日記 | ナノ

*キャラ数人で【鳥辺山心中】(歌舞伎の。ほぼ話そのまま)
2013/04/20 19:08


※私が観た歌舞伎パロというかほぼその話ですが、もし興味がありましたら。追記にも続き、ちと長いですが;

観たのは「鳥辺山心中」と「義経千本桜」で、前者はかなり分かりやすく、ついキャラにたとえたくなり; 口調はキャラので、台詞分かりやすく捏造。ちょい付け足しもあるけど、ほんとこんな二人でした。幸村女役なのでか弱いけど、演劇パロってことで。シリアスめ。

【鳥辺山心中】

前説≫半九郎は、江戸から上洛した殿につき従った武士。そこで訪れた郭(くるわ)で、新人遊女お染と恋仲になった。

・半九郎(親九郎(チカクロウ))
・お染(お幸)
・父・与兵衛(こじゅ)
・市之助(政之助)‥親九郎の友人武士、一緒に京へ来た
・源三郎(モブ)‥政之助の弟。兄らと同じく。


序幕は、お幸の父が娘を訪ねる場面から。再会に喜び合う二人。父は娘のために、お座敷で迎える正月用の晴れ着を、丹精込めて染め仕上げてきた。

「なんと美しい!父上、ようして下さいましたなぁ…!」
「だろう?これなら周りに見劣りもしねえ、その客もきっと褒めてくれるだろうぜ」
「はい…っ」

顔をほころばせる娘に、父も相好を崩し、

「本当に良かった、そんな客がついてくれてよ。俺も一安心だ」
「はい…」
「それ見せるときゃ、俺からの礼も必ず伝えろよ?忘れずにな」
「父上こそ、帰り道をお忘れなさらぬよう」
「こいつ、もうそんな口を覚えやがったか」

お幸の冗談に笑い返し、親ならではの小言を優しく聞かせると、父は郭を後にした。
その後、「政之助に飲まされた」とほろ酔いの親九郎が楽しげに現れたので、お幸は嬉しそうに、

「親様見て下され、父上が──」
「おっ、晴れ着か……俺が着るのも、良いヤツ揃えてんだぜ?」
「新年が楽しみでございまする!」
「ああ…」

親九郎は頭を揺らしながら、

「実は達しがあってな、上様がそろそろ江戸へ帰るってよ。当然俺らも」
「……え」
「お前と会って、二月か…昼も夜も毎日通ったが。俺も、いつまでも放蕩してられねぇからなぁ…」

呂律の怪しい口調で苦笑し、それからも色々言っていたが、横になり「水を」と頼む。お幸は呆然とした表情のまま従い、しばらくして、湯飲みを載せた盆を手に戻った。


「……」


(ああ、また粗相を…)


湯飲みを上げ、盆の上に落としてしまった水を布で拭く。お幸は、頬や目元も拭うと、

「親様お水を…、…」

だが返事はなく、その寝顔にたまらなくなるお幸。彼の頭の下に枕を置き、思い出を振り返る。

初めてのお勤めの日。慣れぬ環境や周りからの冷たい態度を受け、押し寄せる不安に一人涙してしまっていた際、声をかけられた。振り向けば、顔から怖そうな侍かと思いきや、

『んなとこで泣いて……辛いことがあんなら、俺が力になってやるから』


「……」

それから、親九郎は毎日お幸を座敷に呼び、二人は睦まじくなった。…その彼が、江戸へ帰ってしまう。親九郎が眠る横で、お幸は何度も目元を拭っていた。

そこに、親九郎の友人政之助が、遊女らを連れて入ってきた。

「Hey、ここにいやがったか!ほらまだ飲むぜ、付き合え」
「おー、政之助…」

起こされた親九郎も愉快げに猪口を取り、二人は話に花を咲かせる。政之助は「やっと江戸へ帰れる」と喜び、遊女は「寂しくなる」と残念そうだ。そんな中で静かなお幸を、政之助はからかうように、

