-愛を込めて。

なんてこった。って今思った。
『Knights』のアルバムが出るからと皆でジャケット撮影はした。そこまではよかった。そこまではうまく行っていた。問題はそこからだった。転校生の企画書にかいてあった、店舗別のオマケの撮影。これが大問題だ。個人別のブロマイド写真なんだけど、泉の乙女役が欲しいとかレオが言い出したからさぁ大変。天才子役がこんにちはー。坊っちゃん、女装をしましょう!と。くそっ、どんぐりころころ調になる。何度思い返しても、どうしようもない。レオが文哉なら泉の乙女役も出来るだろ!背中からしか写さないし文哉だってわかんないけどな!って言うなら俺じゃなくていいじゃん!って言うのは飲み込む。出来ないことは無いよ。中学の時にそういう難しい役もやったし。出来るんだけどさ。純粋な疑問点。

「ねぇそれ、俺のはどうなるの?」
「安心してください。合成です。一人二役。」

安心できるか。鉄仮面プロデューサー。身長の事も考えて、メンバの中だったら適任なんですよ。そう転校生が言う。いや、レオが言い出したならやるんだけどもさ。やりゃあいいんでしょ。やりゃあ。って言うや否や転校生が俺を着替え部屋に叩き込んだ。待って!お前確信犯だろ!とか叫ぶが、転校生は俺には親指を立てるだけだ。ぐっじょぶ。じゃないよ。ほんとに。おいこら、聞いてる?聞いてないからーなんてりっちゃんの声がする。仕方ないけど、着替えるしかないので、部屋の中央に置かれていたドレスを引っ張り出す。濃紺と白のアルバム用衣装に似たイブニングドレスなんて呼ばれる種類のドレス。背中がば空きのやつ。うん、ナルくんには確実に無理めのやつだ。胸まできちんと作られてて、裾に詰め物たくさんしたけど、しっかりデコルテまで出たドレス。うわぁ、これ転校生の手作りとかあいつどれだけ裁縫能力高いんだっての。仕方ないのでコルセットから着ていく。コルセットして服来て、胸のためにブラジャーまで……夢なら覚めてくれ頼むから。醒めない。はい。とりあえず着るだけきて、後ろのリボンやらは誰かに結んでもらおう。膝裏に結びきってないリボンが当たって、くすぐったいので手早く着こんで、撮影場に戻ると全員休憩で、俺を待ってたようだ。俺が戻ったことに気が付いてナルくんが寄ってくる。

「とってもかわいいデザインよね。羨ましいわ!」
「誰でもいいから、背中の紐結んで欲しいかも。手が届かないし」
「ほらほら後ろを向いて。結んであげるわ」

ありがとー!!とくるっと回ってナルくんに背中を向けると、ナルくんはなれた手つきで背中のリボンを結ぶと、バランスよく結んでくれる。最後に裾あたりも調整してくれて、後ろに二度ほど引っ張ってから、できたわよ。と一声。んーとっても似合ってる。なんて言われてありがとうと返事をしてると、メイクに呼ばれる。え?顔は映らないんじゃないの?とか思うが、やるなら完璧にしなきゃだめよ。とナルくんに言われるので、仕方ないから、そっちに行くと、メイクさんからウイッグを渡される。俺と同じ髪色の肩ほどまでのウイッグ。俺は諦めてさっさと被ると、メイク始めますね。とそのままブラシをかけられていく。俺はメイクさんに身を委ねて、目を閉じる。遠くで、セナのガミガミ声を聞きながら、どんな役になってやろうかと考え思考を巡らせる。全員からどんな表情をださせるか。そんなこと考えながら、撮影にワクワクしてる。新しい仮面というのは被る度に楽しくなるのだから、俺はさつえいがすきだよ。ドラマならな!

