※後半裏注意!
 ※臨也さんお誕生日話












「臨也、何かしてほしいことねぇか?」


もしも、いつもはぶっきらぼうでつっけんどんな奴が突然冒頭のセリフを吐いたら、君はどう思うだろうか。
確かに俺達は世間一般では恋人と呼ばれる存在で(男同士の恋愛に世間一般が通用するかは置いといて)、今だって彼の家でデート中なわけだけど。けれどもこんな仲になる前はお互い殺し合っていたのも事実なわけだから、そう考えるとやっぱり


「……どうしたの気持ち悪い」


気持ち悪いよ? 怪訝そうに言うと、シズちゃんは非常に説明しにくそうに、言い方を変えれば歯切れ悪くゴニョゴニョと俯いてしまった。何なのほんと。


「その、よ」
「なに?」
「……っい、いいから! 何かしてほしいことねぇかって聞いてんだ! あるのかねぇのかさっさと答えやがれ」


今度は逆ギレ? いよいよ彼の言動が理解出来なくなってきた。まあ随分と前からシズちゃんは理解できなかったのだけど、今回はいつにも増してだ。


「してほしいことねぇ、例えば?」
「……肩揉みとか」
「シズちゃんに頼んだら肩破壊されるからヤダ」
「……ご飯作って欲しいとか」
「シズちゃん、君が作るのは食べ物という名の毒物だよ」
「……どっかに行きたいとか」
「今から? シズちゃん一人で行ってらっしゃい。俺は留守番しとくから」


あ、キレたかな。シズちゃんの体は怒りのせいかふるふると震えて、拳は音がしそうな程に握りしめられていた。けれど、いつまでたっても彼の怒声も拳も飛んでくることはない。


「怒んないの?」
「……今日は、我慢する。すっげえムカつくけどな」


盛大に舌打ちをした後、シズちゃんはボフンと俺の横に腰掛けた。
今日、珍しくシズちゃんの方から誘ってくれたデート。執拗に問い掛けられたしてほしいこと。そして、今日は怒らないという彼の言葉と態度。それだけ手がかりがあれば、あとは芋づる式に答えを導き出すことができた。


「そっか、今日俺の誕生日か」
「……やっと気づいたのかよ」


だって23歳にもなって誕生日を祝って貰えるだなんて誰が思うだろう。正直、俺の誕生日なんて俺を含み皆忘れていると思っていたんだ。それを、こいつは、


「……おい、何赤くなってんだよ」
「あ、赤くない!」
「嬉しいならそう言えばいいのによ。素直じゃねぇの」
「ばっ…、誰が化物なんかに祝われて喜ぶか! 俺の誕生日なんだから、せいぜい役に立てるよう奉仕してよね」


最初とは正反対に意地悪そうな表情を張り付けたそいつは、俺の言葉にいっそうその色を濃くした。あ、マズったかな。シズちゃんの目が怖い。

まるで獣のようじゃないか


「ほお、臨也くんは俺にご奉仕してほしいってか」


ならしてやるよ、手前のお望み通りになァ。そんな言葉と同時、俺は黒い影にソファへと押し倒された。