後藤先輩と一緒に、西へと向かうように。そう任を受けたのは、私が鬼殺隊の隠となって、すぐのこと。

「胃が、痛ぇ」

神戸へと向かう列車で、そう唸った後藤さんに私は鋭い視線を向けていた、と思う。

「しゃきっと行きましょう、後藤さん」
「いいね、お前は。……俺も何も知らなかった頃に戻りてぇや」

彼がそう唸るのは、恐らく今向かっているのが隊内でも色々と実しやかに囁かれる『西柱』の元だからであろう。

西柱は異色の人間だと言う。
五つのどの呼吸法でも無い、独自の呼吸を使うのだ、と云う。
それこそ、どの派生でも無いそうだ。
ただそれも、時折鎹鴉同士の噂を元に話されることなのだから、真意は定かではない。
幾度か西柱に会ったことがある、と言う隠の話しによれば、それはそれは、喧しい男なのだそうだ。
威厳なんてものは微塵も感じられないのだとか。
ただ、それを言う本人も大概にしていい加減な人間なものだから、どこまでを信じて良いのかはわからない。

「……ここ、ですね……」小さな私の声が明けの空に響く。
「何があったら、こんなに汚く……」

蔦がびっしりと張った塀は元の木目の色は見えそうにない。
門に設えてある屋根は、見上げれば大きな蜘蛛の巣。
向こう側へと視線を向けると、大きな屋敷の屋根が見えている。
立派な瓦が敷き詰めてあり、やはり豪奢には見えるのに、そこかしこに蜘蛛の巣やら、蔦やら、なにかの生き物の干物が張り付いている。
長らく手もつけられずに汚れていっているらしい屋敷には、どこか哀愁が漂って見える。
幾ら個人の持ち物とはいえ、ここまで薄汚れているといっそ不気味に見える上、掃除夫の一人も居ないのかしら、と心配にもなる。
掃除を、したい。
いっそ、一度全部燃やして綺麗にしてしまいたい。
そんな事を考えていると、その門戸の向こうから大きな声が響いてきた。

「おい梅ぇぇえ!!!」
「起きとるわぁ!」

ギャアギャアと、言い合う声が近づいてくる。

「ごっつ可愛い娘やったらどないすんねん!せめて小綺麗に見えるようにせぇや!!!引かれるやろが!!」
「お前、下のモンに対して何を求めてんの?やめてよ?理不尽にひん剥くのとか、俺見たくないで……?!」
「はぁ?阿呆か!オレを見たらどんな娘もイチコロやわ、巫山戯んな!!自分から脱ぎよるわ!!」
「言うてお花しに行ったら割とお前嫌われてるやんか!」

段々と近付いてきて、

「……それは、ホラ。つい無茶してまうから……な訳ない。オレは好かれてますぅー。西くんカッコええねぇ、素敵やわぁ、言われてますぅ。一晩中言われてますぅ」
「言わせてますぅ、の間違いやろが!」
「はぁーー??阿呆かお前ぇ!女のコの気持ちもまともに解らんやっちゃなぁ!照れとんやわ!」

バン、と門戸が開いた。
その向こうに見えた眼鏡をかけた美丈夫は、サッと手を胸の前で広げて

「\どっ/」

んな訳と、小さく吹き出していた。
声からして、おそらく"梅"と呼ばれていた男なのであろう。
そこまで推察してから、もう一つの巨躯へと視線を向けた。
六尺はゆうに超え、あちらこちらと跳ねた髪を引っ詰めて後ろで結んでいるらしい。
だらし無く前をくつろげられた詰め襟から覗くシャツは、屋敷とは違い、嫌味な程に真白で清潔さを伺わせる。
裁着袴の下。カラン、と足元で音をたてる高めの下駄は、どうにもこうにも動きにくそうである。
先のやり取りを聞いていなければ、特別何と言う事もない好青年であり、育ちの良さを感じさせる雰囲気まであった。

この『西柱』へ期待をしていたか、そう問われると『是』と答える。
何せ、柱一人で駆け回って関西以西を治めているのだ。
相当な実力者で、人格者である、所謂『豪い人』だと思っていた。
まさかこんなに小汚い家屋に住まい、隊服まで着崩し、下らない妄言を吐き散らす風格を微塵も感じられない人間だとは、思っていなかったのだ。
その人に直に仕える事ができる。というのはこれからの鬼殺隊の一員として、誇るべき滑り出しだと思ってすらいたのだ。

