「…勿論トラブったりしたら大変だから、守ってやりたいとはオレも思うぜ?でもオレはお前みたいな事はしない。大切に思うけど、だ。」

ジタンは睨むでも、笑うでもなく…至って真面目な顔で問い続けた。

「なのにお前は仕事の合間を縫って……何でここまでするんだ。好きじゃないなら…何でだよ。」

「………。」

「責めてる訳じゃない。でも、もし……もしお前が、お前の中の何かに気付かないフリをしてるなら…考えた方が良い。」

「……何を。」

「何でミノンをそこまでして守るかだよ。使命感?放っとけない?何にせよ…手遅れになってからじゃ遅いんだ。」

「………お前が遅れたから言ってんのか。」

「ああ。あんな思いはごめんだ…お前にもしてほしくない。」

「………………。」

サラマンダーは深く溜め息を吐くと、おもむろに右手をジタンの頭に向かって伸ばした。

「?」

「………。」

ビシィ!

「イ゙ッ!…って…ぇ…っ!な…何しやがるサラマンダー!」

額を押さえながら反射的に食って掛かるジタン。長い指から繰り出されたデコピンは、かなりの威力を思わせる炸裂音を伴っていた。

「………ガキがいっちょまえに…説教してんじゃねえ…。」

「おま、人が真面目に…!」

「……あのな。」

長い前髪の間から鋭い眼光が覗く。

「お前がガーネットを守るのは何故だ。」

「…な…って……す、好きだからに決まってんじゃねえか…!」

「じゃあお前は、好きじゃなけりゃ守らないのか?」

「!?」

「………考えた事もねえのか。」

呆れた様にジタンを見下ろすサラマンダー。

「…オレが、ガーネットを嫌いになるなんて有り得ねえ。」

「……本っ当に、ガキだな…。あいつと」
「お待たせしました!」

いつもの着物姿に戻ったミノンが駆けて来る。

「…あら?ジタン様、おでこ…。」

ミノンがジタンの額に手を伸ばすと、ふわっ…とした光がミノンの指先から溢れた。

「痛いの、痛いの…飛んで行け…。…治りました?」

「あ、ああ…ありがとな、ミノン。」

「いいえ。何の話をなさってたんですか?」

「…あ…何て言うか……ガーネットは可愛いなあ、って…。」

「まぁ…!私もそう思います。」

明らかに怪しいジタンにあっさりと騙されるミノン。

「だよな、可愛いよな。……ミノン、オレも着替えて帰るわ。またな。」

「はい、また。」

「…サラマンダーも、またな。」

「………ああ。」



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