09 せめてキスを終えるまで

「私、あなたが嫌いです。大嫌いです。」

俺は疲れた頭をフル回転させて考えた
そんなことをいってきたのはきっと
動揺させて、危険を知らせるためだろう

きっと組織にリークするつもりなどなく
身を隠せ、逃げろ、そう伝えたかったに違いない

馬鹿。



電話の向こうからは汽笛の音、かもめの鳴き声、
そしてかかってきたのは公衆電話。

俺は候補をいくつかだし、場所を特定した。

これから彼女は何をしようとしているのか
なんとなくわかってしまった。




「風見!人数を集めろ!組織が動き出した、いくぞ!」




助ける、必ず助けてやる・・・!!!












- - - - - - - - - -













埠頭につくと、すでにジンはいて
こちらに気づき、ニヒルに笑う。




「呼び出しておいて遅刻とは、いいご身分だな」

「すいません、いろいろ準備があったもので」




そういってジンに銃口を向けた。




チュン−―





「ッ?!」




その銃は撃たれ、からからと音を立て
手から離れていった。



「キャンティさん・・・?一人じゃないのね」

「さあ、どうかな」



ジンの周りからは見えないけれど仲間たちが
クスクスと笑い、その声が反響してこの場の恐怖をあおる。




コツコツとジンがこちらに近づいてきた
そうだ、こい、こい、もっと近づいて来い



「今!」

「−ッ?!」



パン!!!!!




ジンが近づいてきたところでもうひとつ隠していた銃で彼に向かって撃った。
だが私は銃を持つのは初めてだ。素人が早々打てるものではない。


案の定ジンにはかすりもせず、髪の毛を掠めてうしろのコンテナにあたった




「やってくれるじゃねえか」

「ぐああっ!!」



ゴっと音がしたかと思うと
私のみぞおちにジンの蹴りが入り
後ろに倒れこむ。


その後も何度も何度も
体中をけられる。
前回撃たれた傷がやけるように痛い

そしてジンは靴のかかとで
まだ傷のふさがらない穴をグリグリと痛めつけてくる


「ああっ・・・!!」


気を失いそうなほどの痛みに耐えるのがつらい。

もうこれでおしまいなのだろうか・・・







そのとき複数の車の音とともに、
こちらに向かってライトが当てられた。



「そこまでだ!貴様ら!」

「チィ!」



どうやらそれはパトカーのようで
ジンはすぐさまそこから近くに止めてあった車に乗り込み
その場から去っていった。



警察官がこちらに駆け寄ってくるのがわかり、ほっとして体を起こそうとした。







−――――――チュン!




先ほど聞いた銃声だ、そう思った瞬間
胸に鋭い痛みを感じ手を触れる。

ぬるっ

そこには温かい赤い液体がじんわりと広がり
わたしはその場に倒れた。


狙撃主に気づいた警官たちは狙撃主がいたであろう方向へ乱射する
だがそこにはもうやつらはいなかったのか
銃声は鳴り止んだ。





「愁!!!」



聞きなれた声と抱きかかえられる感覚にうっすらと目をあける。
するとそこには会いたくて仕方なかった彼の姿があった。


「安室さん・・?」

「そうだよ、愁、僕だ、」

「どうしてここが、」

「そんなことはどうでもいい!傷口がひらく!しゃべるな!」


私を抱きかかえる彼の手はとても震えていて
青く光る彼の目は、きらきらしていてきれいだった

その時ぽつぽつとあめがふりはじめ
私の頬には一筋のしずくが流れた

私は震える血だらけの手を彼の頬へ伸ばす。
それを支えるように安室さんは私の手を握った



「あむろ、さ、・・・なかないで」

「泣いてなんかないさ・・・雨、だよ・・」

「フ、また、そんなこと・・・」



強がる彼がおかしくて、笑みがこぼれた。
するとのどの奥が熱くなり、口からは血があふれた




「ゴフっ・・・う・・・」

「愁!・・・もうすぐ救急車が来る!それまで、がんばれ・・・」



本当に泣きそうな彼が握る手は震えてる。


「ね、安室、さん・・・?」

「なんですか・・・愁、」


「キス、して・・・?」



そういうと彼の目からは涙がぽろぽろと溢れ出し
そして、そっと私の唇に唇がふれた





こんなに心配かけてごめんね
こんなに迷惑をかけてごめんね


こんなに愛してしまって





「ごめん、ね、」





唇が離されると、私は全身の力を失った。























mae tugi

booktop


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -