20180712 ないつの日(君のために5題)-これから起こる、全ての出来事を君と一緒に、 月永レオ

部屋は珍しく俺とレオしかいなかった。俺は俺で本を読んでるし、レオはいつもの通りに紙を広げて世界を作り上げている。最近レオが帰ってきての俺はふと静かになるとレオが消えていないのではないかという錯覚に陥って顔をあげるなんていうことがよくある。耐えがたい恐怖ともいえるそれを払うべく視線を上げればレオがこちらを見ていた。萌木を思い出す緑が俺を見ていた。

「…レオ?」
「文哉の目は感情と連動してるんだな!」
「はい?」

目は口ほどにモノを言うって本当だな!なんてレオが言うから、突然どうした。自由奔放すぎるレオの発言に俺は困惑する。どうした一体どうなってそうなった。本を読む俺の目がひどく優しかったというのだが、いや普通に読んでたよ。むしろレオが静かすぎて怖いと思ったぐらい。レオが静かになったら子どもと一緒でなんかたまにとんでもないことをやったり言ったり消えたりする。俺にはそんなセンサーがないので、レオの思考をトレースして統合して行き先を探したほうが早いというのに最近気づいた。どうもこれも俺しかできなさそうなんだけど、それなりに成功するしそれなりに外れる。結局運だよね。そのままレオがどうしてそういったのか思考をする。

「文哉は『Knights』の事を考えてると目から険が取れる。」
「確かにちょっとレオが静かだから怖くて考えたけどさ。目の前にちゃんと居てくれたから。安心はするよ。」
「居るっていえば、そういえばさ。」

みけじママから聞いたけど、俺が居なくなってから一心不乱に俺にずっと帰ってこいって言ってくれてたみたいだな。ありがとう文哉。俺の聴覚にそう届く。伝わってたんだ。俺の努力がレオまで届いていたんだ。そう思うと心の中に一つ光が差し込んだ。差し込んでしまえばあとは光量が増して明るくなって世界に光が満ち溢れていく、溢れすぎてこぼれていく感覚が体中を支配する。俺のやってきたことは無駄ではなかったんだ。きちんと届いてた。文字は、ちゃんと届いてほしかった人に届いてた。誰もが言わなかったことをレオにはきちんとメッセージが伝わっていた。 お前は歌じゃない。一人の人間だって。それだけがわかればもう、感情が胸を突き破りそうで仕方がない。反応の鈍い俺を見てかレオが不思議そうに俺に寄る。

「文哉!?どうした?泣きそうな顔して、どこか痛いのか?腹か?」
「ううん。嬉しいんだ。レオにちゃんと届いてたのが。届いたのがわかってちゃんと帰ってきてくれてありがとう。飼い主。」
「ありがとな、俺をずっと待っててくれて。」


31D
君のために5題
これから起こる、全ての出来事を君と一緒に、
月永レオ

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