1ヶ月後、とある貸しホールでミノン達は練習を行っていた。オルフェウスの演技指導が飛ぶ。
「ドラクゥ、もっと捌ける時は目線を意識して。」
「はい!」
「マリア、本番はドレスで歩く。それを意識して動きなさい。」
「はい。」
「では次だ。マリアの歌からやってくれ。」
「はい。」
♪…いとしの…あなたは…とおいところへ?…いろあせぬ…とわのあい…ちかったばかりに…
「ストップ!」
ミノンの歌を遮るオルフェウス。
「団長?」
「どうしたんすか?」
脇に捌けていたリートとジタンが顔を出す。
「…マリアではないのだ。」
「………え?」
「リート、君はマリアに対して歌いかける時…どうしている?」
「え…僕ですか?…ドラクゥの立場になりきって…でしょうか。」
「どんな心情だ?」
「……マリアに会いたいだとか…心配だとか……恋しい…愛している、だとか…でしょうか。」
「…うむ。ジタン、君は?」
「へ?うーん…まあ、何だかんだ言ってラルスはマリアの事好きなんだろなー…って。」
「どういう事だ?」
「后だとか西軍東軍つったって、結局はマリアが良いんじゃん。マリアはドラクゥの事想ってるから、王子としての圧力でしか接せないんじゃねえかな…って感じっすかね。」
「ほう…流石だな、よく考えている。ミノン…君は?マリアの気持ちになって歌った事はあるか?」
「………。」
「気持ちをもっと込めなさい。…続きを。」
「…はい。」
♪…かなしい…ときにも…つらいときにも…そらにふる…あのほしを…
「…違う!」
また遮り、首を振るオルフェウス。
「…駄目だ、それでは駄目だ。歌がいくら上手でも、歌劇にはならん。思い浮かべなさい、愛しい人を。そして…彼が、遠く離れて戦場へ行ってしまった時の心情を。」
「……はい。」
「続きを。」
♪…あなたとおもい……のぞまぬ…ちぎりを…かわすのですか?…どうすれば?…ねえあなた…
「…今日は帰りなさい。」
「……っ!」
「団長!?」
「誤解するな、出て行けと行っているのではない。ただ、君には考える時間が必要なのではないか?」
「………。」
「私は君に期待しているのだ。気持ちを理解して歌に乗せれば、君は誰よりも素晴らしいマリアになれるだろう。」
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