8 発明家と



「…で、今日はどうするの?」

「どうするも何も私は授業に出ないつもりだよ」

「ダメっすよ」
「なんでよ」

私は少しムッとしながら天海に問う


「俺、ミョウジさんと一緒に授業受けるの好きなんすよ」
「…」

「あ、ボクは入ってないんだね、まあ当然だよねこんなゴミクズいてもしょうがないって言うのに」

狛枝は一人でブツブツ言い始めた。
天海は「狛枝さんは席が遠いっすから…」と、補足をつけていた。
天海にそう言われては授業を受けないわけでも…

あ、そういえば今日は入間と一緒に作業を進める日だったっけ?
そう考えていると廊下からは誰かの走っている足音が聞こえた。


「おい、雌豚!今日はオレ様と一緒に作業する日じゃ無かったのか?!」


その足音は入間のものだったらしく入間は勢い良く教室のドアを強く開いて私に話しかけた。

雌豚…というのはきっと私のことだろう。
まあいつもの事だしきっと入間にとってはジョークのつもりで呼んでいるはずだし気にしない事にしよう。


「ごめん、少し忘れてた。入間、私と作業する日だけ登校が早いね」

「べ、別にオレ様がオメーと作業するのが楽しみで朝早く起きた訳じゃねーからな!な、なに勝手に自惚れしてんだよ雌豚!」

「楽しみで早く起きたんだね」
「ち、ちげぇよぉ!!」

入間は顔を赤くしながら私に反論してくる。

入間の反応を見ているともっと意地悪したくなるのだが、これ以上意地悪してしまうと可哀想なのでやめておいた。


「という事は今日はミョウジさんは入間さんと予定があるんで授業が受けられないんすね」
「まあそうなるね」

そう私が言葉を返すと天海は「そうっすか…少し残念っす」とか言い出すので少し申し訳なくなった。

もしこのセリフをあまり天海と面識がない女性が言われたら間違いなく惚れてしまうだろう。

天海は自然に女性を惚れさせる事を言うから恐ろしい。
気をつけないとすぐに落ちてしまうだろう。
多分私は大丈夫だと思うけど。


「おお?なんだ?お前達も俺様の美貌に見惚れて一緒に作業したいのか?
どうせオレ様の身体が見たいんだろ?今日は特別に見せてやる!さぞかしこの童貞達はオレ様の美しい身体に下半身をビンビンにさせるだろうな!」


「そう言われると行ってみたいけれど恐れ多いから遠慮しておくよ」

入間がいつも道理のテンションで天海と狛枝に言うが、狛枝が丁重に断った。
入間は「ちえっ、食えねぇ奴だな」と呟いていた。


「んじゃずっとここにいるのもなんだしそろそろ行こうか入間」
「雌豚が言う事だし、しょーがねーから行ってやるよ!」

「今日は入間と作業する日だからついでに沢山やりたい事進めたいんだよね」
「おぉ!今回はオレ様の出番が多いのか?!なあなあ早くイこ!早くイこうぜ!」


私が言うなり入間は目を輝かせてまるで小さな子供が面白そうなものを見つけたような目をしていた。

最初は入間は「めんどくせー」とか「なんでオレ様が発明以外に…」とか言っていたのにな。

「そういう訳だから当分天海と狛枝達とは顔が合わせられないんだと思うんだよね、だからたまには会いに来て欲しいかな」

「了解したっす、作業頑張ってくださいね」
「ボクは毎日会いに行ってもいいけど…でもそれじゃ作業の邪魔になっちゃうよね」


私はそう言ってから天海と狛枝に手を振ってから入間と一緒に作業部屋に向かった。


「…お前さ、頑張ってるみたいだけどたまには休んだ方がいいぜ?」
「私は充分休んでるよ昨日だって授業中サボって作業部屋で寝てたし」
「そういう事じゃなくてよ…」


何故かそこで、入間は言いにくくした。
こんな態度をとる入間は始めてみた。

いつもは入間なりのジョークを私にかましてくるのだが珍しいこともあるものだ。


「別に言いにくいことなら無理に言おうとしなくても大丈夫だよ」

私は入間に気を使ってそう言ったのだが、入間は「いや、言える事だから大丈夫だ」と返された。


「…この前さ、オレ様お前が他のクラスの女子生徒達に呼び出されていたところを見ちまったんだ。」
「ああ、あの時か」


あの時…というのは2週間前くらいに女子生徒に突如呼び出されていくらか暴力を振られた時の事だ。
我慢すれば全然大したこともなかった。


「…殴られてたな。わざと制服の上から見えないところにな。」
「うん、そうだね、でも今はもうそのアザはだんだん良くなってきた方だし大丈夫だよ。だから心配しないでいいよ」

「そうじゃなくてよぉ…」
「あ!ミョウジさんと入間さんじゃないですか!おはようございます!」
「んあー、お主と入間かおはよう」


入間が何かを言いかけていた言葉は茶柱の元気な挨拶と夢野の気だるげな挨拶にかき消された。

「お、おう。おはよう」
「茶柱、夢野おはよう今日も元気だね」
「はい!ミョウジさんも元気そうで何よりです!入間さんは…どこか元気が無さそうに見えますがどうしたんですか?」

「お主が元気がないのは珍しいのぅ、ほれ、いつもの下ネタを言ってみろ」


ほれほれ、と夢野は入間の顔を覗き込む


「今日はそういう気分じゃねーんだよ…」

入間は顔を俯かせたままだ。
入間は何を思いそこまで落ち込んでいるのだろうか。

きっと言いにくいことだろうからちゃんと作業部屋で聞いてみよう。
きっと作業部屋ならだれも居ないはずたししっかりと理由が聞けるはずだ。


「なんだかよく分かりませんけどお大事にしてくださいね!」
「ウチの魔法で直せるんじゃが生憎今日は魔法が使えなくての、すまんが直せられないんじゃ」

そう二人は言って手を振って別れた。


「入間、言いにくいことなら作業部屋に言ってからちゃんと聞かせてよ」
「ああ、ありがとな」

それを言うと私はさっきより作業部屋へ行く足を早めた


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