それがどうだ。
こう言っちゃなんだけど、やっていけるかしら。
それが言葉を削りに削り、まぁるくツルッツルにした滑らかで素直な状態の感想である。
削らずに言うと、幻滅した。

ちら、と後藤さんへ視線を向けると、いつもなら涼し気な目をぐりっぐりと大きく見開いて、私へと向けて静かに首を横へと振った。

「出来るだけ、あの人達とは二人っきりにはならねぇようにしとけ……」



屋敷の中には、女中が一人居るらしく、通された座敷に座していると茶を出される。

「ありがとうございます」小さく頭を下げると「いえ」そう上品に笑う。
その女性へと向けて、「ありがと!」と梅と呼ばれた眼鏡の美丈夫が言うと、「フン」と鼻息を荒らげて去っていく。
この屋敷の力関係が如実に見えてきてしまいそうだ。
それにしても、彼女が居るにも拘わらずここはこんなにも薄汚れているのか、と気になりはするが、案内された室内は清潔で美しく塵の一つもない。


「は、はじめまして、後藤です。コッチは嗣永と言います……今日から、西柱様付きにあいなりました。ご指導ご鞭撻の程、宜しくお願い申し上げます」

隠の装束に身を包んだ後藤さんは背筋をピンと伸ばして頭を下げる。
器用である。

「あー、ええええ、そういう硬っ苦しいの、苦手やねん」

顔の前で仰ぐように手を振る西、と呼ばれた男は苦笑した。

「どうや?梅、あの娘可愛ないか?!」
「目元しか見えんけど、まぁ可愛い顔しとる!!……後は尻のまわりやな!」
「阿呆か、どう考えても乳やろが!!見てみ、あのきゃっしゃーな肩周り!あれでぼろーん出てきたらもう鼻血やぞ」

きっと私のことであろうが、あまりの不躾な会話に眉をひそめた。

「あの、」
「「なんや?」」

私の呼び声に、二人は声を揃える。

「聞こえてます、私に。……そんなつもりでここに立っては居ませんので、ご無礼承知で申し上げます。不愉快です」

ピシャリと言い切ると、横で後藤さんが項垂れていくのを感じた。

「……あかーん、なんも可愛ないやんか!もー、萎えるわぁ……自分も阿呆やなぁ、聞こえへんふりして『可愛がってください』言うとけばええもんを」
「ほんまほんま。可愛がってやるのに」

立ち上がろうとした私を、とめるように後藤さんは引っ張り、幾度も座れ、と目で訴えてくるが、どうにも聞けそうにはない。

「嗣永!……な、ほら、な?!抑えろ!」

そこへまた急須を持ってやって来た女中の彼女は、梅と呼ばれている男の前にある湯呑へと急須を傾けながら、

「最低ですね。本当最低、やっぱり最低だわ。この上なく最低です。類稀なる最低、びっくりするほど最低です。どれくらいかって言うと、肥溜めの掘り下げた地面よりも最低かもしれませんね。あ、若しくは海の一番深い底よりも最低かもしれません。兎に角気が触れそうなほどに最低。つまり、最低です」呪詛を繰り返す。
「いや、すまんかった」




「あの、西柱お一人と、伺ってたんですけども、」

後藤さんが気を取り直して、とでも言うように口を開いた。

「あぁー、梅は厳密に言うたら鬼殺隊には所属させてないんよな。ちょっと、ほら、選別とかさ……まぁ、もう、ええかなぁーって、……えへ。
オレの個人的な部下とでも思ってもろてたらええわ」

西柱は頭をボリ、とかきながらボソリと「めんどいやろ、」と呟いた。

「は?なんや試験あるんか?聞いてないぞ」
「そ、う……ですか。良いんですか?」
「知らんけど。やから、隊士さまーとか、柱さまーとか無しにしよ!オレは西、こっちは梅。宜しう」

