「陛下、例の娘と思われる者を連れて参りました。」



V-@外側の大陸



美しく飾られた廊下を通り、女王の前に連れて来られる。一応は謁見だというのに何故かあまり緊張しなかったので、頭の中では今後を考えていた。もしかしたらこちら側の事情がわかるかもしれない。ただ逃げるのは得策でない気がしてきたのだ。

「おまえ、なぜ我が軍の邪魔をした?」

「……私のしたいことを……したまでです。」

「小娘風情が生意気な……おとなしくついて来たことといい、何を企んでおる!」

「…………。」

「ブラネ様、失礼します。」

何も答えずにいたら、部屋に若い男性が入って来た。どこか見覚えがあると思ったら、あの時ブルメシアにいた人だ。

「おまえ……クジャ! 何をしておった!」

女王が口にした名に、思わず息を飲む。あれが……<クジャ>……!?

「野暮用を。……! ……その娘は?」

「我が軍に刃向かったため引っ立てた。こう見えて強い力の持ち主で、召喚獣を消し去りおったのだ。」

「……へぇ……その娘、味方するよう、僕が説得して見せましょう。力持つ者ならば……役に立つでしょう?」

「ほう……それは良い。連れて行け!」

<クジャ>に眠りの術をかけられる。私の意思を無視する強行手段に出た様だ。害意は感じないし、女王の元に留まるよりも、こちらについて行った方が有益だと思えた。一応防いだが、眠ったフリをしておく。

当然の様に横抱きにされてからしばらく経つと、<クジャ>に声をかけられた。

「もう起きて良いよ。寝たフリなんて、やるね。」

素直に目を開ける。気づかれているとは思っていたが流石だ。何気なく辺りを見渡して、小さく肩を震わせる。

視界は一面の蒼。

今いるのは、空を飛ぶ竜の上だった。

「僕はキミに興味がある。だから僕の家まで来てもらうよ。」

「……わかりました。」

「ああ、警戒しなくて良いよ。危害を加えたりはしないから。」

横抱きのままそう言われる。やがて、不意に<クジャ>の腕に力が入った。それと同時に竜が急に高度を下げ、砂地に突っ込む。

思わず瞑った目を開けたら、視界には城の様な建物の内装が広がった。

「ここは、外側の大陸のデザート・エンプレス。僕の城だよ。」

やっと降ろしてもらえる。壁にも床にも天井にも、豪華で繊細な飾りが溢れていた。意匠は共通しているが、一つ一つが僅かに違っている。

「気に入ってもらえたかい? キミの部屋は好きに選ばせてあげよう。……だけど……ちょっと話したいことがあるんだ。そっちが先で良いかな? キミも、わざとついて来たんだろう?」

「……構いませんが。」

何を話すというのだろう。力に関することならば面倒だ。……十中八九、そうだけれど。


私は<クジャ>が何をしたか……しているか、知っている。

だけど、<クジャ>をただ嫌ったりはしない。――できない。

陰と陽は二つで一つ。

強い力は、再生の神にもなれるが──……

破壊の神にもなれる。




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