目を開くと、まったく知らない俺がいた。控え目お化粧に見せて、がっつり別の顔だ。濡羽色の髪のゆるやかなウェーブ。本職の技術すげえ。とか俺が驚いているとセナが部屋に入ってきた。ちょっと疑惑の顔をしてから、文哉?と声をかけられる。なにセナ?と聞くと、しげしげと俺を見てから、やっぱりこっちのほうがいいかもね。と呟いた。

「かさくんには、文哉が別件の仕事で一旦抜けてるって事にしてるんだけど。」
「…なんで?」

相手が文哉だって知ったら、ガチガチに緊張しそうじゃない?いや、すーちゃんなら初対面の女とツーショットの方が緊張しそうだと思うんだけど。うん、だから撮影途中でバラしたほうがかさくんの緊張がより解けると思うんだよねぇ。ひでぇやつ。でも、なんとなく想像は出来た。ギャップというか、緊張感のとれた瞬間の表情がいるのかもしれない。やってみる?と聞くと、そのためにやるの。かさくん以外には話をしてるっからって、言われたけど。騙す気満々じゃないですかー。やだやだ。

「いざとなったら、セナが責任とってね。」
「いざが来ればね。バラすタイミングは文哉に任せるから。」
「はいはい。」

はい、じゃあどうぞ。と手を差し出されたので、俺はそのままセナの手を取って椅子から立ち上がる。なれない髪のながさにくすぐったさを覚えつつ、俺は役の仮面を被る。セナに手を引かれて、モデル来たよぉ。とかさくんから撮るんだから、仕度してよねぇ。と声を出す。俺はセナから離れて、にっこり笑ってから「よろしくお願いしまぁす」と声を出すと、レオが笑ってるのが見えた。あとで覚えてろ。と目が語るが、レオには通じないし、りっちゃんはえっ。という顔をしている。俺もえっ。だわ。それでも、表情を崩さずに微笑んでいると、すーちゃんがやって来た。

「始めまして、朱桜 司です。本日はよろしくおねがいします。」

一礼されて、俺は一瞬困る。名前、考えてない。やべえ、と一瞬視線をさ迷わせたが、彼らは気がついていない。どうしようもない俺は、すぐさま切り札をきる。設定はそうだな、と瞬時に判断を下す。

「始めまして、よろしくおねがいします。月永レオの姉のろきです。いつも兄がご迷惑をおかけしていませんか?」
「Leaderの御姉様…?。」
「ちいさな事務所でモデルをしてるんですけど、レオにどうしても撮影を手伝って欲しいと。言われて。」

レオが目玉ひんむいてこっちを見た。俺はしてっやったりの顔で平然と嘘を並べてすーちゃんと二三言を交わす。うちのレオが失礼していたらごめんなさいね。と眉を潜めると、とんでもありません。いつの我々をよく導いてくれています。としっかり騎士の顔だ。それはよかった。と返事をして、微笑んでいると撮影入りまーす。と転校生の声。

「撮影が始まりますね。御姉様、お手をどうぞ。」
「あら、嫌だわ。御姉様なんて。レオも呼んでくれないのにね。」

ちょっと恥ずかしいわね。そういいつつ、すーちゃんにエスコートされつつ、俺はすーちゃんと繋いでない手を背中でピースサイン。レオめざまあみろ。とりあえず第一印象はバレなかったようだ。ほっと胸を撫で下ろして、カメラマンと転校生を交えて方向性の確認。身長差があるので、ほぼほぼぺったんこの靴にはきかえる。俺の背中からのショットになるのでちょっと俯瞰気味になるらしい。その俯瞰と接近ショットと2セット撮る。という方向性だけ決めて、二人で並ぶ。俺の手をとって、片ヒザついて、俺を見上げる。身長差が分かりやすいから、俺もちょっと屈んでおく。そのままシャッター音が後ろからきられる。そのまま俺を見上げて微笑む。がやはり表情が固い気がする。俺はちょっと悩んでから、そっとすーちゃんに語りかける。

「お顔が固いわよ。ほら、笑ってあげなさい。」
「申し訳ございません、あまりにもお綺麗でいらっしゃるので」
「私に、転校生の子を重ねてご覧なさい。本人じゃなくて申し訳ないんだけれども。」

