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暖かい


縁側に寝そべっているときのことであった。

お日様の光を浴びて、ぽかぽかと日光浴をしていた。誰も見ていないし、この時間帯は誰も来ないように人払いをしてもらっているし、今くらい自由にしていたっていいだろう。そうして目を閉じて、過去のことを振り返るのだ。今までいくつもの命が産み落とされ、そして散っていった。その多くの命を背負って、鬼殺隊の柱として生きている今。

「……兄さん」

空に向かって、今は亡き家族や、仲間のことを思い浮かべながら、また日々の報告をしている。今日に至るまで、たくさんの命が潰えて、消えて、その屍を越えてやってきた。その命を憂い、嘆き、また感謝しながら。涙を流す毎日だ。

柱になって、泣かなかった日などない。毎日のように涙を流しては、目を腫らして鬼退治へと向かっている。

「───小夜莉」

瞳を閉じていた私に覆い被さるように、影がかかる。その影に、私は違和感を覚えて目を開く。そこには、穏やかな微笑みをした炭治郎の姿があった。

「…………」
「どうした? 傷でも痛むか?」
「……人払いをしていたはずなんだけど」
「俺の顔を見たら入れてくれたよ」

そんなことより、何かあった? と問いかけながら、私の隣に腰を掛けた彼に、私は涙を拭いながら起き上がった。その際に、昨日受けた傷が傷んで、少しだけ顔を歪める。ただの傷ではなく、血鬼術であったために、血鬼止めを使っていたとしても治りが遅い。

「部下を、庇ったんだって?」

どこから情報を仕入れたのかは分からない。そう問いかけてきた炭治郎に、私は苦い顔をしながら頷いた。あのままでは、命を落としていたかもしれない。だから、私が庇ったのだ。その方が傷が浅いだろうと分かっていたから。庇われた子は涙をボロボロながしてすみません、すみませんと何度も謝罪を口にしていたけれど。

「いいの。守れたから、気にしてない」
「……小夜莉は気にしていなくても、その子は一生引きずるだろう」
「そうかも。でも、死ぬよりましでしょう?」
「……そうだな。痛かっただろう?」

いくら、強くなったとしても。どれだけ強靭な肉体を手に入れたとしても、傷がつくことが分かっていても、怖かっただろう。と、炭治郎は私の頭を撫でて、髪をすいた。
そして未だに涙のあとが残る頬を、優しく撫でる。

「想い人が傷ついたら、俺も心が痛む」

柱になってから。それぞれがそれぞれの仕事をしなくてはならないから。共に現地へ向かうことも少なくなった。昔のように、いつまでも一緒にいられなくなった。だから、俺自身が君を守ることは出来ない、と彼は歯がゆそうに答える。

「炭治郎」

私は彼との距離を縮めると、そっと彼の背中に腕を回した。密着した体に、彼の体が強ばったのがわかる。同時に、早まっていく心臓の音も聞こえる。それは私も、同じだが。

「炭治郎は、お日様の匂いがするね」
「…そうか? 鴉には焦げ臭いって言われるんだけどな」

私に応えるように、炭治郎は同じように私の背中に腕を回す。自分じゃ匂いが分からないという炭治郎の返答に、私はくすくすと笑みをもらす。
お日様の匂いだけじゃない。炭治郎はとても暖かい。その温もりを感じながら、気づけば私は寝息をたてていて、そんな私を見て、炭治郎はゆっくりと、私の頭を膝に乗せた。

「おやすみ、小夜莉」

幼子にするように、愛おしげに目を細めた彼は、私の頭を優しく撫でる。それから炭治郎は、私が目を覚ますまでずっとそうしてくれていて、起きたあとに隠の子に「くっついてないで仕事をしろ!!」と怒られてしまった。