それは、とある黄金色の昼下がりのことでした。

「それで僕は言ったんだ、[この世で一番美しいのは誰だい?]と。だけどね、そんなこと訊くまでもないだろう?我ながら愚問だ。何でって、一番はボクに決まってるからさ!」

金の美しい髪を持つアリスは、若干…いやかなりナルシストなお姉さん(?)の長い話を聞かされ、とても飽き飽きしていました。何か面白いことはないかと、アリスが辺りを眺めていた時…。

「!?」

遠くを、真っ白な外套を着たうさぎの様に素早い女の子(略して白うさぎ)が走って行きました。何やら急ぐ様子で茂みの中へと入って行きます。

(なんだあの子!?)

「ちょ、ちょっとアリス、どこ行くんだい!」

少しの好奇心と多大なこの場からとんずらしたい気持ちに駆られたアリスは、お姉さんの制止も聞かずに立ち上がりました。

「悪ぃ、すぐ帰るから!」

アリスは、青い瞳が美しい少女──ではなく少年でした。




アリス少年(略してアリス)は、白うさぎを追いかけて深い森の中までやって来ました。見通しの悪さに何度か見失いかけましたが、しばらくしてぽっかり開いた穴に入ろうとしている彼女を見つけます。

「ねぇ、君!」

アリスが声をかけると、白うさぎはビクリと震えて少し怯えたような表情で振り返ったあと…逃げるように穴へ入ってしまいました。

「え、ちょっと…って、うわわわわっ!?」

突然の行動に驚き思わず引き留めようとして、うっかりバランスを崩してしまうアリス。

「うそだろぉおぉぉぉ…!」

こうしてアリスは深い深い真っ暗な穴へと落ちて行ったのでした。




「…生きてる…。…なんだここ。」

落ちに落ちに落ちたアリスは、最終的にうず高く積もった枯れ葉の上に着地しました。辺りを見回せば、ここはどうやら屋内──広間のようです。

「……あ!」

登るには高すぎる壁を見上げて、どうしたら帰れるのか思案していた時…アリスはさっきの白うさぎがパタパタと走って行くのを見つけました。外へ繋がるらしいドアのうち一つを開けて出て行きます。

(…そもそも追っかけて来たのがきっかけだしな…やるっきゃない!)

前向きなアリスは、白うさぎを追いかけて外へと駆けて行きました。




「…ありゃ、どこ行った…。」

扉をくぐったアリスは、ふとした瞬間に白うさぎを見失ってしまいました。辺りは一面のどかな草原で、人もいなければ民家のようなものもありません。

「……おーい!誰かー!」

当てをなくしたアリスがダメ元で叫ぶと…どこからともなくそして唐突に、チェシャー猫の様な気紛れさを全く感じさせない少年(略してチェシャー猫)が出て来ました。

「あの…ど、どうかしたの?」

「うぉっ!」

全く可愛くない叫び声を上げるアリス。

いきなり現れたチェシャー猫にアリスは初めこそ驚きましたが、数分の後にはすっかり打ち解けていました。

「…というわけなんだよー…何とかして帰れねえかな。」

「う、うーん…えっと…ボクには、なにもできないや…ごめんね、アリス。…あ!あのね、この道の先にお茶会してる人たちがいるんだけど、もしかしたらその人たちなら何か良いこと知ってるかも!」

「マジで!?」

「も…もしかしたらだよ?」

「おう、サンキュ!オレ行って来るわ!」

こうしてアリスはお茶会へと走って行きました。



お茶会へ



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