そのようなお顔をなさらないでください。不甲斐ないのは私なのですから。と眉尻を下げる。こらこら、眉尻下げないの。今回のコンセプトは、女の子は皆泉の乙女と円卓の騎士だよ。喉まで出掛けて飲み込んだ俺偉い。まじで。どうしようかな、と思考する。俺がここに立ってるより、転校生が立っている方がよかったんじゃないか?と考えてしまうが、そんなことしたら俺の名折れだ。どうするか。と一瞬考えたが方向を変えよう。そうだ、そうしよう。

「学校でのお話ししてくださる?レオは家であんまりお話ししてくれないの。どんな人が居て、朱桜くんがどうやってユニットを思っているか私に聞かせて?」

一瞬目が輝いた。よっしゃ、カメラマン今だ!撮れ!!と俺は心の中で念じる。俺の気持ちが通じたのか、後ろのカメラマンも必死にフラッシュとシャッターを切っていく。そのままいけぇ!と押しきっていると、すーちゃんは何から始めればいいでしょう?と小首を傾げる。あー!今のめっちゃよかった!!!もっと撮って!とか心の声が叫んでる。

「そうですね。ここでは他の方に聞かれるので、今居ない先輩のお話しをしますね。」

残念、目の前に居ます。とは言えないので、俺も教えて?とねだると、ポーズを変えてシャッター音は続く。
あの保村先輩はとても優しいです。始めてあったときは、冷たい先輩だとは思いましたが、鳴上先輩や瀬名先輩から話を聞くととても『Knights』を、Leaderを、いいえ、メンバーの我々を愛してらっしゃるのがわかります。私が困ったときも、後ろからすっと何でもない顔して助けてくださいました。お礼をいうと、俺はなにもしてないよ。と言うので、お礼がいつも言えないのですが。それでも感謝はし足りてません。それに、我らが王が帰ってきてからは、とても幸せそうに笑ってとても楽しそうに一秒一秒を過ごされてます。保村先輩が居ないともしかすると『Knights』はうまく回ってないのではないかと、思ってしまう時が何度もありました。それぐらいに保村先輩は、『Knights』にとって必要な要だと司はそう考えます。
やばい、ちょっと嬉しい。っていうか、俺が泣きそう。ちょっと目が潤んでる。やだ、なにこの誉め殺し。俺が死ぬわ。俺はそのまま目線を下げると、すーちゃんが顔を覗いてくる。やばい、嬉しい。俺が守ろうとしてた場所が、すーちゃんがそういってくれるのが。

「もうだめ、すーちゃん!!!!!俺は嬉しいよ!!」
「えっ!?保村先輩!?」

ぎゅっと俺はすーちゃんを抱き締める。ヒールもはいてないぺったんこなので、ちょっと俺のが低いけど!元から俺低いけど!どうせ俺は後ろしか使わないんだもん!泣いたって良いよな!とか思ってるけどプロ根性で泣かない!心は泣いてる!歓喜狂乱!イン俺のハート!いつもごめんね!ありがとう!うちに入ったのがすーちゃんでよかった!セナが決めちゃったから不安なところもあったけど、それでもやっぱりすーちゃんで良かった!今ほんとに思ってる!

「お仕事は?何が起こってるんですか!?」
「すーちゃんごめんねぇ!嘘ついたぁあ、セナに嘘つけって言われた!まさかこんなに良い言葉投げてくれるなんて!!もうだめ、俺めっちゃ泣いてる!!心が!」

すーちゃん、いつもありがとう!と叫ぶように言えば、俺の腰元に腕が回ってきた。司は、ここまでたくさん愛情を注がれていたのですね。と彼は言う。ちゃんと男の子になったねぇ。とか親目線が入りかけてるのに気が付いて、あとで一緒にセナに抗議しに行こうね。と二人で笑うと、カメラマンが良いのとれたね!と声をかけてくる。あぁ、そうだ撮影だった。と思い出して、俺は現実に帰ってきた。

