姉弟じゃ出来ないこと








生まれつき、桃色の髪が好きじゃなかった。
でも、新入生の虎杖 悠仁は私と同じ髪色をしていた。
宿儺の器とはいえ、彼の人柄の良さを感じられ、その地毛だという髪色にも親近感を抱き、まるで弟が出来たような気持ちでいた。
だから……


「悠仁、私のこと、お姉ちゃんって呼んでもいいんだよ?」
「いや、遠慮しときます……というか、何で毎回、そう呼ばせたがんの?」
「私、兄弟欲しかったし、悠仁が可愛くて可愛くて……」


悠仁の人懐っこい性格、これは人誑しの素質がある。
見事に彼に魅入られた私はただ彼にそう呼んでほしかった。


「ダメ?」
「俺、涼華先輩のことお姉ちゃんと思ったことねぇよ?」
「そうかもしれないけどさぁ……」


悠仁は不服そうに眉を顰めると、ずいっと私の顔を覗き込む。


「先輩の喜ぶこと、してあげたいけどさ、そう呼んじゃうと、もう何か、本当に姉弟みたいじゃん?そうなりたくないんだけど」
「分かる分かる、私が姉なのは嫌だよね」
「そうじゃなくって!あー……全部言わないと分かんない?」


私が首を傾げると、彼は少し照れ臭そうに、口を尖らせた。


「ちゃんと涼華先輩って、名前で呼びたい。それに俺、涼華先輩と、姉弟じゃ出来ないこと、したいんだけど」


そっと彼は私の指に触れると、私はすぐにその意味が理解出来て、鼓動が速くなる。
まるで犬のように懐いていてくれた彼が、今は大きな獣のように見えた。
いつもとは違う、熱を孕んだその瞳が私を覗き込んだかと思えば、そっと私の耳元で囁く。


「ダメ?涼華」


ダメだなんて言えなかった。
その時にはもう、私は彼を弟のようだと思えなくなってしまっていたから。








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