ペコ、と頭を下げた西に後藤さんもペコリと下げる。

「あ、ハイ」
「宜しくお願いします、西、梅」
「嗣永ぁ!!」後藤さんの大きな声が轟き、
「遠慮無いなぁ……!」西の呆れたような声が室内に響く。

「ええええ、そんな畏まって貰えるような人間や無いからな」

パタパタと顔の横で手を振る梅は、ニコリと笑っている。

「お前はな」西の鋭いツッコミを
「お前もな」梅は打ち返す。
「はぁー???オレは皆が敬うべき柱様やぞ?お前は口もきけん立場やぞ!?」更に打ち返した言葉は
「らしいわ、こいつの存在は神かなんかみたいに扱ったって。喋りかけんでええし、手合わせるだけでええ。メシも食わんし、寝床もいらん。さおりちゃんにも言うてこよ」

梅が放つ言葉で幕を閉じた。

「やめえや」

なんと言えばいいのかわからないので、私は兎に角
手を合わせてみたら、そっと後藤さんに下ろされたので、今後手を合わせることも敬うことも無いと思う。



そうこうしていると、日もくれ落ちて鴉が任務を告げたことで夜が始まった。

「ほなら行くで」
「よし来た」

鴉の声に飛び起きたお二人は、寝起早々だと言うのにもう出る準備が整っていた。切火やらなんやらに見向きもしない。
勝手口に置いていた湯呑で口を濯ぎながら水分を取り、そこに置いてある握り飯を引っ掴んで早々に屋敷を出る。
考えたら、昼間に眠ってるときもずっと隊服を着ていた。
西に至っては座って寝ているものだから、疲れなんて取れないのでは無いだろうか。
鴉の鳴き声や、女中の方の足音一つにピク、と彼らが反応する度に、二人きりで本当にやってきていたのだな、と実感したものだ。

どれほど過酷なものなのだろうか。
これから、私はそれに晒されていくのだろうか。
人知れず私はつばを飲み込んだ。


お二人の脚は、兎角速かった。

走る距離も、長い。
暮れに出たと言うのに、鴉の誘導した地にたどり着く頃には月が頂点に達している。
あれだけの速度で走ったと言うのに、だ。
私はもう立っているのもやっと、と言う状況で、私よりも長らく隊に属している後藤さんですら息を激しく切らしている。
お二人は既に少し離れたところで縦横無尽に鬼の攻撃を避けながら、応戦している。時折、西が唐紅の着流しを捌くのが見えた。

「……すげぇな、バケモンじみてる……」
「後、藤さ、ん、」
「いや、可笑しいだろ、……あんな距離走って……は、……大丈夫か、嗣永」
「は、は、……は、」頷く。
「なら、近隣の被害状況先に、見に行くぞ」
「はい」

鬼が居るんじゃ私達はこれ以上あそこに近づくことも戦うことも出来ないのだから、できる事をしなければ。
ほんの少しばかり、あの唐紅の着流しを翻す姿は嫌いではないな、と思う。


近隣の被害状況を確認して行くと、東に比べて、被害状況があまりにも大きいと後藤さんが言う。
後藤さんはその涼しい、普段いっそやる気もなく見える顔を、これでもかと顰めていた。
そう、彼が言うのなら間違いはないのであろう。

これは私が暫くしてから気が付く事だけれど、発覚してから鬼を狩るまでの時間がかかり過ぎているのだ。きっと。
やはり、この区画を一人、ないし二人でと言うのは明らかに無茶が過ぎるのだ。

西は、躊躇うことなく被害者の心臓を刺す。
梅は被害者一家の家ごと遺体を焼く。
確かにこれなら、後処理などあってないようなものではあるけれど、それで済まない事だってあった筈なのだ。いくらでも。
どうやって来たのだろうか。
遺族への対応も、二人だけでしてきたと言うのだろうか。
二人でずっとこれをやってきたのだろうか、と思うと本当に少しだけ、胸が痛む。

「嗣永、俺達が支えないとな」
「はい」

梅は手を合わせて家が燃えていくのを見ている。
西は、手も合わせずにただ煙が空に昇っていく様を見守っていた。
それを静かに見守る後藤さんは、厳しく唇を引き結んでいた。



「よし、行こか、西」梅がニッパと笑い、声を上げる。
「何食う?」
「磯のにおいするから、海近いんやろ。魚やな」
「寿司食いたいなぁ」
「ええやんか、行くやろ?二人共」