「まさか、保村先輩だったとは。まったく解りませんでした。完敗です。」
「まぁ、嘘をつくのが俺の職業みたいなもんだからね。ほら、写真確認して、セナに抗議しよ!。」

あぁ、思わぬ流れ弾を喰らった。と思いながら、俺はとりあえず瀬名から花丸をもらうために、交渉するつもりだったんだけど、皆のところに戻ったら、めちゃくちゃ誉められた。いや、それじゃない。おいこら、セナ。誤魔化すな。ほら、次くまくんとだから行ってきて。と俺は追い出されるように、りっちゃんと行ってこいと背中を押された。なんだ?りっちゃんもあくびを交えながら二人でカメラマンの元に向かうと、先程と同じで好きに動いて良いよ。といわれたので、俺は立ってりっちゃんを見つめる。

「さっきス〜ちゃんと、なにしゃべってたの?」
「んふふ、内緒。」
「つまんない。」

つまんないって言われてもねぇ。って感じなんだけど。そのままりっちゃんは腕を広げて飛び込んでおいでといわんばかりのポーズをとってくるので、俺は一歩前にでると、無理矢理腕を引っ張られて、抱き締められる。俺はぺったんこ靴のままなので良い顎置きになっている。なーんも見えなくてちょっと不満なんだけど、そこから、もぞもぞと手を動かして、俺の首筋を狙おうとするな。いや、撮影だからと思って黙ってたけど、いてっ、撮影中はやめなさいいっていってるでしょ!ぐっと俺はりっちゃんから逃げる。

「んーなに?」
「何じゃなくって、りっちゃん、」
「あまがみだってば。」

本気で噛んでたら、大問題。君はただでさえ冗談か本気か俺もわかってないんだから。そのために肩出してません!ちぇー。とか言われたけど、もう、あとで一緒におやつ食べよう。と提案するが、どこの何が食べたい。とかまで指定される。わかった、わかったから。俺の首筋を狙うのはやめろ。服に血が付いたら取れないんだから。ただでさえ、白い部分あるんだから。とやんわり、ノーサンキューをつらぬいてると、じゃあ俯瞰とるよー。なんて指示が飛ぶ。

「俯瞰でしょ?ふ〜ちゃん、もうちょっと寄ってよ。」
「首筋を狙わない?」

狙わない狙わない。といわれると、信用するしかない。黙って、りっちゃんに寄ってくと、りっちゃんは俺の髪を一房とって、余裕綽々と言わんばかりの表情を浮かべている。ほんと、背中しか写ってないんだけど。俺の背中は本当にいるかなぁ。と考える。だって、俺の後で撮るんでしょ。なんで、先に女装
させてんの?もしかして、合成って誰か他のメンバーの首から下の合成?まさか?そんな、…いや、ないだろう。

「仕事以外の事考えてたでしょ?」
「いや、仕事の事だよ。っていうか、なんで女装を先にしたんだろう?」
「さぁ?いつもの王さまの気紛れでしょ?」

りっちゃんはクツクツ笑って、俺の肩を叩く。なんだったんだ、と俺は首を傾げる。それでもりっちゃんはポージングを撮っているので俺は黙って、ほんのちょっと顔をりっちゃんにむけると、りっちゃんの楽しそうな顔がよく見える。赤い瞳が、ゆっくりと弧を描いて、ぱっちりとした目が俺を射抜く。そこから、眠い。と言ってそのまま俺に全部体重をかけてきた。重たい重たい!!もうちょっとだから起きて!とゆするがだめだ、りっちゃん。完全に寝ちゃったよ。りっちゃんが寝ちゃうと一番ちびの俺にはどうにも出来ないので、先程の恨みを込めてセナに助けを求める。ナルくんと二人で引き剥がしてくれて、セナが回収して行ってくれた。次はナルくんとらしい。そのまま撮影が始まる。

