暫くして。

「さけ…つまみ?どなたの注文でしょうか…?」

「……フライヤじゃねえ?」

「やはりそう思いますか?…これは…りんご…ジュース?」

たどたどしくメモを読み上げるミノン。何故二人がこんな事になっているかと言うと…。


「僅差でフライヤとエーコの勝ち!」

「やったわ!」
「やったな!」

女性の底力は恐るべし。負けたミノンとサラマンダーに、エーコは嬉々として言い放った。

「罰ゲーム!今から二人で買い出しに行って来て!」

[二人で]が強調されていたのはきっと気のせいでは無い。

「え?」

「…聞いてねえぞ。」

「何言ってるのよ!さあみんな、何が良い?」

「…良いのか?ミノン。嫌ならそう言いなさい。」

「私は、構いませんが…。」

「…俺は無視か。」

「おぬしを思いやる必要がどこにある?ミノンが良いと言ってくれるなら私は構わぬ。」

「…じゃあ…オレはコーラとポテチ!」

「私は……メモに書いておくわね。」


…という経緯だ。今二人は旅館から程近い店にいる。

「…これで、全部でしょうか。」

「…多分な。」

「よし…すみません、お会計お願いします。」

「はいよ。」

支払いを済ませると、二人は月明かりが静かに照らす夜道に出た。ミノンがランプに火を灯す。

「……お前の服、ユカタと言うのか?」

「いいえ、私のは着物と言います。浴衣よりもしっかりしています。」

「…そうか。」

「サラマンダー様、浴衣初めてなのに、よく着られましたね。」

「…少し、窮屈だが…。」

「きっと、それ以上大きなのはなかったんですよ。」

「…ああ。」

程無くして二人は旅館に帰り着いた。卓球場まで上る階段で、不意にミノンが呟く。

「……ねえ、サラマンダー様?」

「…何だ。」

「どうして私が着替えていないのか…聞かれないのですね。」

ミノンは少し早口で言い切ると、何事も無かったかの様に卓球場の扉を開けた。

「只今帰りました。」

「あ!お帰りミノン、サラマンダー。ねえ見て見てあそこ!」

エーコの指差した先では、ジタン&ガーネットvsベアトリクス&スタイナーによる激戦が繰り広げられていた。

「カップル対決!飛び散る愛の火花!素敵だわ〜!」

酔った様に話すエーコ。ずいぶん興奮している様だ。

「本当…素敵ですね。…はい、ご注文の品はお揃いですか?」

「ありがと!エーコ、ジュース飲みたかったの!」



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