・楽しい時間(ポロロッチョ)
現パロです
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「あそこの風俗店すっごくいいよ~ナナシも行ってみなよ!」
ある日ナナシは友人とカフェに行くといきなりこんな話が出てきた
ナナシは風俗店なんて行ったことがない。
そもそもどんなところなのかも分からない。
つまり、もとからあまり性的欲求がない体質なのだ
そんな話題をふられても首をかしげることしか出来ない
「…ごめん、風俗店って何?」
「え、そこから?!もう大人なんだからそれぐらいは知っておこうよ~…」
「はーい」
と、呑気に返事をする
「では教えようじゃないかナナシ耳貸して」
そして素直に耳を貸した
「風俗店っていうのは寂しい時や、慰めて欲しい時に行くところだよつまりー…」
「なるほどねぇー…でもコソコソ話す内容でもないじゃん」
「ぜんぜん聞いてないし分かってないじゃんかーまあ、後で行ってみてね」
確かにナナシは孤独だった
気が全然周りの人たちと合わなく、そしてそれを合わせようとしようとしなかった。だから友達は少ない
そして親は小さい時に交通事故でこの世を去ってしまった
寂しい時なんか常日頃ある
それを考え、ナナシは後で行くことにした
夜になり、ためしに行ってみようと思ってナナシは風俗店へ行った
(…ここが言っていた風俗店か)
ナナシは風俗店の前に立っていた
どういう所なのかも分からない、だから少し恐怖を感じていた
そしてナナシは風俗店の中へと入っていった
「こんばんは今日はどちらの方にします?」
「じゃあこの人で」
と、カウンターらしき所から話し声が聞こえた
(どうやらあそこはカウンターらしいな、話し終わったら私も行こう)
ナナシは話し終わるまで待った
そしてすぐに話が終わり、ナナシはカウンターへと行った
「こんばんはこちらの中からお相手をお選びください」
「あの、初めてなんですけどどうすれば…」
「申し訳ございません、初めての方でしたか。では説明します」
この店はこの表の中から一人選べる事ができ、時間は自分で決められるという事だった
ナナシはそれを承知し、相手を選ぶことにした
「あの、初めてなので相手などよくわからなくて選べない時はどうすれば…」
「それならばおまかせでお相手をこちら側で選ばせていただきます。お客様は初めてだそうなのでサービスとして当店で1番人気のヴィーナスでいいでしょうか」
相手なんかナナシはあまりこだわってもないからナナシはそれでいいと答えた
「では032号室でお待ちください」
そして鍵を渡されナナシはその部屋へと向かった
(ヒマだなー)
そう思いつつ、ダブルベッドへナナシは寝転がった
~5分後~
部屋のドアが開いた
それに気づき、ナナシは上半身をあげた
「待たせてゴメンなさいチェリーパイ、さて、アナタはワテクシに何をしてもらいたいの?」
(オネェなんだ…)
「私はナナシです。よろしくお願いします」
「あらあら固くなくてイイわよ」
ナナシはこの時点でもう緊張していた
全然男の人と話したことがないのだ
仕事は女性社員だけの会社に所属しているため、男慣れなどしていない
「話し相手になってくれませんか?」
「え?」
それにヴィーナスは驚いた
ここは風俗店。
だから普段はセックスなどそういう事をする店だ
「私おかしいこと言いました?」
「いえ、大丈夫よ」
これはヴィーナスにとって仕事だ
客に言われたことは断れない
それに別にセックスがしたかったわけでもない
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「…もうそろそろ時間ね」
お話をしている間にあっという間に時間が過ぎてしまった
ナナシにとってここまで話せる人が初めてで、とても楽しく嬉しかった
「スッキリしました!本当にありがとうございました!」
「本当に何もしなくていいのかしら?」
