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ランダムで選ばれた二人とうちの子一人の小話。騎士犬=文哉編。(全部で五人分)


氷鷹誠也とスバル

ユニットの資料を提出していくために廊下を歩いていると空き教室から声が投げられた。

「あ、保村くん。」
「…ん…んあっ?氷鷹さん!?」

やぁと言わんばかりに片手を上げた人は、嫌悪感を与えない表情をつくって俺を見ていた。小さな頃によく番組共演やらさせてもらったこともあったので、よく遊んでくれる人。なのだが、今はそこじゃない。ここが夢ノ咲学院内部なのだ、セキュリティの厳しい場所になんで、あの氷鷹誠矢さんがいるのか
俺は平然を装いつつ疑問を解決してくれる人を探していれば、あ!おいぬ先輩!なんて明星が飛び出してきた。氷鷹さんがいる手前顔を歪ませる訳にもいかないので、引くつくのを押さえて、どうしていられるのです?と問いかければ、講師だとかで来て、ちょうど明星と出会ったらしい。意気投合したようなやりとりをしてるので、疑問に思ったがホッケ〜たちとレッスンしてたら、乱入してきたことがあったらしくてそこで知り合ったらしい。

「ホッケ〜の様子が心配だったんだよね!」
「え?ホッケ〜って誰だ?」
「おいぬ先輩なんでホッケ〜がわかんないの?この間俺たちのところに殴り込みしたじゃん!」
「…殴り込み?」

……氷鷹。北斗と誠也。おんなじ苗字は偶然だと思ってたがそうじゃない。親子だ。そう思った瞬間に俺の顔の血は音を立てるほど落ちていって、氷鷹さんが俺の方を叩く。俺は死ぬ。やばいと判断すると同時に遠くに明星の声を聴く。俺の屍を拾ってくれとも思ったが、あれはよそのユニットだ。言いたかったがそれをも飲み込んで、俺は氷鷹さんにひきずられるようにして学院を移動することになった。


レオと泉。

誰もいなかったので一旦体を動かしているとどこからともなくレオが出てきた。

「文哉の音はぶれないよな!」
「…そうかな?」

昔にも言われたがその真意はよく解らない。演技やらは俺の得意なので些細な変化まで拾えるのだが、音に関しては其処までわからない。ピッチが。なんて言われたら俺は爆発するんだけど。そうなんだろうかと首を傾げていると、授業が終わったセナがやってきた。久々に会った気がするのでセナに抱きつこうとしたら避けられた。…くっ、レオで慣れてるし。と吐きすてられたのだが、悔しいぞ!レオ!!ぎりぎり歯を食いしばりながら痛むところをさすっているとセナが鼻で笑う。

「音はセナの方が綺麗だよな。」
「俺が汚いみたいに聞こえるんだけど。」
「文哉はまっすぐなんだよな。ビブラートが下手。」
「ぐっ…。練習します。」

セナにも相手されずレオは楽譜に夢中になっているので傷心中の俺を慰めるのは俺しかいない。大丈夫ですー。と一人慰めながら鏡の前に立ってみると俺の背中にセナが声を投げる。「そうだ、レッスンつけたげようか」なんて一声で俺のテンション爆上がりなので安い男である。



鉄虎と凛月。

「おもしろそうだから、ついてっていい?」
「俺、りっちゃんの相手してる暇ないよ?」
「いいよー。あのテッコくんだっけ?ほどほどにしときなよー。」

わかってるけど、なめられたままじゃ駄目じゃんね。りっちゃんと二人であるきながら向かうのは一年の教室。日の目的はすーちゃんじゃない。一年生の、南雲。とかいうやつ。のために1年の教室に足を向けるのであった。

「あー入るぞ。」

両方のポッケに手を入れて、1年A組の教室に入ると、教卓最前列に一人いるのがみえた。押忍と返事が聞こえたので、あーお前?と俺は舐めてかかる様に問いかける。演技指導してくれ。とのことだったので、法外な値段をふっかけたら、椚に見つかって適正な値段に差し替えられた。そんなこともあってか、俺は、講師として派遣されてるわけなんだけど、それを面白がって、りっちゃんがついてきた構図だった。本人寝てるし、おもしろがってんな。

「台本は?」
「あ、これです。」

高校生野球部員のチョイ役。らしい。泥臭い役を欲しがったらしくて彼に声がかかったとの事を聞いて、俺はふぅん?と上から下までじろりと見た。柔道か空手部っていってたこともあってか、足腰はしっかりしてそうだ。

「野球の経験については俺もないから、そこは期待しないでね。」
「大丈夫っス。そこは別の子に頼んでるんで。」

そういわれたら俺が面白くない。不満気に台本を読みながら、ここ大事そうだなぁ。と思いつつ、俺はそのページを開いて突き返して、今日はここやるから。と告げると、大きな声で彼は頷いた。後ろで寝てる人いるから声抑えたほうがいいよ。とは思うが、まぁついてきたのはりっちゃんなので、仕方ないだろう。っていうか音量についてはあきらめて。りっちゃん。

「ここっすね!えっとー……こうこーたまじにはちゃんとしたフェアプレーの……」
「『高校球児には、ちゃんとしたフェアプレーの精神が必要なんだよ!』だ。」
「流石保村先輩っスね!難しい漢字をスラスラ読めるなんて!」

おまえ。高校生だよな。地を這うような程の低い声が俺からするりと出た。お前、アイドルやろうとしてるんだよな?高校球児までも読めない様な奴の演技指導何て聞いたことねえよ。そんな音に反応してりっちゃんが慌てて飛び起きた。おいこら、りっちゃん、離せ。俺は此奴に聞いてんだよ。事前準備もろくすっぽせずに、なんでいきなり指導ができると思ってんだよ!俺が盛大に吠えだすと、りっちゃんの手刀で一発。意識を飛ばした俺は、ずるずる引きずられていったのだという。…でも、俺悪くないよね?あいつ。悪いの。俺、悪くない。


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