「あ、あの…サラマンダーさん。頼んどいて、何なんですけど…ミノンさんの体…ほんとに大丈夫なんですか?…もしかして…何か悪い病気なんですか?」
あのあと
──大丈夫じゃねえ。
──大丈夫です…!
──…じゃあこうする。
──!?お…降ろして下さい!歩けますから!
──どの口がそれを言うんだよ!
…と言い合った結果、現在魔女さん…改めミノンさんを抱えて歩いているサラマンダーさんに行き道で訊ねる。…抱えられた途端に、ミノンさんがくてりと眠っちゃったからだ。
「大丈夫じゃねえよ……死にゃしねえがな。」
「え?」
「…死なねえからって無茶しすぎなんだよこいつは。…そうだな…本当に悪い病気だ。不治の病、無茶病…いくら言ったって治りゃしねえ。」
苦々しく言う姿は、本当にミノンさんのこと大事なんだろうなって思わせた。きっと最初に端からあたし達を追い返そうとしたのも、ミノンさんを思い遣っての事だったんだろう。…あたしは初恋もまだだけど…いつかこんな風に大切な人が出来るのかな。
「大好きなんだねっ、ミノンさんのこと!」
「あ?」
「ミノンさんとサラマンダーさんって、夫婦なの?」
「ニ…ニコラッ!」
いきなりとんでもないことを訊きやがった愚弟を慌てて諫める。確かにさっきはふーふげんかという声に固まりはしても否定はしなかったけれども!確かに確かにすっごくラブラブだけれども!
「あのね人にもね、プライベートってものが…」
「……そう、見えんのか?」
「えっ?」
ハスキーな低音に遮られ、反射的に上を振り仰ぐ。
「…見た目からすりゃ15近くは離れてるだろう。なのに夫婦(めおと)に見えんのかよ?」
意図のよく見えない問いかけ。「頭おかしいんじゃねえのか」みたいなニュアンスを含んだ問いなのか、ただ不思議に思ったからの問いなのかもわからない。
…確かに言われてみれば、サラマンダーさんは30前…ミノンさんは15くらいだと思える見た目だ。親子でもおかしくはないくらいの歳の差かもしれない…だけど…。
「…見えるよ?」
見える…と言おうとした瞬間、さも当然といった様子でニコラが断言する。
「だって、ラブラブかどうかに何歳違うのかなんて関係ないもん。サラマンダーさんとミノンさんはラブラブだから、ぼくにはめおとに見えるよ!」
「…ニコラ…。」
ラブラブってその言い方はどうなのよとか、あなた[めおと]って意味わかってるのとか…まあ色々ツッコミ所はあったけど。
ニコラの言葉は、ちびのくせにこれ以上なく正論と思えた。
「……そうか。」
ごく短い…嬉しそうとか疑わしそうとかいう感情の読めない声色の返事。ここからじゃ表情もよくわからない。
「…夫婦じゃ、ない。」
「えーっ!?」
続けられたこれも短い否定にニコラが素直な驚きの声を上げた時、あたし達は皆の待つ聖堂に到着した。
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