お二人の掛け合いを見てから、

「「……」」私達は顔を見合わせ、
「「はい」」頷いた。




「後藤お前、そんな少食やからヒョロッヒョロやねん」

ヒョイ、と大きな握りを自身の口に放り込みながら西は言う。
横に腰かけている後藤さんを見るが、別段ヒョロヒョロと言うことはない、と思う。

「いや、お二人が食べ過ぎなんですよ!」

何なら青い顔をした後藤さんは腹を擦っていた。

「あんだけ動いたんや、食べな死ぬで」梅が目を窄め、
「東に、増援要請かけないんですか」後藤さんは項垂れる。

「んー?もとは、それなりに居ったんや、こっちも。ついでに言うと要請もかけてるねん。そしたらお前ら来たんやんか」

指についた米粒を食べながら、西は言う。

「ただな、東に比べて鬼の出現率も数も少ないんやわ。
それでも、まぁ二人やから、それなりには忙しくやっとるけどな。
……鬼が少なくても、行くまでに時間がかかる。
これは東に比べたら、どうしてもそうなりやすいねん。人が多くても少なくてもな。藤の家紋の家がむこうに比べて圧倒的に少ないんや。
そうしたら、滞在場所が限られてまう。必然的に辿り着くまでにかかる時間が長なって、東の鬼に比べて鬼が人を食ってる数がこっちのが圧倒的に多くなるんや。そうしたらどうなるか、っていうのは想像通りや。
半端モンが来ても鬼のおまんまになるだけやからな。
ほんで遺族は残らんで、藤の家も増えへん、と。
悪循環。」
「隠は、何故今までこちらには居なかったんでしょう」
「今日見た通りや。オレ等が行く頃には、大体人間は皆死んでもとる。若しくは虫の息。
手はかからんからええんやけどな。
やから、藤の家になる家も少ない。説得役も要らん。無駄やねん。
なら東で尽力してもろた方が隊の為やんか。
やから今回耀哉ちゃんが自分等を寄越した意味の方がホンマは理解できてへん。……何しに来たん?」

首を傾げた西に、私は思わず頷いた。
それが事実なら、なぜ私達は派遣されたのか。本当に。

「ええっ……、なにしに、……それは西柱様のお手伝いに、」

やっぱりまだ青い顔の後藤さんは、そう返す。

「まぁ、何でもええけどな。兎に角着いて来ぃ。君等を生かすのもオレの仕事や。側に居る間は守ったる」
「は、ぁ、」
「あ、でも君らに任せたい事があるんやわ」

思ってたより真面目な話しに、ほんの少し、見る目を改めたほうが良いかしら、と私は気を引き締め直した。


店を出て、また馬鹿みたいに走ってかの家敷に戻ると、その後鴉がやって来るまでの間中、西は話し続けた。
まぁ、厳密にはその日鴉は来なかったから、翌日の日が登り切るまで話し続けていた事になるのだけれど。

「今までこっちで調べてみてわかった事を纏めようと思っとる。耀哉ちゃんも、どこまで知ってるのかは知らんけど、オレがここ数年で出会うた鬼やらなんやらから引き出した情報、それを元にした推察。
それを纏めときたい。一応二部な。」
「はい」

指を二本付き出す西に頷いて、私と後藤さんは即座に筆を執った。
梅はゴロンと寝転がる。

「始めに、先も言うた通り、東に比べて遥かに鬼は少ない。逆に何故、こっちに居るのか。
恐らく日ノ本全土に居るんやと思う。
離れ小島なんかは知らんけど、少なくともあんまり固まって居るようには思わん。
前に鬼の伝承のある地を巡った時に、古い鬼が居った。
その鬼は、目の中に数字が刻まれてる鬼でな。やのにその数字にばってんが刻まれとった。下限の参や。
恐らく、何らかの理由で下限を外されてるっちゅうことやろな。
そいつの話しによると、どうやら奴さん『青い彼岸花』を探しとる、言う。
それは鬼皆で探しとるのか、ソイツが探しとるのか。その真意は不明や。
それでも、コッチに鬼が作られ続けてる、言う事は、恐らくそういう事やろな。
それを、探しとる鬼が居る。多分、下限の参が従わなあかん程の強さの鬼に。なら、多分殆どの鬼はソレを探しとる。」
「それは、鬼舞辻……若しくは上弦、と言う事ですか」

