お守り
このお話は昨年の桂祭りSS
幾年を超えてもの続きっぽいものです。
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つつがなく終わりを迎えた小五郎さんの誕生日パーティ。
多くの方に来ていただいて、楽しい時間を過ごしてもらえたようだったので準備を進めてきた者としては疲労感は当然あったものの、それ以上の満足感に満たされていた。
ほとんどのお客様は帰られたのだが、すご〜〜く酔っ払ってしまった数人は帰すのも危ないくらいだと判断し、そのまま泊まってもらうことにした。
お手伝いさんたちに手伝ってもらいながらバタバタと部屋の準備や片付けをすすめていると寝間着の浴衣姿の小五郎さんが水屋に顔を覗かせた。
「まだやっているのかい?もう夜も深いし一旦切り上げて明日にしたら?」
「はい。でも、もう少しで片付きそうなんですよ」
「そうかい…。せっかくの誕生日だからあとは蘇芳に部屋で祝ってもらおうかとおもったんだが…」
少し哀しげに目を伏せる小五郎さん
「ぇ!?」
そんなことを言われると思っても見なかったので大きく目を見開いてしまった。
はっと我に返ると周りから視線が集まっているのに気付く。
頬に熱が集まるのを感じながら「周りにはお手伝いさんがいるのにそんな事言うなんて…」というと、小五郎さんはそ知らぬ顔で「もう少しらしいから皆に任せてもいいかな?」とお手伝いさんたちに尋ねている。
「はい、もちろんですよ。ご主人様、奥様」
そうやって快く答えてくれたお手伝いさんたちに小五郎さんは「ありがとう」と笑顔を返し、私の手を引いて廊下に出た。
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手を引く大きな手をきゅっと握り締め、小さな抗議をした。
「もう!恥ずかしいじゃないですか」
「おや、駄目だったかい?」
「片付けも後少しだったのに…」
「私は蘇芳と早く誕生日を祝いたかっただけだよ。せっかくの日だから」
いたずらっぽく笑う小五郎さんに小さく溜息を吐き、「仕方ないですね。今日は特別ですからね」と笑顔を返した。
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