ぼくとスカウト テディベア 1
録音作業をしていたら、青葉くんから連絡がきた。なにかと思ったら、みかが行き倒れていたらしい。人形遣いに連絡を入れるかと、思ったがあれはホントに連絡を見ない。いや、隣クラスだから会えば良いだけだが。回収するほうが早いかな。と判断したぼくは、適当に楽器たちを片付けて保健室に向かう。道中にぼくとみかの二人分のとりあえずの軽食を買い込んで保健室につくとそれなりに混沌としてた。
保健室の割ににぎやかすぎる。一定のリズムと優しい土笛系の音。保健室に笛て。優しいけどさ。ティンホイッスルとかじゃないから問題ないのか?とか疑問に思いながら部屋に入るためにノックを二つ。一瞬音が止んだのでそのまま扉を開けば、音の中心には月永くん、青葉くんと朔間さんとこの子、それからみかが会話をしていたようで、あ、晦くん。と真っ先に青葉が声をかけてきた。ぼくは、片手を上げて返事をすると、なかば兄なんて少し気まずそうな声色でぼくを呼ぶ。
「みか、食べれそう?」
「ううん、なかば兄ありがとう、あとでいだだくわ〜」
「君に関しては食べ終わるまで監視すべきだと、思うけど。」
まぁ人の速度があるから、ゆっくり食べなさい。とみかの好きそうなものを彼の膝の上に置く。
「なかば兄ィ、ありがとう!」
「簡単に礼を言うと人形遣いに怒られるよ?」
「確かに、お師さんには、あんまり簡単にお礼を言うと安っぽく見られるよーって、起こられるんけど。」
「んん〜、思い出した!おまえシュウのお気に入りの子か!どっかで見覚えがあるなぁって感じてたんだ〜あぁスッキリした。」
月永がふと手を叩いてみかをゆび指す。人を指すのはよろしくない、と言うが。まぁ、月永は言っても聞かないだろう。ぼくは、どうしてこういう経緯に至っているのか、青葉に聞くと、月永が「おれが行き倒れくんを見つけた。」、朔間さんの子が「俺が運んだ。」と止めとばかりに青葉は、「俺は月永くんを探しに来たんですけど、みかくんと出会ったのでとりあえず央くんに連絡を入れました。」と妙に息のよいコンビプレーを見せつけられた。仲のよろしいことで。
「えっ?忘れられてたん?うう〜っ、おれって影が薄いんやろか?なかば兄ィ」
「さぁ、どうなんでしょうねぇ。月永くん」
「ごめんごめん!おまえもナズと同じでずいぶん印象が変わってたから!どいつもこいつも人間味が溢れてきてるなぁっ、嬉しい!」
るん。と付きそうなほど嬉しそうな月永くんは、歯を見せて笑う。反対にみかは、ナズって、なずな兄ィのこと?月永先輩、あのひとと仲良しやのん?同じクラスで友達〜、あいつとは一緒に『ナイトキラーズ』って言う『ユニット』を組んで、ちょっと前に楽しく大暴れした。
月永くんとみかの話を聞きながら、あの仮歌か。と思ったが、面子を聴いてなかったが、なずなが入って……あぁクラスの隅で何かしてたな、と思い出した。ぼくはそんな光景をうとうとしながら見てただけだけど。
「なずな兄ィ、ちっとも『Valkyrie 』には戻ってけぇへんのに」
「彼は歩き出しましたからねぇ。忘れ物はとりに来るかもしれませんが、旅立ちとはそんなものですよ、みか。」
「あぁ、月永くん、そのへんは地雷だと思いますので」
青葉くんのとりなしで、忠告めいたお話を繰り出す。ぼくもみかに渡した袋からご飯を取り出してピリピリ袋を開けていく。青葉くんはみずから踏みにいくきらいは有るけど、まぁ僕が言ったって結局彼は踏むのだから、言わなくていいだろう。ああタマゴサンド美味。
「影片みか、です。忘れんといてくださいね。あんまり下の名前は好きとちゃうから、出来れば苗字で呼んだってなぁ」
「ぼくは好きですけどね。」
熾天使、セラフ、ミカエル。神に似たるものは誰か。なんていう直訳や、儀式魔術では火の元素や赤を関連するもの、そして死を扱うとも言う。『Valkyrie 』の語源であるワルキューレも、死を扱う半神だ 戦場の死体を運ぶ。きっと無意識下でぼくら死体をみかが運んでくれるかもしれない。なんてバカナコトヲ考えたこともあったけど。まぁ関連する聖書やらはあんまり得意じゃないけどさ。でも、ぼくは一番きみがその名前が似合ってるとは思っているから、ぼくはみかを名前で呼び続けるつもりである。
「そう?何か天使っぽくて良いじゃん!ミカエル、ミカエル!」
「なずな兄ィも初めて会ったときに耳打ちして同じこと言うてくれたわぁ。」
「やっぱり、みんな考えることは一緒なんですよねぇ」
「え、なかば兄ィもなん?」
それなりの興味を持つ人が通る道ですよ。と笑ってやれば、不思議そうな顔したみかは、んん〜と少し不満気だけども、すこし懐かしそうな表情を浮かべてたがすぐに曇った。何かあるな。とぼくは本能的に思った。
「とりあえずみかはご飯を食べなさい。それともぼくから差し出さないと食べないかい?」
「あぁっ、ごめん、なかば兄ィ、食べる!食べる!」
「食べないなら、君の好きな一口ゼリーをぼくが食べるだけですけど?」
「んなっ、殺生な!」
みかは慌ててご飯を食べ出すので、これでしばらくは大丈夫だろうと判断してぼくはとりあえず自分の食事に精を出すとしよう。
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