雑多 | ナノ


▼ 向き合えば、(キルラキル.流子と美木杉)

いやだ。そう呟いて机に突っ伏して呻く流子だが誰も返事はくれない。
「皐月お姉様に会いに行くのそんなに嫌なのかい?」
「きもちわりぃな、誰がお姉様だ。」
顔を上げて睨みつければ美木杉に意味ありげににやついている。
「だってお姉さんだろ?」
「血縁としてはな、」
しかし今更姉だと言われても姉とは呼べない。一人ぼっちだった幼少期、突っ張った所でやはり一人きりだった少女時代、父を殺されて仇と一人空回りしていたのは最近の話。
随分酷いことをされた。
酷いこともした。
だが皐月は一言も流子を責めなかった。むしろわかりにくいが手を貸して貰っていた節すらある。
そして認めたくはないが、あの母の元で一人父と妹の仇を取るため耐え忍んでいたのを教えてくれたのは蛇崩だった。
何もかも無くした皐月が今一人で生活し、ようやく胸のうちを語ったのは10年来の仲であっても最近だったとも。
『あんたばっか不幸面しないでよ。』
突き刺さった言葉は胸を何処かをかりかりと引っ掻き居心地悪くさせた。
一人ぼっちで親の顔も愛情もろくに知らなく暴力と反発でしか表せなかった流子。
親のエゴと利用の為に愛情をかけられず生かされながらも耐えて仲間にすら弱音をはけなかった皐月。
どちらが不幸などと天秤にかけたところで無意味以外ない。
派手な収束のくせになんとなく別れたまま顔を合わせていなかった。言いたいことも聞きたいこともあったはずなのに聞くのが気が引けて。
普通の学校に通いだしたマコと違い、まだ道を決めかねているのもそのせいだったかもしれない。
道を決めかねているのに何もせず未だ居候しているのも気が引けていた。
ぬるま湯のような普通の家庭は居心地良すぎて抜け出したくない。しかしそれはダメだと自分が一番知っている。
そんな折りに美木杉が紙を一枚手に尋ねてきた。見ればなんてことない住所とアパートの番地が印されていた。
なんだと聞けば皐月が住んでるという。あの財閥のお嬢様がアパートなんかにと驚いたが彼女はもう財閥の娘を捨てたとらしい。
潔さは相変わらず健在のようだ。
「会うかどうかは自由だよ、流子君。」
「だからいやだ。」
「本当に?」
出されたお茶を啜りながら尋ねられれば自分が駄々っ子のように思える。いや駄々っ子なのだ。いやだ、いやだで伸ばしてぬるま湯から出たくない子供が嫌なのは自分なのに。
「まあ、どうするかは君次第だから」
「会ってどーすんだよ、」
さあ?と美木杉に頬杖ついて眺められると居心地が悪くなる。
どうしたいか
どうしたいか、なんて
紙を片手に無言で立ち上がると壁に掛けてあった上着を羽織る。そして美木杉の前に仁王立ちした。
「連れてけよ。」
「はい?」
「あんた車だろ、歩くには遠いんだよ。連れてけ。」
真っすぐに見下ろせば反らされることなく視線を返された。だがたじろぐことはない。たじろぐ必要なんかないから。
「全く、上から目線だね君達は」
君達が、誰を示してるなんて聞かなくてもわかっている。
力強いがたおやかな文字の書かれた紙が曲がらないように小さく紙をポケットの中で握りしめた。

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