『なまえ、決して怒りを外に出してはいけないよ』
おばあちゃん、どうして?
『竜人が幸せになる為にだよ』
分からないよ、それだけじゃ分からない。
だって私は人間でしょ?
『貴女は立派な竜人。お父さんとお母さんと同じ立派なね。』
じゃあお父さんとお母さんは?
誰に殺されたの?幸せになるんじゃないの?
寂しいよ、悲しいよ。悪いことなんかしてないのに、どうして?
天人なんか、竜人なんか、怖い人みんな、

みんな消えちゃえばいい




04.約束


「・・・・・・っ」
飛び起きればそこは昨日保護をしてくれると言ってくれた真選組の方達の屯所の一室だった。

竜人−−。
それが私の本当の種族。
でも私は人間だ。人間として生きてきた、これからもそのつもりだ。でも、抑えられない憎しみと怒りで満ちると我をなくす。何かが私を閉じ込めるのだ。閉じ込められると何も出来なくなる。意識が真っ暗な世界に閉じ込められるのだ。他の誰かに身体を取られる感覚。だから、その時間自分が何をしているのかわからない。
例え、命を奪う行為をしていても、だ。

それが竜人の特性なのかはわからない。
竜人は、見た目が人間そのものだ。そのため両親や周りの人間から『お前は竜人だ』と教えられるまでは自分自身でも気付かない。しかし、竜人の子どもは自我を持ち始めた頃には既に自分が竜人だということを教えられる。子供の時期は感情の変化が激しく、すぐに我を忘れてしまう事が多い。見た目も大幅に変化する。瞳はオッドアイになり爪も少し鋭くなり生身の人間は撫でただけで切れてしまう。
身体や心情の変化を防ぐために『怒りを他人に向けてはいけない。気持ちをぶつけてはいけない。』という教えがある。人間でいうお友達には優しくね。なんて甘いものでは無い。絶対に、怒りを表に出してはいけないのだ。

近所に住んでいた竜人の男の子と人間の男の子が玩具の取り合いで喧嘩をした事があった。『怒ってはいけない』その言葉がまだ理解出来ないため我をすぐに忘れ怒りのまま体が動く。人間の何倍もの力(夜兎と同格程)で相手を傷付けてしまう。勿論相手の子どもは怪我を負う。が、怪我をさせてしまった竜
人の子にはその経緯の記憶が無い。その為知らないうちに友達が1人2人と離れていき、その男の子は一人ぼっちになってしまった。

だから、おばあちゃんの言う『幸せになる為に』なのだ。私達は幸せになる為に、怒りを少しでも出してはいけないのだ。



とんとん。
考え込んでいると襖を叩く音がし、顔を上げる。昨日私に刀を向けた少年が居た。

「よォ、お目覚めですかィ?」
「・・・はい。先程」
「ならさっさと着替えて着いてきな、俺らのリーダーがお呼びでィ」
ほら、と新品の着物を投げられ受け取ると少年は「10分で着替えな」と言い廊下に出ていった。遅れたらまた刀を向けられるのでは、そう思うと急いで起き上がり受け取った着物に袖を通す。それは紺色のシンプルなもの。女性モノは無かったのか少し自分には大きめな男性用の着物だった。なんでもいい、ボロボロな自分の着物よりは。

ササッと着替え終えれば襖を開け少年と目が合う。私に気付けば無言で歩き出す。早足な為慌てて後を追う。
「近藤さん、連れてきやした」
襖を開けると大柄な男性が部屋の真ん中で胡座をかいて待っていた。その横には昨日ここで保護をすると話していた青年。
部屋に入るように促され入り口付近で正座をする。


「まあ、そんなかしこまらなくて大丈夫。楽にしてくれたらいい。」
ガッハッハッと豪快に笑うのは局長、近藤さん。局長さんと呼ぼうとすると、近藤さんで良いと言われた為お言葉に甘え、そう呼ぶことにした。
「あ、の・・・近藤さん」
「聞きたいことは、山程お互いあるだろう。まあ、それは少しずつ話していけばいい。まずは、自己紹介といこうか。俺の隣に座って居るのが、ここの副長の土方十四郎。で、なまえ殿を連れて来たのが一番隊隊長の沖田総悟だ。」

土方さんに、沖田さん。理解すると頷き、深く息を吐けば背筋を伸ばし近藤さんと目を合わす。こちらのことをきちんと伝えなければ、嘘偽りなく、全てを。この人達には話さなければいけないと直感で感じた。
近藤さんの目が、私を真っ直ぐ見ているから。その目は疑いや嫌悪では無い、優しい情に満ちていたから。


「・・・少し、長くなりますが、私の事をお話致します。竜人族についても・・・。」








『例え辛い時でも、人に優しくされたら、何倍にも返してあげるんだよ?その人の為に、自分が出来ることをやってあげるんだ』

−−約束だよ。


うん、おばあちゃん。
その約束、守るからね。



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