私の疑問に、西は小さく首を横へ振る。

「わからん。それに、そこはそないに大事な事やない。」
「でも、その彼岸花をこちらが先に見つけることが出来れば……!」後藤さんはそこまで言ってから、小さく唸る。
「出来れば?」
「……いえ」

それから、筆を止めた。
西は湯呑をズズッ、と啜りながらなおも続けた。

「続けるで。そこらへんの鬼自身には人間を鬼化する能力は無い、と見た。
そんな事ができる鬼は見たこともないからな。
鬼自身群れることはまぁ、殆ど無いみたいでな。
生殖行動を起こさへんから、っちゅうふうに考えてええとも思う。
仮にするんやとしても、鬼同士やとしても子ができる、っちゅうことは無いな。
雌の鬼にも何度か遭遇してるが、孕んでる鬼なんぞ見たこともない。
腹捌いた時に見た卵巣、子宮は腐っとった。
睾丸と摩羅も本体同様キンキンに冷えてやがるから、精汁はオレのがようけ出るな。
ってのはまぁ冗談として、出るかも不明。」
「え、ちょ、確認したんですか?!」

後藤さんは手で揉むような仕草を見せる。

「そらなぁ」
「……ひゃー、!」
「戦闘時含め勃起確認とれず。
つまり、今現時点では鬼は生殖行動を起こさん、ってとこに落ち着いた。
性欲があるかどうかは不明。
時折、そういうシュミのは居るようやけどな。
鬼の主食は恐らく『人肉』やなくて、『血』や。
これは、血袋を作る鬼が過去複数居ったり、時折自慢げに所業を話す鬼の言うてた事やらから推察しとる。
奴さんらは然程肉は食わんかったみたいでなぁ。
肉は食わんでも良いんやと。
やから、あいつ等が襲うのは人間やねん。
今生きてるあらゆる生物の中で、ヒトは血液量が多分かなり多い。
同じ肉一両でも、家畜とは全然量が違う。
そらぁ、人が襲われる訳やわな。
ほんで因みに乳も然程柔らかない。オレの好みではないな!」

西はまた一口お茶を含み、そのまま空を仰いで飲み干した。
鼻に入ればいいのに。

「鬼の首の頸椎・七、胸椎・十二、腰椎・五、仙椎有り、ここまでは人型も人形異形もほぼ共通。
尾骨のみ型によって変形アリ。
人とほぼ変わらん。
正し硬度は人のそれとは思えん。
鬼によって差異はあれど、遥かに硬くなっとる。
全くの異形はこれに嵌らず。
殺傷可能方法は現在確認中。
解っとるのは、脳を破壊しようと心臓刻もうと死なん。
今のとこ、日輪刀で首を斬るか太陽光で焼付殺傷のみ。
今現段階で言える事は、心臓と脳を日輪刀で遮断する事で、消滅する可能性が高い、ちゅうとこや。
ただし、奴さんら、中には臓器の位置を自在に変える奴もたまぁにおるからなぁ。
そこばっかりを攻めると痛い目見る時が来るんかもな。」

ぐごぉ、と漏れた鼾は恐らくそこに転がっている梅が出したものであろう。
西はおもむろに立ち上がり、梅の顔にそっと座布団を乗せた。

「鬼には、帰巣本能があると思うんやわ。
人間やった時に過ごしてたそこに戻ろうとするみたいやな。
恐らく本能的や。記憶は然程ないみたいやからな。
理性やら知性の残ってない、成り立ての鬼の方がその傾向は強いみたいや。
今わかっとる事は以上や。
オレもなんや貰える情報あるなら欲しいわぁ、……半年に一回も情報貰える時無いからなぁ……」

そこまで言い切ってから、西は梅の顔に乗せた座布団の上に腰を下ろした。
と思ったら、豪快な動きで脚をバタつかせて起き上がった梅が、西の体を真ん中で腹へと向けて二つに畳上げる。

「ぐぁ!!」
「こんな!方法で!……眠りを妨げるんは、あかん!」
「フンッ!」

そのまま足を梅の首に巻きつけあげた西は、梅の顔へと乗り上げ、梅の体を畳へと強かに叩きつけた。

「オレが起きとるのに寝られとると、腹立つ!!」

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