過去拍手文 | ナノ


2-A/3

もしかしたらまだ自室に居るのかもしれないので、思い切ってイゾウさんの部屋に行ってみる事にした。



モビーに居る筈のイゾウさんにこんなに会えないのは久しぶりな気がした。
イゾウさんと過ごす時間がいかに当たり前の様に沢山有ったのかを、改めて実感する。

「どうしたんだよい、難しい顔して」
「あ、マルコ隊長」

廊下を歩きながらいつの間にか寄っていた眉間の皺を直して「いつものお礼です」と包みを手渡すと「よい」といいながら受け取ってくれたマルコ隊長は、何だか少しニヤついて居るように見えた。

「…どうかしました?」
「いや、ルリがこういうイベント事に乗るとは思わなかったからよい」
「うっ……」

誕生日は別として、確かに今までこういう日に何かをした事は無かった。周りで女の子が盛り上がってても特に興味が無くて、意外に淡白だとか薄情だとかそんな事ばかり言われてたのだけど…

「ま、原因は分からなくねえが…」

わたしがチョコを用意する気になった原因とやらに気付いているマルコ隊長に、思い切って聞いてみる。

「その原因の人を探してるのですが…」

そう言うと、マルコ隊長の頬がピクリと小さく動いた気がした。

「朝から見ないんですよね。知ってます?」
「…いや、知らないねい。あぁ、午後からは鍛練だからな。イゾウ探して遅れんなよい」

「ありがたく頂くよい」と言い残し、マルコ隊長はそそくさと親父の部屋の方に歩いて行ってしまった。

(マルコ隊長、絶対何か知ってる気がする…)


隠す様な事は何も無いと思うのに…


次第に何と無く不安になって来たわたしは、足早にイゾウさんの部屋に向かった。

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