「りっちゃん、寝ちゃったから、あとで一緒に確認してくれる?」
「えぇ、勿論。泉ちゃんも一緒に巻き込んじゃいましょう。」

文哉ちゃん、本当に可愛い!アタシも、そうだったら良かったんだけど、でもアタシの体格じゃあね。と言うから、こんど一緒に服でも見に行こう?とさそえば、いいこいいこ。と頭をなでてくれる。その時にはナルくんには花束を送ろう。と心に決める。どんな花が似合うかな、とか考えつつナルくんは思いのままに表情を作っている。俺はそんなナルくんを眺めながら、ぼんやりと立っている。ふと視線がかち合って、見とれちゃったの?と聞かれるので、ナルくんが綺麗だからね。とひやかしてると、やだわもう。と俺の肩を叩いた。

「ナルくん、力強すぎ!」
「そんなつよく、叩いてないわっ」

他愛ない話をしてると、カメラマンが撮るよ!と言い出すので、俺もナルくんもはぁい!と返事する。今で三人目、折り返しか〜。とか思いつつ、俺はどんな顔が欲しい?とナルくんに聞いてみた。ナルくんはモデルだから俺はそんなに役に立たないだろうけど、いたずらっぽくきいてみると、そうね、いつも通りに笑っててほしいわ。と言われて、俺の顔が熱くなる。なんだよ、今日は皆して。俺の柔らかいところばっかりつついてくるの。物理もメンタルも。

「誰にも見せたくない顔してるわよ。」
「五月蝿いっ。俺は顔戻すから、はやく顔作って撮りなよ。この服足元スースーして違和感しか無いし、お腹壊しそう。」

クスクスとナルくんが笑ってから、モデルの顔を出し始めた。ナルくんがどうするか様子を伺う。あら、文哉ちゃん。前髪が崩れてるわよ。と俺のウイッグの前髪を手櫛で整える。手が近づいていきたので、俺は一旦目を閉じて、ナルくんの満足いくまで触らせることにする。顔の前で手が動いてる気配を感じてると、ナルくんは鼻歌を歌い出してる。まだまだかかりそうだな。なんて思いながら、好き勝手させてるとシャッターがいくらか切られてる。

「文哉ちゃん、踊りましょう!」
「へっ?ナルくん?」

なぁに?と受かれて、俺と距離を摘めた。うへっと返事してる間になんちゃって社交ダンスの出来上がり。ステップ踏めないと言えば、いいのよ写真の撮影だし!と踏み切られると強く出られないので、もう諦めて好きなようにさせる。本当に楽しそうな顔して、踊るので俺もつられて笑う。あら、いい笑顔だわ!と笑顔が深くなる。そのままナルくんのしたいままにさせていると、ある程度取れたらしいので、一旦休憩と言われるから、皆ですーちゃんとりっちゃんとナルくんの写真を確認するために、二人で戻る。

「文哉ちゃんって、身長のこともあってなんだか女王様って感じよね。」
「そんなんじゃないよ。」

守るための、番犬ですから。ナルくんのが女王様だよ。ねぇ。と言えば、女王様より王女様としてほどほどぐらいにしてたいわ。なんて言うけど立派に君は王女様だよ。と伝える。全員基本自由人の集まりだからねぇ、と言ってやるとまぁそうなんだけどね。といいつつ、メンバーに合流すると、ぶーたれたすーちゃんが居た。ごめんって。俺はセナに擦り付けながら、すーちゃんのお怒りを一身に受けながら、それでもよいショットじゃない?とすーちゃんのデータを見せると、それは!と口をモゴモゴさせる。りっちゃんが、ふ〜ちゃんが綺麗だったからだってさ。とからかっている。真っ赤なすーちゃんとキャッキャしてたら、セナチェックも終わったらしく、すーちゃんに花丸あげてた。俺もほめて!と主張すれば、あんたはまだ終わってないから駄目。と引っ張り出される。理不尽な!あれだけいいショットなのに!と俺がぶーたれそう。

