やっぱり野薔薇様








「私の好きな人ですか?へへ、身近にいますよ」


同期の壱紀が五条先生と話しているのを聞いて、俺達は彼女に声を掛けようとした。
しかし、その内容が聞きたい!と釘崎と虎杖に止められ、俺達は隠れて彼女達の言葉に耳を傾ける。


「えー、誰々?普段そういうの出さないじゃん?君達って。もしかして一年生にいる?」
「先生と恋バナって何か不思議な感じ……でも正解です」
「マジで?言わないからさ〜教えてよ」


五条先生は俺達の存在に気づいていて壱紀に質問している。タチが悪い。
そんなことを知らない彼女は、じゃあヒント!と明るく話す。


「まず、かっこいいとこが好きになりました」
「ほ〜、それじゃあ絞れないなぁ、君の感性だし」
「えーと、笑顔が可愛い!」


そこで無愛想な俺は除外されたわけだ。それを小声で残念だったな、伏黒、とプププと笑う虎杖と釘崎。
別に彼女に恋愛感情はないとはいえ、何かムカつく。
とりあえず虎杖の頭は殴っておいた。


「うんうん、他には?」
「ほ、他にですか?そうだなぁ……とても優しいですよ。いつも笑顔で、私を気に掛けてくれてて……」


もうその時点で俺じゃなくなったんだから、虎杖だろうな。
それは全員感じていたことで。


「マジかー、すっげー嬉しいんだけど……」
「こんな芋くさいのどこがいいのかしら」


心なしか、釘崎の元気がない。
いつもキツい口調でしか話さないが、虎杖が好きだったのか?


「なるほどなるほど、悠仁だね!」
「え!違いますよ!」
「えぇ、違うの?」
「正解は……野薔薇ちゃんです!先生、言わないでくださいね?」


あまりにも衝撃的な言葉だった。
俺達は彼女は女であるから、自然に相手は男だと思い込んでいた。
だから、え、マジ?釘崎?と驚く虎杖に、俺も同じ感想だった。

一方、釘崎はよっしゃ、と小声で喜びの声を上げ、ガッツポーズをしている。
困らないのか?という心配も束の間、釘崎はそこから飛び出していく。


「話は聞かせてもらったわ!」
「の、野薔薇ちゃん!?や、やだ、聞いてたの?」


釘崎はガッと彼女の手を掴み、彼女の髪を撫でながら引き寄せる。


「涼華は私が幸せにするわ、一生ね」
「の、野薔薇ちゃん……」

その言葉に赤面する彼女は、やはり釘崎が好きなのだろう。そして釘崎もまた壱紀のことが……


「う、嬉しい。私、野薔薇ちゃんのこと大好きだから……」
「私もよ。早く伝えておけば良かったわ」


そう二人は抱き合い、残された俺と虎杖と五条先生はポカンと口を開けてその様子を見ていた。


「何か俺、途中まで自分だと思ってたの、すっげー恥ずかしいんだけど」
「意外だったね。二人共、仲が良いとは思ってたけど、恋愛感情まであったなんて」
「五条先生、知ってて言ってたんじゃないんですか」
「いや?彼女、顔に出さないからさ。面白半分で聞いてみただけなんだけど」
「うわー、何か、男として負けたって感じ……」
「「それは分かる」」


俺達は目の前でイチャイチャし出した同期の女二人に、何故か敗北感を感じていた。








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