「すーみませーん…。」

「…フヌ?…お客さんアルか!?大変アル、ひさしぶりのお客様アルよ!」

「えっ、ほんとほんと!?どんな人!?…きゃーっ!なんかすっごい好みのタイプなんだけど!」

「…え?え?」

「どーぞ座って!あ、もちろんあたしの隣ねっ!」

何故だか熱烈な歓迎を受けたアリスは何となく流されてしまい、言われるがままにテーブルに着きました。フリフリの帽子を被った料理屋のような人(略して帽子屋)が美味しそうなケーキや紅茶をあっという間に用意してくれます。

「ねえアリスってどこの人!?アリスって歳はいくつ!?アリスって何をしてる人!?アリスってどこに行こうとしてたの!?」

「いや、そんなことよりだな…。」

「アリスはどんな食べ物が好き!?アリスはどんな召喚獣が好き!?アリスはどんなモーグリが好き!?アリスはどんな女の子が好き!?」

「………。」

生まれ月は三月だというウサギのように活発な女の子(略して三月ウサギ)に質問攻めにされ、参ってしまうアリス。うっかりおかしな単語が交ざっていることにも気づきません。

「……アリスみたいな人、はじめてだわ…。」

「そりゃどうも…。…なあ、あのおねーさんは?なんかお疲れ?」

「…え、ああ…まあね。…起こさない方が…良いわよ。」

「……え?」

アリスが指したのは一人テーブルに突っ伏している、眠り薬でも飲まされたかのように爆睡しているネズミ族の女性(略して眠りネズミ)でした。三月ウサギは珍しく少し静かになったあと、いつもの調子を取り戻します。

「で、アリスはどんな…。」
「アリスー!おかわりいるアルか!?」

「え、あ、その…。」

このままだとさっぱり解放されそうにないと感じたアリスは、少し性急とは思いつつも当初の目的を果たすことにしました。

「……な、なぁ、お二人さん。オレ…かくかくしかじかで…帰りたいんだよ。何か良い方法知らね?」

「ちょ…ちょっとぉ!?」

顔を真っ赤にして甲高い叫び声を上げ咎める三月ウサギ。

「こんな美少女がいてこんなに熱烈に歓迎してるってゆーのに帰るってどーゆーことよ!?」

「だ、だって…そう言われたって…!」

「んもぅ、アリスなんか知らない!ねえ眠りネズミ、起きて!」

三月ウサギはプイとそっぽを向くと、頬を膨らませ涙目になりながら眠りネズミを揺すり起こしました。アリスの背筋を嫌な予感が走り抜けます。

「…む?ナンパな…男?…けしからん!私が成敗してやるのじゃ!」

覚醒した眠りネズミは、眠っていたのが嘘のようにアクティブに動き出しました。その左手には…なんと槍が握られています。これは痛いです、アリスは丸腰なのです!

「う、うぉあぁあ!?ちょ、ま、オレなんもしてないっ!」

「あたしのじゅんじょー踏みにじったんだから!やっちゃってよぉ!」

「了解じゃ!」

「い…いやいやいやいや!」

哀れなんの抵抗手段も持たないアリスは、持ち前の素早さを生かしてその場から命からがら逃げ出しました。



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