「でも、まあ文哉だから、かさくんの表情も撮れたと思うんだけどねぇ。」
「でしょー?誉めて誉めて」
「全部終わったらねぇ」

じゃあ楽しみにしとこー。とそのまま俺は、ふふんと笑ってから、セナにどんな顔がほしい?と聞くと、あんたは笑っとくだけでいいから。なんてナルくんとおんなじ事言われた。ちぇー。と唇を尖らせると、尖らせないの。とほっぺたを押される。始めるよ、とセナがゴーサインを出せば同時にシャッター音が後ろから聞こえる。セナの睫毛が綺麗だなとか、思いつつセナの好きにさせる。そのまま俺を抱き締めて、俺はどうすればいいかな、と思いつつ、手が迷わせる。それからあ一瞬悩んで手はセナを抱いた。りっちゃんの時にも思ったけど、『Knights』ってなんでこんなに顔面偏差値高いんだろうねぇ。って思いながら、セナが耳元で変なこと考えてたら、あとで蹴飛ばす。と囁かれた。うん、ほんと王子様みたいな顔して言う台詞じゃねえよ。言われたら仕方無いので、俺も泉の乙女役というか、空想姫役と言うから忠誠を捧げられる姫役を演じることにしよう。決して、月永ろきとか、ではない。うん、でっち上げだし、存在しねえよ。

「文哉、こっち向いて。」

セナから指示が出て、そのまま俺の顎を掴む。ニヤリとセナの目が輝いた。アイスブルーの瞳がまっすぐ俺を見る。ふっと目が柔らかくなって、そのままぐいっと持ち上げられる。それから俺のほっぺを手で包んで、そのまま、セナが近づいてきた。後ろがあー!とか叫んでますけど、セナは気にせずそのまま俺と唇を重ねるぐらいの距離で止まる。いわゆる寸止め。遠くで転校生がキャって言うの聞いたぞ?そして数秒止まってから、セナが離れた。カメラマンがいい絵が撮れたよ!と聞こえる。

「俺はチェックしてくるから、文哉最後まで気を抜かないでよねぇ。」
「わかってますよぉ。泉。」

冷やかし程度に名前をよんでやると、調子にのんじゃないの。頭を叩かれた。最後まで泣かなかったら誉めたげる。と言われたので、俺は泣く?とか思いつつ返事して、セナを見送った。ほんと、楽しそうに撮ってたなぁ、と思ってると入れ替わってレオが来る。これが終われば、俺の撮影だ、どんな顔して撮るかな、とか一瞬算段をつけると、レオは真面目な顔して「セナとキスしたのか!」と聞いてきた。おい、直球かよ。と思って、してません!と返事をすると、ナルくんたちにしてないんだって〜。と大きな声。なんだよ興味津々なの?。と目線を送ると、転校生がレオに親指立ててた。なんだよ。怖いわ。

「で、文哉がどうしてそんな格好をしてるんだ?」

おい言い出しっぺ。俺は、かいつまんで説明すると、そうだったとカラカラ笑った。おいこら、と俺は呆れる。じゃあ、よろしくな!と笑うので、俺ははいどうぞ。と乙女役として背筋を伸ばした。俺たちを囲む空気がほんのちょっと変わった。あ、ライブ中のレオの顔つきだ。とか思うとちょっと嬉しくなって、口角をあげる。背後からのシャッター音が聞こえて、レオが思うがままに動いてる。こうして五人と見てきたが、みんないろんな表情をするな。と感慨深くなる。目の前にいるレオがくしゃっと笑ってから口を開いた。

