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「あ〜もうっ、最悪!」
ガシャンッと、腕に嵌められている手錠を床に打ち付け、ガックリと肩を落とす少女。
その少女の名を、リリア・D・ユイという。
白いニット帽から、腰まであるウェーブ掛かった金糸のように煌めく髪がサラリと揺れる。
透き通った碧眼の双眼。
それに加え、良く整った顔をもつユイは、不覚にもヒューマンショップの者たちに捕まってしまったのだった。
「アタシをここから出せえぇ!
チマっこいからってナメてんじゃねぇぞゴラアァ!」
「五月蝿い!黙っとけ!」
身長145cmと小柄な体を大きく揺らし、一生懸命反抗するユイ。
しかし手錠に足枷をつけられているユイには何もする事はできなかった。
「あ〜…、くそう…。
こんな所でチンタラしてる暇無いんだってばぁ…」
三角座りをして膝に顔を埋めるユイ。
はあぁ、と深いため息をつくと、「私を売った奴八つ裂きにしてやる」などとブツブツ文句をたれていた。
すると、後ろに座っていた老人がクツクツと笑いだす。
「君なら、そんな手錠も足枷も、檻だって簡単に破壊できるだろう?」
ユイがクルリと振り向くと、その老人は目を細めてニヤリと笑った。
「…出来るわけ無いよぉ、私、そんな怪力じゃ無いもん!」
ユイは先程までの殺意を仕舞い込み、年相応の表情を見せた。
ユイの見た目は13歳くらい、場合によっては10歳に見られても可笑しくない容姿をしている。
ユイは少し拗ねたようにプクっと頬を膨らませ、ぷいっとそっぽを向いて見せた。
この場に似つかわしくない可愛らしい雰囲気を醸し出すユイに、周囲は不思議に思い始める。
「お嬢ちゃん、怖くないの?」
綺麗なお姉さんがユイに話しかける、するとユイは笑顔で応えた。
「大丈夫、私、逃げれるよ!」
「…無理よ、この首輪からは逃げ出せないわ。」
瞳に涙を溜めるその女性。
ユイはクスリと笑って彼女を抱き締めた。
「だーいじょぶ、だいじょぶ!
…私が、助けるから。」
ふと、ユイの声色と目付きが変わる。
それにその女性は驚いたが、だんだんと笑顔になっていった。
「…不思議ね、お嬢ちゃんが大丈夫って言うと、大丈夫な気がしてきたわ。」
「えへへ〜!
希望を捨てちゃダメだよ!」
「ええ。」
柔らかい雰囲気が二人を包み込む。
老人はまた笑いだした。