09.やるべき事想う事



−なまえ、逃げなさい
何処に?お姉ちゃんも一緒?
−お姉ちゃんは行けないの。貴女だけ逃げなさい。
嫌だよ!どうして逃げるの?お父さんもお母さんも一緒でしょ?みんなで行こ?ね?
−お父さんとお母さんは・・・




「・・・っやだ!!!!!」
「なまえ!」
目が覚めたかと思ったらいきなり起き上がろうとした為抑えつける。嫌だと泣きじゃくりながら俺の中から出ようとする。
理由なんかわからねェ。ただ嫌だと叫ぶばかりだ。なんだってんだ、団子屋の店員を見た途端縋り付きながら泣いてパタリと意識を飛ばした目の前のこいつに、俺はただ隣に居るしか出来ないで居た。


「総悟、なまえちゃん目が覚めたのか?」
「近藤さん。」
「みょうじの様子はどうなんだ」
「・・・姉貴に謝ってばっかでィ」
「お姉さんが居たのか」
「なんで、姉さんにこんなに謝ってんだか・・・。なぁ、何があったんだよ」
泣き疲れてまた眠るなまえの髪の毛をサラリと撫でる。
団子屋の店員はなまえには会ったばかりで、名前すら知らないという。多分物凄く似ているのだろう。必要以上に謝り続けるこいつの過去に一体何があったていうんだ。



「近藤さん、土方さん」
なまえについて、もっときちんと調べなければなまえが関わった事件も竜人族についても何も分からないままで解決もしない。
「知る必要が、ある。俺達にも、なまえにも」




目が覚めると見覚えのある天井が目に映った。頭が痛い・・・。どうしてここに居るんだろう。沖田さんと団子屋で団子を食べて、それから・・・
「お姉ちゃん・・・」
あれはお姉ちゃんではない。落ち着いた今だから理解出来る。あのお姉さんには後で謝りに行かなければ。きっと沢山迷惑かけたと思う。それと、沖田さんにも。
「沢山、泣いちゃったなぁ」
涙の跡が頬についているのに気付き、軽く擦っていると「阿呆、また擦ってる」と頭上から聞き慣れた声がした。


「沖田さん」
「気分はどうですかィ?」
「はい、もう大丈夫。・・・あの、色々ご迷惑かけてしまって。」
「気にすんな」
部屋に入ってくると、私の布団の隣に腰掛けるとジッと見つめてきた。真っ直ぐな目で、背けずに。
多分、知りたがっている。私の過去を。
私も、少し思い出してきたし、もっと思い出したい。思い出さなければいけないと思う。


「沖田さん、お願いがあるんです。」
「ん。」
「私の過去を、思い出を、きちんと知りたいんです。思い出したいんです。・・・お姉ちゃんのことも、ちゃんと。」
だから、と言葉を続けると視界が真っ暗になった。同時にふわりと安心する匂いがする。沖田さんの匂いがした。抱きしめられている、それに気付くには少し時間がかかった。



「・・・っ沖田さん?」
「大丈夫、俺が居る。だから、泣きたい時は泣けば良い。」
この人はなんでこんなに暖かいんだろう。
なんでこんなに安心させてくれるんだろう。
どうしてこんなに泣かせてくれるんだろう。



ダメなのに、これ以上はダメなのに。
自分の事もちゃんと話せないのに、それなのに、貴方のことをもっともっと知りたいと思ってしまっている。もっともっと、想いたいと思ってしまっている。



ああ、そうか。私は、





貴方を、好きになってしまった。





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