「さては、泣いてやがったな」
「っ、そんなこと…」
「Haha、涙で白粉が落ちてるぜ」

「…政之助、折り入って頼みがあるんだが」

急に改まった声で言うと、親九郎は真面目な顔で、

「二百両ほど、もらいてぇんだ」
「Ah〜?」

政之助は頓狂な声を上げ、「いくら俺でも、あるわけねーだろ」と笑う。

「いや、そうじゃなくてな。お前は良い質屋と知り合いじゃねぇか?そこで、この刀をその値で売ってもらいてぇのよ」
「What…?」

んな大事なモンを?と、政之助がその用途を訝しげに尋ねれば、親九郎は苦笑しながら、

「ちぃっと…鶯(うぐいす)を買いたくてな」
「ハァ?どんな鶯だよ、んな金…」

そこで遊女が悟り、「まぁ」とはしゃぎ始める。鶯とはお幸のこと、これは身請け話なのだろうと。
だが、政之助はさもおかしそうに、

「で、二百両の鶯を江戸へ持ち帰るってか?」
「いや、俺は…」

親九郎は首を振り、

「籠から放して、親鳥のもとへ帰してやりてぇんだ。そうすりゃ、あの明るいさえずりは、もっと増すに違ぇねえ…」

「……」

遊女らはシンとなり、政之助も少々面食らいはした。が、

「お前なぁ…。そりゃ俺も鶯は好きだぜ?俺らを癒してくれるしよ。だが、鶯なら江戸にもいんだろーが?わざわざ、んな真似する必要ねぇって」

などと酒を交えて説得し、親九郎を黙らせる。そんな彼の隣で、お幸はただ俯いていた。
すると、けたたましい足音が近付き、


「兄上、いい加減になさりませ!」

政之助の弟・源三郎が、怒りに興奮した調子で入ってきた。江戸への帰還も決まったというのに、支度も挨拶もせず仕事を全て弟に押し付け、相も変わらず茶屋で遊び呆けて!と。

なだめる遊女に「黙れ女どもが!斬るぞ!」と当たるが、彼女もまた気が強いのか、「兄嫁を切れるものなら」とケンカ腰。「図々しくも兄嫁だと…!?」と、怒り心頭の源三郎。それまでの兄への態度からも、今で言うかなりのブラコンである。キィーとなるが、

「源三郎、この状況で無粋言うなよ。今日は大人しく帰れ。な?」

政之助は笑いながら遊女らと部屋から出ていき、残された彼は、悔しさに身を震わせた。親九郎は、「まぁ座れよ、源三郎」と穏やかに、

「お前、まだ若いから目に付くんだろーが、ちっと融通利かせてみろって」
「…これが黙っていられるか。兄とあろう者が、あのような様で…」

親九郎も彼をなだめようとするのだが、言い合う内に源三郎の怒りは増していく。しかも、その矛先は親九郎へと移行、「貴様がたぶらかしたせいで、兄が堕落した!」他にも色々と。これには、親九郎も徐々に沸々し始める。

「貴様は家だけでなく、武士の面汚しだ!」
「テメェ…年下だからとこらえてやったが、そこまで言うなら容赦しねぇ!」

親九郎も元々短気な性格で酒も入っている、両者睨み合い、一触即発の雰囲気に。お幸は慌てて、「落ち着いて下され、仲直りを…」と仲裁に入るが、

「ええい邪魔だ!」
「あっ!」

ドサ、ガシャーン!
お幸は源三郎に乱暴に突かれ、親九郎の膳の上に倒された。親九郎がいたので、大事には到らなかったが、

「源三郎テメェッ、河原に来やがれ!」
「望むところよ!」

男二人は、刀を手に座敷を飛び出していく。


「ああ……何たることに…」

お幸は呆然としながらも、人に呼びかけた。だが深夜だからか、誰も来はしない。
血の気が引きおぼつかない足取りで、二人の後を追った。

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