「ねえ、赤ちゃんってどうしたら生まれるの?」
「ねえ、どうするの?」
純粋極まりないエーコとビビの問いに、フライヤとサラマンダーはブレイクやストップをかけられたかの様に固まった。
二人はここダリで、新しく生まれた命を見て来たばかりである。霧が世界を覆う中で畑を再び耕し始めた村の小さな希望は、両親だけでなく沢山の村人から愛されていた。
「それはな、ビビ、エーコ…まず…ふぎゅっ!」
にやけた顔で話し始めたジタンを、なんとか復活したフライヤの鋭い蹴りが沈める。
「……あいつ…少し遅くねえか。」
さりげなく出口に向かうサラマンダー。
「そ、そうじゃな。何かあったならいけない…探しに行こう。」
フライヤもすかさず便乗しようとする。が…そこへ、ダガーとスタイナーが入って来た。
「ダガー…!」
「あら…2人共、どうしたの?外に何かご用?」
「…あ…その…。」
「ねえねえダガー、赤ちゃんって、生まれるまではお母さんのお腹の中にいるのよね?」
フライヤが口ごもった隙にダガーに駆け寄るエーコ。
「え?…え、ええ。そうだけれど…それがどうかしたの?エーコ。」
「どうやって入るの!?」
ダガーが赤面したのは言うまでもない。
「ア…アデルバート・スタイナー!」
「はっ!」
背中に嫌な汗を感じつつも敬礼するスタイナー。
「適切な説明をしてあげなさい!」
「了解であります!」
半ば反射的とはいえ返事をしてしまい、スタイナーはかなり困った状態に陥ってしまった。
「え…えーと…花には…雄しべと雌しべがあって…それがくっ付くと…子供が出来るのである。」
「人間には雄しべも雌しべも無いわ!」
「それに、どうやったらくっ付くの!?」
騎士アデルバート・スタイナー、最大のピンチ…!?
その時、ドアがノックされた。
「ど、どうぞ?」
取り敢えず返事をするダガー。スタイナーはこの状況が好転する事を何かに祈った。
「失礼します。」
「ミノン!」
「すみません、遅くなって…。……?」
部屋の中を見回し、首を傾げるミノン。何故か立っているサラマンダーにフライヤ、興奮した様子のエーコとビビ…スタイナーは変な顔で固まっているし、ジタンは伸びている。加えて目の前のダガーは何となく挙動不審だ。
「…何のお話を?何だか、賑やかでしたが…。」
「そっ…その…。」
目線をさ迷わせるダガー。
「どうやって赤ちゃんがお腹の中に入るかって事!ミノン、知ってる!?」
はぐらかされ続け、少し苛立った様子のエーコが単刀直入に言う。
(ミノンだもの…大丈夫よね…!?)
ダガーが心の中で慌て、スタイナーが自分から矛先が逸れた事に脱力する中、ミノンは事も無げに口を開いた。
「…?赤ちゃんを作る方法ですか?」
意識してなのか無意識か、際どい聞き返し方をするミノン。フライヤとサラマンダーは
「…どうすべきじゃ…!」
「知らねえ。」
「いやそもそも…ミノンは知っているのか?」
「…さあな。」
「な…まさかとは思うがおぬし、心当たりは?」
「ねえよ!」
と目線だけで一瞬の内に話し合った。何故こんなに複雑な会話が出来るのかは謎だ。
「そう!その通りよ、ミノン!みんな全然教えてくれないの!」
「まあ…。…それなら。」
にっこり微笑むミノン。
「仲良くなった男女が一つのお布団で寝るんです。」
「それで!?」
ダガーが固唾を飲んで見守る。
「そうしたら…。」
スタイナーまでも固唾を飲んで見守る。
「子供担当の神様達が相談して、その二人に子供を授けるか決めるんです。授けると決まったら女性のお腹に赤ちゃんの素が入って、それが成長すると赤ちゃんになって産まれて来るんですよ。」
(………。)
多少…いや、かなり呆気に取られながらも子供二人の反応を見守る大人達。
「…な〜んだ。」
「そうだったんだ。」
「ボク、外で風車見て来るよ。」
「エーコも!」
お子様達は納得した様に頷くと、連れ立って風車を見に向かった。
「…あ、あの…ミノン?今の…。」
この中では最年少であるダガーが、自身より2つ…厳密に言えば5つ以上は年上であろうミノンに問う。
「…え?赤ちゃんの出来方ですが…何か間違っていましたか?」
きょとんとして首を傾げるミノン。
真相は闇の中。
心残り=クイナ欠席…
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