僕の好きな所は?







「ねぇねぇ!僕のどこが好きー!?」


やたらとテンションの高い彼、恋人の五条 悟は怪我をして任務から帰ったばかりで、仮眠をとろうとしていた私の所にやって来てはそう尋ねてくる。
また何か始まった、と私はベッドで寝返りをうちながらうーん、と唸った。


「生徒達がさー、涼華の趣味が悪いって言うんだよ?」
「何で?」
「僕と付き合ってるから」
「なるほど」


そう言われちゃあな、と私は枕に顔を埋めると、彼は不服そうにベッドに潜り込んでくる。


「言い返してやってよ〜!僕らは十年も付き合ってんだよ?あるでしょ、いっぱい!」


私は眠気と戦いながらもそうだなぁ、と思いつくことを話していく。


「軽薄な感じとか?昔は他人のことなんてどうでもよさそう、とか思ってたでしょ。でも今は違うよね。傑のことがあって、傷ついて、でも生徒達と上手くやってる。でもこうやって、私が怪我してもヘラヘラして笑ってるのも、夢の為によく考えてるとこも、私は好きだよ」


彼の胸にぺたりとくっつきながら目を瞑り、もう寝たいな、と考えていると、彼はギュッと私を抱きしめる。


「お前くらいだ、そんなこと言うの」
「そう?」
「普通はさ、かっこいい!強い!お金持ち!って感じでしょ」
「そこは別にどうでもいいかなぁ。でもその強さが悟を作ったっていうなら、その強さも好きだろうけど」
「僕の中身が好きなんだ」
「容姿なんて見飽きる。顔がいいからって何、お金は必要だけど、普通に生活できればいい。人間、大事なのは中身でしょ」
「そっかぁ!やっぱ趣味悪いなぁ、涼華は」


それでも彼は嬉しそうに私の髪を優しく撫でる。
あぁ、寝そう。


「あと……私が死んでも割り切ってくれそうなとことか」
「あー……」
「仕方ないと割り切って、前に進んでくれそうだよ」


彼は強い。きっと私が死んでも泣いたりしない。弱いから仕方なかった、そう思って前に進んでくれる。
そう思ってる。

私はそう思いながら、彼の体温に包まれながら眠った。




「分かってないなぁ…僕だって、恋人が死んだら、悲しいし、寂しい。もしかしたら、泣くかもしれないよ。お前が思ってるより僕は強くない」


その言葉は彼女に聞こえることはなかった。
彼もそっと目を瞑り、弱っている彼女の体温をしっかりと感じていた。

「おやすみ」







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