「はい」
流石にナナシも風俗店はどういう店なのかは察した。
でも性的にはなにも欲しくないので何もしないでただ、話すだけで終わった
「お話、嫌でしたか?」
「そんなわけないじゃないの!」
ヴィーナスはこういうことは初めてで驚いたが嫌でもなかった。
確かにお話するのはとても楽しく、すぐに時間は過ぎていった。
また人とはちがうナナシの事が少し気になったのだった
人は辛くなったらどうしても性にすがりたくなる。でもこの子は違う。
ただ、孤独で愛が欲しいだけだったのだ
この子にとっての愛とは性的なものではなく、ただ、自分を必要としてくれることだけがその子にとっての愛だった
「じゃあそろそろ失礼させて頂きます。ヴィーナスさん、今日はありがとうございました!」
「バイバイチェリーパイ楽しかったわ、また楽しませてね」
ヴィーナスは語尾にハートがつくくらいなほどにそう言った
そしてナナシは部屋を出ていった
「うふふっ、なかなか面白い子はぁ…抱きたいわ!」
それからというものナナシは週に1度、ヴィーナスを指名して毎回のように雑談をした
ナナシにとってその時間はとても楽しみであった
ヴィーナスはナナシと会っていくうちに惹かれていった
週に1度ではなく、毎日会いたい。いや、傍にいて欲しい。と、思うようになった
そしてほかの客がとても汚い人間だと思うようになってしまったのだ。
会ったら必ず「抱いてあげるわ」と、言うもののナナシは拒否をする
本当に彼女はあまり性欲がない綺麗な生き物だった
心も身体もとても綺麗で穢れのない、まるで綺麗な宝石のように触れたら壊れそうでとても怖いほどだった
そのある日、ナナシはまたヴィーナスを指名していつものように雑談をした
(今日のナナシ、お酒飲んだのかしら…顔がとろーんとしてる、それに着崩れも無防備すぎよ、ワテクシがどれだけ我慢してるのか全然分かってないじゃない)
そんな無防備なナナシにヴィーナスはもう我慢の限界だった
「ナナシ、お酒飲んだの?」
「うん、ワインをひと口だけ、でも私酔いやすかったからちょっと酔ってるかも」
「抱いていい?」
「だーめ」
「つれないわねえ、ねえ、ナナシちゃんと今から言うことをちゃんと聞いて」
「うん、なーに?」
そしてヴィーナスはナナシの顎を持ち上げて自分の方へと向かせるように目を合わせた
「ナナシ、好きよ、本当に抱きたいくらいなの」
すると、長い沈黙が続いた
「ヴィーナス、いつものようにまたからかってるんじゃないの?」
「これは本気よ」
ヴィーナスの眼差しは真っ直ぐで嘘ではないということがナナシは分かった
「っ…」
ナナシは息を呑んだ
「こんなワテクシは嫌かしら?いつもと違うから」
「ち、違う…、全然嫌じゃない。むしろ嬉しいんだ、だって私もヴィーナスの事好きだったし…」
「?!…そうなの?」
それを聞いてヴィーナスは凄く驚いた
「…でも、ヴィーナスは毎日他の女性とか相手してるからいつか何もしない私のこと飽きちゃうかなって」
「そんな事ないわよ!だからワテクシはナナシは抱きたい程なのよ?!他の女なんて抱きたくないけれど仕事だからしょうがなくやっているだけよ」
「うん、ありがとう。でも、いつか苦しい思いをしたくないから気持ちには応えられないよ」
チュッ
ヴィーナスはナナシの唇を奪った
「!、ヴィーナス?!」
「ワテクシの本名はポロロッチョ、ヴィーナスポロロッチョよ」
「ポ、ポロロッチョ…なんで私の口に…」
「ワテクシは本当に貴方が好きよ見捨てたりしないわ」
「ポロロッチョ…ありがとう」
ポロロッチョは私を見捨てない。ナナシはそう確信した
ナナシは今まで見捨てられてばっかだったのだ。
それが続くたびに嫌になった。だからさっきみたいな自己防衛をしたのだった
「私も大好きだよ」
そうナナシは応え、ポロロッチョは優しく微笑んだ
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