運命の相手と言われても、困ります。 | ナノ

はじめての友達、初恋の人【ステファン視点】



 外に出れば高確率で発作に襲われるほど病弱だった幼い頃の私はあまり表に出なかったけれど、一度だけ友達作りのために母王妃が開くお茶会に参加したことがある。

『は、はじめまして』

 当時の私には友人がいなかったので、仲良くしてくれたらいいなと期待を抱いて握手を求めた。

『病気が感染るかもしれないので……』
『いやっ! 気持ち悪い、こんなの王子様じゃない!』

 病気が感染るかもしれないと握手を拒絶されたり、緊張しながら差し出した手を叩き落とされたときはとても悲しかった。がりがりにやせ細り、顔色の悪い私を気味悪がって忌避する令嬢もいた。

 兄王子達の周りには人がたくさん集まっていたのに、私の周りには誰も近寄ってこなかった。到底長生きしなさそうな第三王子と親しくしても旨味はないと思われたのだろう。
 私は結局そのお茶会の場で友人を作れず、それ以降は家族に誘われても一切参加しなかった。

 もしかしたら、粘り強く探せば打算抜きで親しくしてくれた子女もいたかもしれない。だけど病気に侵されて寝たきりだった自分は心も弱っていた。それがきっかけで余計に引きこもるようになった。
 両親・兄ともに私のために友人作りをすすめてくれたけど、私は気乗りしなかった。どうせ自分と仲良くしてくれる人なんかいない、友達なんかできない、自分が嫌な思いをするだけだとあきらめて卑屈になっていたのだ。

 そうしている間に病状は余計に悪化し、このままだと成人できないかもしれないと宣告されてしまったのである。


 だからあの日、親元から離れて移った療養地で出会った彼女に話しかけた時はものすごく勇気が必要だった。話しかけて嫌な顔をされたらどうしようと少し躊躇った。傷つくのが怖くて逃げようかとも思った。

 今となっては勇気を出して声をかけてよかったと思える。
 あの子は違った。
 私の手を取り、笑顔を向けてくれた。私の病気を恐れることなく、良くなるように祈ってくれた。側にいて支えてくれたのだ。
 そうだ、彼女は私の肩書など興味がなかった。ただのステフとして素直に慕ってくれた。

『だぁいすきよ、ステフ!』

 彼女と過ごした幼き日々は決して忘れない。幸せに満ちた思い出は今でも私の宝物。
 私の初めての友達であり、初恋の人レオーネ。
 そして昔から変わらず、彼女は私の最愛なのだ。



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