舌でペロリと舐める。
途端に口の中に血の味の代わりに爽やかな酸味と、それに続く奇妙に粘着質な甘みが広がった。
「んっ、ぁ……」
「分かったか?」
「え?」
背中を踏んでいた足の重みが無くなった直後、楽しげなターレスの声が降ってくる。
頭を少し動かして、声の方に目を向けた悟空の顔がさっと青ざめた。
「一口目は口移しにしてやるか。……怪我人だからなぁ」
勝利を確信したように片頬だけで笑うターレスの手に握られているのは、赤黒い歪な皮で覆われた禁断の果実。
浅黒い指の間から意外に白い果肉が覗き、握りつぶされて滴り落ちた果汁が悟空の顔にさっきとは比較にならない量でぼたぼた落ちてくる。
ダメ、だっ。ダメだダメだダメだ。
これ以上……味わってはいけない。
頭の奥で警鐘が鳴り響いたが、ごく少量舐めただけの果実の味が悟空の理性を狂わせる。
潰された果肉も混ざって落ちてくる果汁は、いっそう濃い香りで悟空を誘惑する。
……どう、なっちまうんだ?
片膝をついて悟空の顔を覗き込んできたターレスの、漆黒の瞳を見返す。
声にならない悟空の不安に答えるように、ターレス顔に酷薄な笑みが浮かんだ。
「オレのものになるだけのことだ」
悟空の傷だらけの頬に落ちた小さな果肉と果汁をすくい、ターレスは粗い呼吸を繰り返す悟空の口内に指ごと突っ込むと、あやすように囁いた。
神精樹で体力回復、あれ?なんか身体熱ぃな……のありがちコースです><
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