日記 | ナノ

*キャラ数人で【鳥辺山心中】(歌舞伎の。ほぼ話そのまま)(追記)
2013/04/20 19:08



‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

月の見えぬ夜の道、お幸の父は近道だと河原を選んだのを、やや後悔していた。どこからともなく、千鳥の鳴き声がする。切なくも思えるそれに気を取られていると、刀を交わす音が聞こえてきた。雲が晴れ白い月が現れる、そしてまた聴こえる音…

「物盗りか、果たし合いか…どちらにせよ、さっさと離れた方が良さそうだな」

娘を思い後ろを見返した後、父は足取りを早めた。

彼が去って間もなく、刀を当て合った二人の侍が現れる。キィンキィンと打ち鳴らしながら、何度も攻防を重ねるが、

「あッ──」

一瞬の隙で源三郎は大きく斬られてしまい、ドサリと倒れ込んだ。


「…、…っ…」

乱れた息の親九郎がそれを覗き、…あってはならない現実に、酒の酔いも急激に醒めていく。蒼白した顔で、茫然と突っ立っていると、

「親様!」
「っ、お幸…」
「ご無事でッ、お怪我はありませぬか!?」

彼に駆け寄り膝を着き、その身体にすがり付くお幸。「して、もうお一方は…?」と尋ねれば、

「…あの通りだ」
「──!」

初めて見る惨い遺体に、お幸は口に手を当て戦く。親九郎は水をくみ、彼女に飲ませてやった。
お幸は、どうにか震えを抑えると、

「あなた様は、これから如何様に…?」
「…上洛につき従った家来が、茶屋遊びの末のこの醜聞──実際、とんだ面汚しになっちまったな」

親九郎は暗い表情で、

「切腹するか、弟の仇だと政之助に斬られるか。二つに一つだ」

「そんな…」

悲痛な声を上げ、お幸はよろめく。親九郎は、彼女を抱くように支え、

「悪ィな、お幸……こんなことしでかしたのが、お前の客で。これから先、苦労かけちまうが…」

「……ならばッ」

お幸は彼の袖を握ると、

「ならば、某も殺して下さりませ!」
「…な!?」

何馬鹿なこと言ってやがる、と親九郎は諌めるが、お幸は頑として引き下がろうとはせず、

「親様が江戸へ帰ると聞いた際に、某はもう死んだのです。…身請けして下さろうとした際は、生涯一嬉しゅうござった。某は、親様以外のものにはなれませぬ。この清い身のまま、どうか共に…!」

「──お前…」

親九郎は心を打たれ、お幸の肩を抱く。見つめ合う二人。月の光が、川の水面を白く輝かせていた。


「親不孝になるぜ…?」
「あの世では全てを捧げ、父上の幸に替えて頂きまする」

「…お前一人置いてくのは、もっと悪行になっちまうか」

そして川に視線をやるが、彼を斬った場所でさらすのもと、鳥辺の山で逝くことに決める。「死装束に着替えて来よう」と一旦別れ、また橋の上で落ち合った。

──正月用に用意した綺麗な晴れ着姿になり、二人は寄り添い、まだ遠くの山を見つめる。

お幸は光沢のある濃い紫の着物に、黒い帯。父が娘のために仕上げたあれで、彼女を一層美しく──郭での着物より身軽だからか、今までにない華奢さが引き立ち──表している。親九郎は、一目で良物と分かる黒い着流しに、銀と黒の市松模様の帯。憔悴はあれど決した表情で、彼女をしっかり支えた。


「……」
「……」

両人とも、もう声は必要としない。だが、二人の間にある手は、どちらからともなく自然と繋がれた。

月の光が照らす中、山への道をゆっくり進んでいった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


※親様→多分「半様」って呼んでたと思うので…「あん様」かも知れんけど;
単純でしょうが、半九郎の優しさ、お染のいじらしさにキュンときまして(*´ω`*)佐幸も考えたけど、どうしても男役が幸村のが似合う; 逆転にしてやろうかとも思ったけど、ただでさえ当サイトの佐助女々しいし。

まぁ、真っ先にアニキが浮かんだので。男気溢れる武士で強面、酒飲みで優しい短気…慶次とこじゅは、あと一歩で何か合わず。心中しそうにねぇなぁ、あの短気はしなさそうだなぁと。家康は、彼が徳川様だし。これは、三代目時代背景らしいです。

友人・市之助の遊女もちゃんと名前あったんで、半兵衛辺りにさせようかと思った(強かったから)けど、政宗にデレる彼が私の脳に浮かばず。弟役も三成が合いそうだけど、同じ理由でないな〜と(^^;

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