「やっぱり似合ってるな!おれが見込んだ通りだ!」
「まぁ、俺だからね。」
「いいや、違うな。」

したり顔で俺に言うから、何で?と聞いてみると、考えてみろ!答えは自分で作れ!作った答えは俺が採点してやる!と言うから、俺も思考を巡らせる。なにだろう、似合ってる理由なぁ。背後からのシャッター音が止まらない、レオはキリッとした表情で、俺の向こうのカメラを見てる。なにをする訳でもない俺はレオの顔を見ながら、思考を回す。似合ってる理由ってなんだよ、服か?なんだ、童顔だからか?ヒールか?と思うが、ヒールで似合う似合わないは論争するには可笑しいし、なんだ、俺が一番チビだからか!おいこら、喧嘩するってんのか。って話だし。そもそも身長はレオとそんなに代わらないし…なんだって言うんだよ。

「んー?なんだっていうんだ?」
「わはは!名作が生まれる気配がするぞ!」
「名作どころか迷作な答えになりそうだけど。」

真面目に考えると眉間にシワがいってるとレオにぐりぐり眉間を押さえられる。いててて!と半身ほど逃げてると、カメラマンに保村くんうごかないで!と軽い注意を受ける。理不尽な。抵抗することも許されないなんて、カメラから写らないので、俺は目線をさ迷わせてヒントをさがすと、レオに俺をみてろ!と言うし、なんなんだ。今日は厄日か?答えを二三口に出すと、レオから外れ〜と容器に言われた。だから、答えはなんなんだって。採点してやる!のわりに返答がない。そのまま思考を巡らせていると、カメラマンも終わりを告げる。

「で、レオが言う答えはなんだったの?俺が似合う理由ってさ。俺だから以外にあり得なくなってきたんだけど。」
「決まってるだろ。」

いや、答えが出てないんで決まってませんてば、俺がそう抗議するとレオがふらりと歩きだして、お前ら全員集合〜。と声を駆け出す。え?他に誰か声をかけてたのか?と一瞬考えたが、そんな予定は聞いてない。って言うか、俺今女装なんだけど!と声をあげようとしたら、レオの回りに他のメンバーが立ってた。ん?どういうこと?なにこれ?

「おれたちがいるから!」
「…はい?」

意味がわからない。俺はあんぐりと口を開けてると、転校生〜、あれ持ってきて〜。とレオが転校生に声をかけると、転校生は待ってました!と言わんばかりに、レオたちの手に小さな花束を渡す。ん?なに?俺だけ卒業しちゃう図式みたいになってるけど、なにこれ?現状もレオの答えも意味がわからないんだけど。

「保村先輩、先程も言いましたが、いつも助けてくださって、ありがとうございます。」
「今日は、ふ〜ちゃんにお礼を言うサプライズだって。」
「王さまもアタシたちも、文哉ちゃんに日頃助けられてるから。」
「文哉が笑ってないとなんか皆が出力悪いし。」
「文哉、いつもありがとな!」

皆が笑って俺を見る。一人一人が俺に言葉を投げてから、俺に小さなブーケを渡す。俺の好きな花がまざったブーケだ。俺の腕は二本しかないのに、抱き抱える形になって、柔らかな花の匂いが俺の心がぎゅっとした。皆が笑ってる。それだけが嬉しくて、俺の視界がちょっと滲む。あら、まだ撮影があるから、泣いちゃだめよ。とナルくんに言われるけど。俺は指先でちょっと涙をよけて、笑う。
そうだね、レオの言った通りだ。『Knights』がいるから、俺はどこまでも頑張れるよ。でもね、それも違うよ。全然違う。

「レオ、俺の答え作ったよ!採点して!」

俺、皆が笑ってるから俺も笑ってれるんだ。俺が俺らしく居られるのは、皆のお蔭。俺の方こそありがと!と言ってたら、嬉しそうに顔を見合わせて笑ってた。大好きと伝えると、カメラマンが写真を一枚とってた。もう、俺の写真決まったじゃん。今撮ってもらった写真にしよう。

愛を込めて。


ここからが後日談になるわけだけど。6人分のブロマイドと、今回の俺の女装ショットがシークレット扱いになったお蔭で、めちゃくちゃネットが騒然としてたらしい。あの女誰?って。
おいこら、転校生。俺の合成のがシークレット扱いですけどね!って自信満々に言わないでくれ!


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