ある所に、仲良く暮らすおじいさんとおばあさん(？)がいました。
｢じゃあ、ボク芝刈りに行って来るね！｣
｢ワタシも洗濯して来るアルね！｣
こうして、おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
｢…カエルはいないアルね…やっぱり川じゃなくて池にすべきだったアルよ。｣
おばあさんが文句を言いながら川で洗濯をしていると…どんぶらこっこ、どんぶらこっこと大きな大きな桃が流れて来ました。
｢はっ！美味そうアルね！｣
洗濯物を放り出して飛び付くおばあさん。
｢いただきま…。｣
しかしなぜかおばあさんは、口を大きく開いたまま少し静止しました。
(…おじいさんは桃を持って帰ればきっと喜ぶアル。なら、ワタシ一人で食べるのは…よくないアルね。美味しい物は、二人で食べるともっと美味しいアル。)
食べる寸前におじいさんの事を思い出したおばあさんは、食べるのを止め、桃をお家に持って帰りました。
｢わぁっ…どうしたの！？それ！｣
｢流れて来たアルよ。二人で食べるアルね〜。｣
｢こんなに大きな桃、ボク初めてだよ！｣
ウキウキして桃を切るおじいさんとおばあさん。しかし…。
ガンッ！
包丁は何かにぶつかりました。まるで金属の様な…。
｢…何のつもりだ。｣
中にいたのは、真っ赤な髪の毛で目付きの悪い男の子でした。どうやら包丁は男の子の武器、爪に受け止められた様です。
優しいおじいさんとおばあさんは、男の子の無愛想にもめげず、男の子を桃太郎と名付けて育てました。
ある日、立派な青年となった桃太郎は言いました。
｢鬼ヶ島に行く…別に鬼退治がしたい訳じゃない…より強いやつとの戦いを楽しみたいだけだ。｣
ほのぼのとした両親に育てられたにも関わらず、随分と好戦的な子供の様です。
おじいさんとおばあさんは反対しましたが、桃太郎の頑固…ではなく強い意思に答え、桃太郎におばあさん特製の吉備団子を持たせ、旅立たせました。
｢吉備団子ちょうだい！くれたら仲間になってあげる！｣
｢はぁ？仲間だぁ？いらねえ。ガキは家に帰れ。｣
｢きぃ〜っ！こうなったら意地でもついてってやるんだから！行くわよモグ！｣
小さな羽が生えたキジが(無理矢理)仲間になりました。
｢弱きを助け、強きを挫く…自分も共に行くのである！｣
さっぱり人の話を聞かないイヌも(勝手に)仲間になりました。
｢おい、桃太郎。｣
｢何だサル。｣
｢ひどくね？普通オレが桃太郎じゃね？主人公なのに脇役のサル…あり得ねえだろ！？｣
｢どっからどう見てもおまえサルじゃねえか。お似合いだぜ？｣
｢ひでえ！こうなったらオレはおまえより活躍して目立ってやる！｣
目立ちたがり屋で主人公気質のサルも(最早吉備団子を忘れ)仲間に加わりました。
そんなこんなで鬼ヶ島に着いた一行は、けっこう大事なことに気付きました。
｢…なあ。そう言えば鬼って何をしたんだ？｣
｢そういえば…知らないわね。｣
｢自分の聞いた話では、鬼ヶ島に行った人間で、帰って来た者はいないのだそうだ。きっと鬼が捕らえたのであろう。｣
｢ふーん。｣
｢まあ良いわ。モグと一緒に全員やっつけちゃうんだから！鬼〜！出て来なさいよ！｣
｢呼んだ？｣
最初に出て来たのは、優しそうな女の子でした。しかし、サルの本能は危機を告げます。
｢呼びました？｣
続いて巻き髪の女の人も出て来ました。今度はイヌの本能が危機を告げます。
｢何の用じゃ。｣
更には槍を持った女の人も…桃太郎の本能が危機を告げます。
｢お客様ですか？ようこそいらっしゃいました！｣
一番最後に出て来たのは着物姿の女の子でした。満面の笑みです。
｢こちらは腕試しの鬼ヶ島です。４名様ご案内〜！｣
｢おい、ちょっと待った！｣
思ってもない展開に慌てるサル。
｢無理です。私達を倒すまで帰る事は出来ません♪｣
｢…マジ？｣
｢はい。皆様頑張って下さいね！｣
女の子の笑みは変わりませんが、背後には恐ろしい何かが見えそうでした。
こうして桃太郎は、念願の強い者との戦いを存分に楽しみました。めでたしめでたし。
｢…ねえ、なんかボク達忘れられてない？｣
｢桃太郎は今頃何をしてるアルかねえ…。｣
ちゃんちゃん。
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