雑多 | ナノ


▼ ねないこだれだ(キルラキル・皐月と流子)

木目の天井をしばらく眺めたあと、横を見れば流子が規則正しい寝息を立てている。
豆電球のついた部屋は顔が見えないことはない。そもそも見えるようにつけているのだ。
二人とも誰かと寝る機会は少なかった。まして畳に布団。夜中起きてどちらの足を踏めば二人で起きる。そして何度か喧嘩して隣に怒られ、豆電球を付けることにした。だから顔ぐらい見える。
しかも広くない部屋。すぐ横に布団があり、顔があった。
皐月は全てに戸惑ったが流子は早々に慣れて生活をおくりだした。
聞けば元々こんな生活だったらしい。誰かの家に転がりこみ、適当に寝て、適当に勝手に何かを食べ、また転々としていたから一カ所に留まるのは楽と言っていたのに心底驚いた。
てっきり父の元で普通に生きていたのかと思ったが違ったようだ。
しかし自分の生活力のほうに皐月は驚いた。
流子は食べるには困らない程度には料理は作れる、洗濯も教えてもらったとそこそこの手際で出来る。掃除だけは不得手らしいが物がないこの家ではほうきで掃いておけば、まず早々汚くならなかった。
問題は皐月だ。
玉子の割方から始まって、炊飯器、みそ汁と徐々に流子や蟇群に教えて貰っている。
蟇群が料理が上手いのには二人で驚いたが大層世話になっていた。
蟇群だけではない。
犬牟田にはこの先、いや贅沢しなければ困らない額の預金を渡された。
不正ならば受け取れないと言ったが株と特許とバイトの一部から出した正当な金だと説明され、とどめに生活するにはお金が必要と言われれば引っ込みがつかない。
とりあえず借りていつか返すと言ってみたが無利子で生きているうちならと言われて初めて犬牟田にぐうの音も出ない皐月を見て、流子が凄いなあいつと呟いていた。
蛇崩や猿投山は自分達の生活の間をぬって会いに来てくれる。何かしらお土産という名の差し入れを持って。
人は一人では生きられないと知っていた。知っていただけで実感するのはここ最近。
恵まれていたのだろう。気づかなかっただけで。
指を伸ばせば流子の髪に触れた。こんなに近くにいるのに知らないだらけで。今も知らないことばかりで。

「…ねえさん…何、」
半分寝ぼけた声を上げた流子がこちらを向く。瞼は半分しか開いていない。起こしてしまったかと申し訳なく思ったとき、指先を流子が掴んだ。
「寝れない?」
「まあな。」
「でも、明日学校あるし、朝ごはん姉さんの当番じゃん」
「それはやる。」
「なら、いいや…」
語尾は殆ど消えていた。瞼は閉じてしまった。指先は皐月の指先を掴んだまま。
暖かい指先は生きてると伝える。子供のようだと思うが子供の頃、こんな風に誰かと触れたことがあっただろうか?
無かったような気がする。だが今出来るならいい。
流子の指先を握ると皐月は瞼を閉じた。
今ならいい夢が見られるような気がしたから。

****
なんとなく貧乏暮らししてそう

prev / next

[ back to top ]



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -