7〜モブは逃げられない!〜 この転生の意味を知る事ができるかもしれない事に、オレは胸を高鳴りさせながらタッサク神でなく、オレの背後の地球の神と名乗る元父の顔を覗き込む。 すると、優しい笑みを浮かべながら青年はオレの頭を撫でてきた。その感触はまさに父から与えられるモノと同じだった。 「ただの偶然ではないけど、あの死は必然だったんだよ。俺の次元だとどうしても異物扱いになってしまって、伝次郎くんには棲みにくい環境だからね。後、3年もいたらおそらくなんらかの支障が身体に出ていたはずだから…。だから、こちらに魂を移して一から育てる事にしたんだ」 「え?なんで?オレ、普通でないの?なんの力もないし、平凡そのものだし…」 「能力的には普通なんだけど、どうしても身体だけは俺の世界では異物になるんだ」 なぜだ? 「それは、伝次郎がダーリンと僕が愛し合ったせぃ…うぷっ!」 前からタッサク神が説明をし始めていたのだが、それを慌てたすぐに青年が移動して、背後から雁字搦めにして口を塞いできた。 「詳しくは話せないけど、君はこの子と俺の欠片から生まれたようなものだからね。魔力がまったくない俺の空間では、ちょっと棲みにくいんだ」 すこし言葉を詰まらせながらの説明と、タッサク神の言葉を塞ぐことに何かを隠されている事は分かったが、それを追求することは許されないのだと悟る。 だがそんなどうでもいいことより、オレは一つだけは追求しなければいけないことがあった。 「オレの事は別にもういい。でも、一個だけきちんと答えてほしいことはある。なぜ、祥治と勇司がここにいるんだ?でもって、なんで魔王と勇者なんて厄介な役目になっているんだ!2人が引き込んだのか?」 オレの不遜そのものの責め立てに、タッサク神は青年に背後から抱きしめられたまま返事をしてきた。 「そうだが?」 それが何か問題でも?と愉しげに続けられて、オレの血の気は一気に沸騰する。 「問題があるに決まっているだろ!こいつらが成りたくて成っていないのぐらい分かっているだろ!それなのに…」 「何が問題なのぉ〜?ディー。きちんと放棄して帰る術まで授けてるってのに。そいつらが帰らないでそれに収まっているのは、本人らの意思さ」 顎を2人の方向へとしゃくりながらそう言われて、オレは言葉に詰まる。さきほどその話題をしたばかりで2人とも帰る意思がないと言うのを聞いたばかりなので否定できないと思ったからだ。 「ぐっ!」 「それに、逆に感謝されたいもんだね。もし、そのままあっちに放棄していたら、間違いなくこいつら壊れているよ」 「えっ…」 予想外の事を畳み掛けるように言われて、再び絶句してしまう。そして、思考回路を生理整頓する前に、タッサク神は真剣な表情をし、口調も変えてオレに指摘をしてきた。 「そろそろ、お前もきちんと向けられる気持ちに向き合え。逃げ回るだけでは、誰も諦めたりしないってもう分かっているだろ?こいつらに門を少しだけ広げてやったのは確かだけど、それでもこいつらはお前だけを求めて全てを捨ててこちらに飛び込んできたんだ。勇者なり魔王なりになったのも全て、お前の為だ。ボブもサブもやり方は褒められたものでもないが、お前だけを長年求め続けているのは分かっているだろう」 言われなくても分かっている。祥治も勇司もそして、ボブもサブも種類に差はあってもオレに対して並々ならない執心を覚えている事ぐらい。そして、その向けられる強い想いにオレはわざと目をそらしている事も…。 それでもオレは素直に頷けない。 UNION・■BL♂GARDEN■ |