致命傷は避けられているが、それでも血は止まらない。

ステージの方からはハチの叫び声が聞こえている。

ユイは朦朧とする意識の中、腹と肩に指を突っ込み鉛弾を引き抜いた。



「やったアマス!
 お父上様、早く捕まえて欲しいでアマス!」

「衛兵!あの竜人を捕まえるんだえ!」



衛兵達がユイを捕らえようとしたその時。



「何してんだテメェらあぁぁぁぁぁ!?」



ドゴォッ


天竜人の顔面にルフィの拳が入る。

勢い良く吹っ飛んだのはチャルロス聖だった。



「ケイミーを助けようとしてくれた大切な恩人に何やってんだあぁ!?」

「麦わらの、ルフィ…、アイツは…、ゲホッ、バカか!?」



ヨロヨロと立ち上がるユイ。

ロズワード聖とシャルリア宮はチャルロス聖の元へ駆け寄り、怒りに震えていた。

すると、またもや上から降ってきた麦わら海賊団の一味。

一人がロズワード聖を踏みつけ着地したもんだからそれはそれは大騒ぎ。



「すまねぇ、ミンナ。 アイツらぶっとばしちまったら大将が出てくるんだってよ。」



ルフィは至って落ち着いた表情で指をバキバキならしながら天竜人を睨み付けた。

ユイは翼を仕舞い込み、何とかしなくてはと足を踏み出した。

が、


フラリ、


立ち眩みを覚えたユイはそのまま前へと倒れ込んだ。


バタッ



「…だから無理はするなといったんだ。」



ズオォッ


とてつもない覇気と共に現れたのはレイリー。

その表情には怒りが現れていた。

会場内にいた一般人や天竜人はバタバタと倒れ、辺りは静まり返った。



「まったく、お前は似なくていいところまで母親譲りだな。」

「うっさい、ハゲ…!」



コツコツとユイに歩み寄るレイリー、ユイはレイリーを力なく睨みつけた。

レイリーはしゃがみこみ、ユイの傷具合を見た。



「…ユイ、力を使った後はあれほど大人しくしておけと、」

「私だって、好きで、こうなってんじゃ、ないわよ…っっ」


もはやプライドと意地だけで保っている意識で、ユイはレイリーに憎まれ口を叩く。

レイリーは困ったように微笑むと、ユイを抱き上げる。



「ユイ、もう暫く我慢してくれ、医者に連れていく。」

「これくらい、かすり傷…!」

「黙っていろ、傷に響く。」



息が荒くなるユイ。

レイリーは一刻も早く医者に見せるべきだと判断し、知り合いの医者を訪ねることにした。



「まて、"冥王シルバーズ・レイリー"」


その場を去ろうとしたレイリーの手を掴んだロー。

レイリーは軽く殺気を飛ばしたが、ローは気にする素振りを見せない。



「ここに医者が居ることを忘れてねぇか?」

「…信用できるのか?」



疑いの眼差しを向けるレイリーに、ローはニヤリと笑った。



「俺はその女を、1億積んででも手に入れてぇんだ。
 殺したり、ましてや他のヤツに渡したりなんてマネするかよ。」

「…そうか、なら我が愛娘をよろしく頼んだぞ。」

「ああ……………………、は?」

「我が愛娘をよろしく頼んだぞ。
 少しでも手を出そうものならただじゃ置かんからな!」



ハハハハハ!と豪快に笑うレイリーは、ユイをローに預けその場を去ろうとする。

すると、ユイがレイリーのマントをギュッと掴んだ。



「…どうした、ユイ?」

「…お、とう、さ、」



ボソリとそう呟き、ユイは意識を手放した。

レイリーは嬉しそうに笑い、自分のマントをユイにかけた。



「行け、早くユイを助けてやってくれ。」

「…ああ。」



ローはユイを強く抱き、急いで外を出た。

そこでローやキッド、ルフィを待っていたのは沢山の海軍だった。


To be continued...
prev * 9/9 * next
+bookmark
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -