光輝★騎士たちのスターライトフェスティバル-1


「ねーレオ帰らないー?」

携帯置いてきたし、暇つぶしの本もないし、レオが雪の上で作曲するからあとでシャワー室で丸洗いしよう。じゃないと俺もレオも風邪を引くだろう。と思うので、いろいろ思考を巡らせる。どうすれば、この場からレオが去ってくれるのか。寒いのだめな俺が防寒もせずにいるので寒い。辛い。今頃みんなして捜索してるんじゃないかな。と音もなく降り落ちてくる雪を見つめていると、ざくざく雪を踏みしめる音をきいた。

「保村先輩!連絡をしてください!」
「ごめんね、携帯忘れてきた。カバンはスタジオ。」
「存じてます!Leaderを引っ張り上げるのを手伝ってください。」

そう言われたら、俺も嬉しい。寒い場所から逃げる理由になるのだから。このまま一回雪でも投げるといいよ。なんてアドバイスすると雪玉をレオにむかって蹴り出した。こらこら、それは俺が許さないっての。石もいれんなよ。アイドルなんだから品行方正にしてくれ。頼む。

「いつもいつも当然のように行方不明にならないでくださいっ、GPSを体内に埋め込みますよ」
「おちつけって、心配させて悪かったから、興奮すんな。」

学院が広すぎるから、遭難した。というレオと、保村先輩を頼ってあげてください。というすーちゃん。いきなり振られて、驚く。どうした。俺に振ったってろくなことないぞ?俺を見習え!と言うけれど、こんなメンタル依存型の俺を扱うのは至難の技だってこと知らないんだよなあ。様子を見る限りに去年の騒動もあまり知らないようだしなぁ。いろいろと、思いながらも喉を締めて、黙る。

「こんな雪景色の中で座り込んでいたら、ふつうに風邪を引きますからね?保村先輩だって、防寒具をつけてないんですし。」
「文哉はどうしてここにいるんだ?」
「俺は、レオに引っ張って来られて唐突に霊感がーっていうから、ここで待ちぼうけ食らってるんだけど。」
「もう、Leader!保村先輩をまた雑に扱って!」

もうじき、我が校の誇る季節ごとの一大イベント『S1』に該当する【Star Light Festival】が開催されるのですから。風邪なんてひいてられませんよ。先日の【Halloween Party】と同等かっそれ以上にはりきって、我ら『Knights』の名声を高めるために粉骨砕身しなくては。Leaderは、名声とか権威とか興味ないかも入れませんけど。
そう嬉しそうにいう姿に、俺は羨ましいね。と音をこぼした。こぼした俺が余計に驚いた。きちんと聞こえてなかったのか、俺は適当にごまかして、話の流れを戻した。

「おれも、今それ用の新曲を仕上げてるところだし。」
「作曲も大事だとは思いますが、ちゃんとLessonもしましょうね。他の『Knights』の先輩方はもう我らが牙城たるStudioに集まっているのですよ。」

ここで、俺の読みが外れたのを知る。時間も確認できてないので、腹時計は正確ではないようだ。話も脱線仕掛けてるので、俺はスタジオに移動するぞ。そう声をかけようとしたら、あれって?と遠くを指さした。指の先を目線で追いかけると、ナルくんが立ってるようにも見える。さっき、全員スタジオって言ってなかったか?そんなことをレオか、すーちゃんが声に出した。その後小言が続いたので、すーちゃんである。

「まぁ、足並みに追いついてないすーちゃんが言うのも不思議な話だけど。まぁ、いっか。ナルくんなら時間を忘れることもないだろうし、ほら、すーちゃんもレオも行くよ。」

促せど、察しの悪い末の子はナルくんに声をかけようとしたので、慌ててレオと二人でその口を閉じる。そういえば、と思い出したのは、そのナルくんがいる場所あたりになにがあったのかを理解した。

「マメだねぇ。」
「ナルのやつ、珍しくマジな顔をしてるし、どうもお祈りしてるっぽいから、邪魔しないでやろう」

お祈りという単語に反応して、なんでそんな墓が校内にあるのかと、首を傾げてる。これで俺の中で理解が十二分に至った。そこまで詳しく知らないから、彼はこう言えるのだと。

「墓じゃなくて慰霊碑。今は平和だから知らんと思うけど、昔は結構夢やぶれて、自殺したやつとかいたから。」
「その一人が俺だったりするわけだけど。」
「そのようなお巫山戯はやめてください。」
「まぁ、信じないならいいけどね。まぁ、アイドルなんて生き馬の目を抜くようなものだし、チャンスの前髪を掴めないやつがいっぱいいたって言うことだよね。そういうやつの成れの果ての慰霊碑だよ。まぁ、俺達の先人だとか、だからっていう側面もあるらしいけど。」

そう解説めくと、家にもあるのでわかります。って言われた。さすが御曹子。どうして、が気になったのか。すーちゃんは首を傾げている。レオと入れ替わりのように入ったので詳しくは知らないから俺に問われたけど、俺も、今のユニットに入って下から僅差の二番目。なので正直よくはわかってない。嵐、と呼ぶと怒ったり、椚先生が好きだというステレオしか俺の知識の側面でしかない。俺への興味もなくなったのか、最終的に本人に問い合わせろ、ただ気をつけて。と釘を指していた。とりあえず、戻ろう。俺の手足の感覚がなくなってきたから。そう言うと、レオは俺の手を握ってくれた。うん、レオの手のほうがまだ温いので、俺はレオの手をカイロ代わりにして、ついでにレオ成分も補給しつつ俺達三人はスタジオに戻ることにした。帰りしなに、いろいろ突っ込まれかけたけど、俺は適当にごまかしながら、笑っておいた。スタジオについたら、こたつだな!と俺にいうから、そうだね。って答えて、心だけが暖かくなるまえに俺は寒さにより、真っ青な顔になって、スタジオのこたつにぶっこまれることになった。誰だよ、犬は喜んで庭駆け回るとかいう歌作ったのは。そうして、こたつの中で自分の手や足等末端からじんわりと温めていると、だんだんウトウトしてきて一瞬寝落ちたが、セナの声により目が醒めた。まだ、覚醒しない意識で、目をこすっているとレオが冷たい手で俺の顔や頬を撫でる。冷たいものあ冷たいけれど、レオが俺のもとに飛び込んでくるのが嬉しくて目尻が下がる。断じて、俺はあれだよ。構われて嬉しいとかじゃないから。いつのまにか、ナルくんも帰ってきてて、ちょっとレオ、服の中には手を入れないで。冷たい!!お腹が冷える。目が醒めたって。レオに向かってぎゃんぎゃんしてると、すーちゃんが手を叩いて耳目を集めた。

「【Star Light Festival】について話し合うべきではないでしょうか?」
「司ちゃんは真面目ねぇ。っていうか、今回はそのために休日なのに集まったんじゃなかったのぉ?」
「そのつもりだったんですけど。皆さん露骨にやる気というか、Mufflerを編んだり炬燵でゴロゴロしたりしてるのっで不安になりました。」

ひどく真っ当な意見だろう。わかるぞ、でも。レオとセナが満足してるから、俺もついつい原稿をやっちゃう。最近紙もいいけど電子も便利なことがわかったので、つい。ね。つい。隙きあらばリラックスするりっちゃんに釘を指す末っ子は、多分ナルくんとりっちゃんを引っ張って、先頭に立つんだろうなぁ。だとか来年の春についてぼんやり思う。どっちかが王様。だとか想像できないね。まぁ、俺の王様はレオとセナなわけだけど。みんなが末っ子いじりをしているために、末っ子が泣きそうだ。ほら、先に終わらせちゃおうよ?俺も仕事あるし。なんて嘘をついて、物事を進ませる。

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