砂の匂い、鉄棒の鉄の匂い、そして一番記憶に残ってるのは校庭にたくさん生えている杉の木だ。花粉の季節になるとマスクをする生徒が増える。今は花粉の季節じゃないのが不幸中の幸い。今集まってる5人のうち4人はマスクが必須になるから。そんな杉の木の下に俺たちは集まっていた。
「柚子、ちゃんと持ってきたか?」
「あったりまえじゃん!!」
見て、と言わんばかりにお菓子が入っていただろう缶を取り出した。それぞれの手には手紙を持っていた。小学生なら1度はやるだろう、タイムカプセルだ。柚子と茉由の2人が卒業前にやりたいと言いだして、放課後いつも遊ぶメンバーでタイムカプセルを埋めることになったのだ。内容はもちろん本人以外みんな知らない。缶の蓋を開けてみんな手紙を入れて、男子組で穴を掘る。
「こんだけ掘れば大丈夫だろ」
一番体力のある琢磨が額についた汗を拭き取り、真也がタイムカプセルを入れてまた上から土をかぶせる。シャベルで地面を再び固めて5人で指切りをする。
「明後日で卒業しちゃうけどこれからも友達だ」
「…また、僕と遊んでくれる?」
「当たり前だろ」
「何があっても私たちは5人一緒にいる」
「20歳になったらまたみんなでここに来よう」
指切りをしてから、私たちは近くの岩に置いてあったランドセルを背負い帰路についた。
樹、琢磨、真也、柚子、茉由
これからこの5人のそれぞれの道がそれぞれ開かれようとしていた。