▽ 23話
私はイスタカさんからもらった言葉に嬉しさを感じながら自室に戻っていた
「おい、ちょっといいか」
背後からそんな言葉が聴こえた
どうせ私じゃないだろう、そう思ったからいつも道理に無視した
「お前だよ無視すんなナナシ」
え、私なんだ
そう思いつつ、私は後ろを振り返った
その声の正体はアタリだった
「ご、ごめん…気づかなかった」
「チッ、鈍いやつ…お前に話があるんだよ」
「なに…?」
ドンッ!!!
「ぐっ…!!」
突然アタリに肩を掴まれ、壁にそのまま勢いよく打ち付けられた
これってサーティーンさんにも同じような事された気がする
「言っておくけどお前、勘違いするのもほどほどにしとけよ?」
「…え?」
「俺さっきの見てたんだよ、」
さっきのとはイスタカさんと私のやりとりの事だろう
「お前がどうとかこうとか思っててもどーでもいいけどな、お前には味方なんていねーんだよだから希望とかそういうモンなんかさっさと捨てて消えろよ」
その言葉は私の存在価値を否定する言葉だった
それでも私は負けないようにした
「でもイスタカさんは私の事嫌いでもない好きでもないって言ってくれた」
「だから何だよ、どうせイスタカが言っていたことはいつか嘘になるんだ、
だからしんじたって意味ねーんだよ」
「それでも私は信じる、誰か一人が私がいてもいいってほんの少しでも思っているならば私はそれを信じる」
「信じるからこそあっけなく砕かれることをお前は知ってるのか?
お前は何も知っていない、どうせ今まで楽してきたんだろうな?」
ラク?
ラク?あぁ、楽の事か
楽って何?意味わからないよ、この人生に楽なんてあったかな?
毎日息のしづらい、私の居場所がない世界をラクというの?
「私は楽なんかしてない…」
「んなこと言ってる奴が1番楽してんだよ、楽してきたから楽ってどんなもんか知らねーんだろ?」
言われてみると私はよくとアタリたちのことなんて知らない。
…もしかしたらアタリたちは私よりもずっと辛い思いしていたのかもしれない
私よりもずーと、何百倍も苦い思い出をしてきたのかもしれない
なのに私は辛いだなんて思っているんだ
だからアタリの言っているとうり私は楽なんて知らないのかもしれない
だから否定なんてできない
「…」
「だんまりかよ…ここではお前は誰にも好かれてないんだ今まで楽ばっかしてきたからな!」
そのアタリが私は一瞬誰かと重ねて見えた
_「お前は誰にも愛されたことがないんだよ」_
キーンと頭が痛くなる
…そうだよ
「…」
「なんかしゃべれよ!お前なんか消えてしまえばいいんだ!さっさと消えろ目障りなんだよ!!」
私は愛されたことがないんだ
そして誰にも愛さるとこは二度とない。
それは今まで私が周りの皆よりラクしてきたから
そうだよね?
私の今までの前の世界での生活は全て周りの人達よりもラクだったんだよね
なのに今まで私は辛いだなんて勝手に思い込んでた
愛されてないだなんて勝手に思ってた
…ごめんね、
皆ごめんねごめんなさい
今までごめんなさい。楽してごめんなさい
「…」
「なんで黙ってんだよ!」
「…そう…だね」
「!!」
私の口からは弱々しい震えた掠れた声が出た
「私はラクというものをしてきたかもしれないや、これじゃ皆私を恨むわけだよね」
「…当たりめーだろ…」
「ごめん、ごめんなさい。今までずっとごめんなさい。
消えるよ消えるから、」
「…」
「…本当にごめんね」
「っ…!!」
私はそう言ってできる限り微笑んで緩くなったアタリの拘束を解いてアタリから離れるように、いや、皆から離れるように猛ダッシュした
バンッ!
私は屋敷から外へと出た
ここはプログラムのはずなのに外までリアリティが高いな
「はッ、はッ」
息が切れる、苦しい、早く、早く…消えなきゃ
存在を消さなきゃ、死ななきゃ、
なるべく皆より遠くへ行って死ななきゃ
どうしてだろう、何故か私気持ちが高ぶってる
…そうだよ私はずっと死にたかったんだね
今まで無理して生きていたんだね
「っ?!!」
走っていたその瞬間に視界がぐにゃりと歪んだ
そのお陰で私は地べたに倒れた
「はッ、はッ……ハハッ…」
息がしずらい。意識もだんだんきえていく、これが死なのか?
死ってこんなにも寒いんだ
…寒いのは嫌だよ
そこで私は意識を手放した
_____________
_「…そう…だね」_
アタリは正直戸惑っていた
あの時のナナシが脳裏から離れない
一瞬胸がジクリとすごく痛くなった
_「ごめん、ごめんなさい。今までずっとごめんなさい。ラクしてごめんなさい消えるよ消えるから、」_
_「…本当にごめんね」_
特にこの時のナナシにアタリは戸惑いを見せた
(…今まで嫌がらせされてきたのにまだ皆の事想ってるのかよ…
いや、もしかしたら偽善者かもしんねぇ、…でも本当だとしたら…でも例え本当に偽善者だとしてもあんな顔なんてしない筈だ…
俺はそんな奴の気持ちを)
ぶち壊したんだ
アタリの頭の中にはその言葉が浮き出てきた
「流石に言いすぎたかもしんねぇな…」
(俺は消えろだなんて言ってしまった…この世界での消えろは死に値する。…まて、俺は消えろって言ったんだよな?…だからナナシは消えるって…)
アタリは血の気が引いた
(という事は今頃ナナシは…!)
アタリはナナシが走っていった方向へと走り出した
「チッ、何処だよっ!!」
アタリは屋敷中を探した
(偽善者は隠れている筈だ本当に隠れているかもしれない。)
そうアタリは思って探したがどこにも居ない。
第一、発見者がいないのだ、3階の階段にはもともとマリアがいた、だから3階にはいない。
2階の階段近くの廊下にはアダムとマルコスが話していた
そして1階の部屋には他のヒーローたちがいた(テスラを除いて)
地下1回にはテスラ
だとしたら考えるのは外、本当にナナシは死にに行ったのだ
アタリはどうしよう、その一心だった
アタリは今の自分の気持ちがよく分からなかった
ただ、自分の責任になりたくないのか、それとも…
アタリはどっちがどっちにナナシが行ったのかわからない道をひたすら走った
だんだんと日は沈んでいく
そしてもう日はなくなり、静かな夜となった
静かな夜となってもアタリは走り続けた、転んでも、苦しくてもナナシを探した
夜となって随分と時間が経った時…
「ナナシ!!」
倒れ込んでいるナナシを見つけた
アタリはホッとした
が、しかしアタリはナナシに近付いて分かった、ナナシが死んだように眠っているのだ
試しに呼吸を確認してみた、するとナナシは呼吸すらしていなかったのだ
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