やがて出発した一行は、目的だったらしい人物に会うことが出来た。──それがよく知る顔だったのには、心底驚いたが。

女王が何だの霧がどうだのという話には全く興味がなかったので傍聴していることにする。この先ジタン達が何をするのか、あの銀髪と会って何をしたかったのかも知らないが、俺にしてみればやることが何だろうがジタンさえいれば大した変わりはない。故に口を出す必要もないだろうと、揺れる金色だけを視界の端に留め、相変わらず感情が強いやつだとか呑気に考えていた時──戦闘が始まった。どうやら足止めに嗾(けしか)けられたらしい。

真っ向から向かえば厄介な相手ではあるが、奴等は回復や蘇生の効果が逆転するという特性を持っている。ジタンもそれは勘づいた様で、的確な指示を出していた。一度王女の蘇生魔法を喰らえば、そこに在ったのが嘘の様に呆気なく消える。いつもそうだが、普通に相対すれば強い分……儚い最期は嘘の様に見えた。

[母親]を助けたいと単独で走り出した王女を追いかけ、ジタンと小娘が坂を下る。──異常に気付いたのはその時だった。

まるで、そこだけ時が流れていないかの様に。

俯いた少女は、黒魔道士兵に……ビビに、いくら呼び掛けられても動かなかった。ここからその表情は見えない。ただわかったのは、砲撃だの何だので五月蝿いこの世界から切り離されたが如く──少女が止まっている事。

「おねえちゃん?ねえ…おねえちゃん、どうしたの?」

聞こえているのかいないのか、全く反応を示さない。……動かない、といった風ではない様に感じた。例えるなら──発条(ぜんまい)仕掛けの人形が、時を経てその動力を失ったという印象だった。或いは……壊れた、というところか。

「ねえ、おねえちゃん!」

手を引かれ、ぴくりと少女の肩が僅かに動く。

「…行こうよ。はぐれちゃう。」

それでも少女は動かず、引かれた手もされるがままに揺れるだけだった。ビビが此方を一瞥し、また少女に目線を戻す。──何だ?……先に行ったのか確かめたのか。

「おねえちゃん?どこか具合悪いの?ねえ、ジタン達が先に……はぐれちゃうよ。」

「………。」

他人事の様に見ていて、まるで逆だなと思った。人間でありながら人形の様に立ち尽くす少女と、人形でありながら人間さながらの言動をするビビ。本当に……逆がしっくり来る。

またビビがこちらを見た。今度は何か──訴えの様なものを明らかに含んで。直に伝わって来た、動かなくなった少女への困惑と目まぐるしく変わる状況への焦りに……何故か足が動く。

「ね、おねえちゃ…あ!」

再び少女に呼び掛けていたビビとは反対側、少女の背後に立ってその身体を持ち上げると──一瞬、何かを間違えたかと思うほど、それは易々と宙に上がった。おぶった時も思ったが……軽すぎないか?…まあ、今まで誰かを持ち上げた事など無かったに等しい…故に確固とした基準も根拠も有りはしないが。

扱いがわからなかったので荷物と同じに肩に担ぎ、ジタン達の後を追う。その間中、少女は声の一つも上げずされるがままだった。本当に──物の様に。



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